記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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● 質問
30代前半の教育研修職、既婚で小学生の子どもがいます。育休復帰後で在職勤続10年です。起業準備をこれから始める段階で、まだ売上はゼロです。先輩起業者から「最初は1つの販路に集中したほうがいい」と聞きましたが、楽天市場を退店する大手の話やSNSのアルゴリズム変更のニュースを見ると、入口から1つに集中する怖さもあります。
販路を1つに絞るのと、最初から分散するのと、どちらがいいでしょうか?

● 回答
中小企業庁の「2024年版中小企業白書」では、取引先が1社に集中している状態では価格交渉の余地が限られると指摘されており、販路の拡大と取引先の複数化によってリスクを分散することの重要性が示されています。
SNSのアルゴリズム変更、プラットフォームの手数料改定、自社EC・モール・教室予約サイトの仕様変更などが続いており、1つの販路に売上の8割以上が集中する形は、半年で景色が変わる時代に入っています。
起業準備の入口で「集中」と「分散」のどちらが正解かは、絶対的な答えがあるわけではなく、判断の順番が決まっています。
「集中」と「分散」を比較解剖する
「最初は1つの販路に集中せよ」というアドバイスは、初動の学習コストを下げ、最初の1人の顧客に集中するための助言です。販路を増やすほど運営の手数が増え、商品の質と顧客対応の質が両方落ちることを避ける、という意味では正しい指摘です。一方で、「集中=1販路だけに依存する」と捉えると、半年後に売上の半分が消える危険を背負うことになります。
このとき分けるべきは、「商品の集中」と「販路の依存」の2つです。起業準備の入口では商品を1つに絞るのが正解ですが、その1つの商品を届ける販路は、最初から2本以上を並走させておくのが現実的です。
- 1販路の集客に売上の9割が集中している
- プラットフォームの規約変更ニュースを見ない
- 顧客リスト(メール・LINE)を販路に保管したまま
- 販路ごとの利益率を計算したことがない
- 販路アカウントが停止された場合の代替を用意していない
起業18フォーラムで3販路の並走に切り替えた清里さん
起業18フォーラムの清里さん(仮名・30代前半・女性・教育研修職・既婚・小学生の子・育休復帰後・本業勤続10年)は、育休中に少しずつ準備を進めて、復帰後に初めての商品を売り出した直後の状態です。本業の月収は34万円、子どもの教育費を確保しながら起業準備を続ける状況でした。
最初は自己流で「教える系プラットフォーム1本」に絞り、教材作成と告知を半年続けました。最初の3ヶ月で月4万円まで届いた瞬間に、プラットフォーム側のアルゴリズム変更があり、検索表示順位が下がって売上が月2万円に半減しました。顧客リストはすべてプラットフォーム内に保管されていたため、ダイレクトに連絡を取る手段が一つもなかったのです。
そこから起業18フォーラムの勉強会に参加し、販路の組み直しから始めました。商品は同じ1つに絞ったままで、販路を「教える系プラットフォーム」「LINE公式アカウント」「自分のブログから直販ページ」の3本に分散させました。新規の入口はプラットフォーム経由のままにし、購入者にはLINE公式の登録を案内、購入後のリピートはブログとLINEから直接届ける形に変えました。
切り替えから18ヶ月後の今、月15万円の安定売上に届き、各販路の比率は概ね5:3:2に分散しています。プラットフォーム1本に依存しない設計に切り替えたあとは、規約変更のニュースが出ても、半月で別販路に重心を寄せられる手応えが出てきました。
拙著の「0.1%×0.1%理論」と販路の関係
拙著『会社を辞めずにあと「5万円!」稼ぐ』に、0.1%×0.1%理論という考え方があります。日本の人口の0.1%は約13万人、さらにその0.1%でも130人、ニッチな商品でも届けば成立する、という説明です。この130人を「どの販路で見つけるか」を考えるとき、1販路だけでは出会えない層が必ず残ります。販路を分散させると、同じ商品でも届く130人の輪郭が広がります。
- 商品は1つに絞る(最初の半年で迷わない)
- 販路は最初から2本以上で並走させる
- 新規入口・リピート導線・直販ページを別々に持つ
- 顧客リストは販路の外(LINE・メール)に保管する
- 各販路の売上比率を毎月1回確認する

1販路に集中するのは商品設計の話、分散するのは販路の話、と分けて考えてください。今夜、今の販路候補を3つ書き出してから、それぞれの新規入口・リピート導線・顧客リストの保管場所をメモしてみてください。
始める前に分けておけば、半年後のアルゴリズム変更が「想定内」の出来事に変わります。
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