記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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徳之島でお勤めの方や、移住を視野に入れた方から、起業準備をどう始めたらよいかご相談いただくことが増えてきました。鹿児島県の離島・人口約2万人の徳之島は、2021年に世界自然遺産に登録されたアマミノクロウサギの生息地という観光資源と、闘牛文化・長寿の島・サトウキビという独特の産業基盤を持ち、起業を考える角度が他の地方とは異なる地域です。
鹿児島新港からフェリーで約15時間、鹿児島空港から飛行機で約70分。離島の中でもアクセスは決して便利ではありませんが、奄美群島の主要島の一つとして近年関係人口・二拠点居住の起点としても注目されています。本記事では、徳之島で勤めながら起業準備に動く場合の現実的な道筋を整理します。
徳之島で起業準備を始める前提

徳之島は鹿児島県大島郡の一部で、徳之島町・天城町・伊仙町の3自治体で構成されます。各自治体の公表情報では、島全体の人口はおおむね2万人規模(2026年3月現在、3町合計で約2万600人)です。世界自然遺産(2021年登録)・闘牛文化・男女ともに長寿率が全国でも上位の島という、他の離島にはない独自の重なりを持つ地域です。
中小企業庁が毎年公表する中小企業白書・小規模企業白書でも、人口減少地域・離島における観光・地場産業を活かす中小企業・小規模事業者の役割が大きな論点として継続的に取り上げられています。徳之島の場合、世界自然遺産観光と農産品ブランドという軸に加えて、闘牛・長寿の食文化という独自素材があるため「島内の困りごとを解決する」起業に加えて「島外に届ける」起業の両軸が成立しやすい構造があります。
知っておきたい支援施策

徳之島内・鹿児島県内には、起業準備中の方が将来活用できる支援施策があります。重要なのは、いますぐ駆け込むことではなく、方向性が固まったあとに使う道具として知っておくことでした。
- 特定創業支援等事業:
徳之島町・天城町・伊仙町が共同で創業支援を行っており、要件を満たして証明書を取得すると会社設立時の登録免許税軽減を受けられる場合がある - 奄美群島成長戦略推進交付金:
奄美群島12市町村対象の交付金で、新規事業立ち上げの経費補助が可能(要件あり) - かごしまU・Iターンサポートセンター:
鹿児島県の移住×創業相談窓口・移住支援金(東京圏からの移住世帯に最大100万円・要件あり)との組み合わせも可能 - 日本政策金融公庫鹿児島支店:
新規開業資金・女性、若者/シニア起業家支援関連融資の窓口
支援施策は、行き先が決まった人にとって強力な道具になります。逆に「何をやるか」が見えていない段階で相談に行っても、担当者も答えに迷ってしまいます。まずは自分の方向性を決める時間を確保するほうが先になります。
徳之島で見える3つの起業機会

徳之島で勤めながら動ける起業の方向性は、大きく次の3つに分けられます。
- 世界自然遺産導線活用型:
アマミノクロウサギ生息地・固有種・原生林への関心層向けのガイド・体験型サービス・オンライン物販 - 長寿食文化×農産品加工型:
黒糖・サトウキビ・長命草・島バナナなど島の特産品を「健康長寿」軸でECサイトや産直プラットフォームに展開 - 島外スキル提供型:
本業のスキル(ライティング・デザイン・編集等)を島外の企業・個人に届ける形。島に住みながら島外受注
拙著『会社で働きながら6カ月で起業する』にこんな考え方があります。地方で勤めながら動く人は、STAGEを区切って、最初のSTAGEは「現地で何が困っているか・何が眠っているか」を聞き取る期間に充てるのが現実的です。商品設計を急がず、地域の声を100個ほど集めると、自分が立つべき位置が自然と決まってきます。
会員さんの事例

会員さんの田畑さん(仮名・43歳・既婚・小学生の子2人・東京の食品商社の商品企画担当)は、ご親族が徳之島伊仙町在住で、年に4回ペースで徳之島を訪れる生活を続けてきました。島の高齢者が日常的に食べている長命草や黒糖を使った料理に、本業の食品商社の経験から「島外で売れる商品の輪郭」が見えていたそうです。
自己流で動いた最初の半年は、いきなり物販サイトを立ち上げて在庫を抱える方向に走り、結果的に消耗しました。
起業18フォーラムの勉強会で「現地の声を100個集める」という考え方を教わり、伊仙町の黒糖農家・長命草農家・島の主婦の方の話を約140件聞き取ったとのことです。聞き取りから「島外の高齢者向け健康食品市場に長命草の認知が広がりつつある」「黒糖は単品ではなく食べ方提案とセットだと売れる」という塊が浮かび上がりました。
そこから田畑さんは、自分で物販を立ち上げるのではなく、島内の黒糖農家・長命草農家向けに「商品ストーリーと写真と販路開拓」を月額5万円で支援する受託モデルに切り替えました。
準備14ヶ月目で月6万円、22ヶ月目で月16万円の継続収入になり、現在も東京の会社勤めを続けたまま、二拠点準備を少しずつ進めているとのことです。拠点を一度に移さず、東京と徳之島を往復しながら関係人口として動く形が、結果として長く続けられる設計になったそうです。
徳之島で起業準備を続ける順番

徳之島で起業準備を続けたい方には、次の順番をお勧めしています。
- STEP1:
まず起業18フォーラムの動画・セミナーで起業の基礎と全体像を学ぶ - STEP2:
徳之島で見える島の困りごと・島外マーケットで売れる素材を100個メモする(3ヶ月かけて構わない) - STEP3:
方向性が見えてきたら、3町の特定創業支援等事業・かごしまU・Iターン窓口を使い始める - STEP4:
二拠点で始める場合は、最初の半年は移住せず、年4〜6回の往復で関係人口として動く
徳之島の起業は、世界自然遺産・闘牛文化・長寿食文化・サトウキビという独自素材を抱えて進むことになります。素材が多い島だからこそ、自分の本業スキルと重なる軸を1つだけ選んで動くほうが、地域にも自分にも無理のない形にたどり着けます。

離島で勤めながら動き始める準備は、短距離走ではなく長距離走です。今夜まず、徳之島の人に「最近何に困っていますか」と聞いてみたい相手を1人思い浮かべてみてください。その1人が、半年後の方向性を決めてくれます。
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