記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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羽田から飛行機で約55分。花と緑と温泉に囲まれた八丈島の写真をながめながら、「いつかこういう場所で暮らして、自分の力で食べていけたら」と考え始めた方は少なくないと思います。都会の通勤電車の中で、ふと島の暮らしに心が動いた経験があるかもしれません。
ただ、憧れの島暮らしと、そこで生計を立てることのあいだには、けっこうな距離があります。八丈島は美しい島ですが、人口7,000人前後の離島で安定した収入をつくるには、それなりの準備と段取りが必要です。この記事では観光案内ではなく、いまの仕事を手放さずに起業準備をどう進めるか、現実的な順番で整理していきます。
八丈島で起業するなら、移住より先に方向性を固める

八丈島での起業を考えるとき、多くの方が「まず移住先を探そう」と動き出します。けれど、最初にやるべきは住む場所を決めることではありません。島で何をして食べていくのか、その方向性を先に固めることが、八丈島での起業をうまく進める出発点になります。順番を間違えると、せっかくの移住が苦しい時間に変わってしまいます。
八丈島で起業を考える前に知っておきたい現実

八丈島は東京都八丈町。東京から南へ287kmの伊豆諸島にあり、花と緑と温泉の島として知られています。人口は令和2年の国勢調査で7,042人、直近の住民基本台帳(令和6年11月時点)では6,872人と、7,000人を下回る水準で減少が続いています。総務省統計局の国勢調査でも、こうした離島の多くは人口の減少が続く地域として記録されてきました。この規模感を最初につかんでおくことが大切です。
アクセスは大きく2通りあります。羽田空港からANAの飛行機で約55分、1日3往復。もうひとつは東京の竹芝桟橋から東海汽船の橘丸で約11時間、1日1往復です。船は海況によって欠航することがあり、島の移動には天候の影響がついて回ります。この点は、本土と同じ感覚で物流や出張を組み立てると見込み違いになりやすい部分です。
産業は観光と漁業、農業が中心です。農業では明日葉や、切り葉・観葉植物用のフェニックス・ロベレニーが主要な産品として知られています。水産加工品のくさや、醸造業の八丈島焼酎も島を代表する特産品であり、酪農も営まれています。島の経済は観光と一次産業に支えられていて、本土の都市部とは仕事の構造が大きく異なります。「島にどんな仕事があるか」ではなく「自分が島に何を持ち込めるか」という発想に切り替える必要があります。
八丈島の移住・起業の支援制度

八丈島への移住を考えるなら、知っておきたい制度がいくつかあります。そのひとつが八丈町の「定住支援金」です。
- 都内の条件不利地域以外から八丈町へ移住する人が対象
- 移住先での就業またはテレワークが条件(就業・テレワークで支給額が異なる)
- 就業の場合の支給額:単身世帯60万円、2人以上の世帯100万円
- テレワークの場合の支給額:単身世帯30万円、2人以上の世帯50万円(出典:八丈町)
- 18歳未満の世帯員を帯同する場合、1人につき100万円が加算される
こうした支援金は移住の後押しになりますが、制度はあくまで「方向性が固まった人の背中を押すもの」と位置づけて、まず何で食べていくかを先に考えてください。支援金があるから移住する、という順番だと、お金を受け取ったあとに生活の柱がないまま時間だけが過ぎていきます。
制度の細かい条件や受付状況は時期によって変わります。実際に申請を検討する段階になったら、八丈町の最新情報を確認するという心づもりでいれば十分です。いまの段階では「こういう支えがある」と知っておくだけで足ります。
八丈島で現実に始めやすい起業

八丈島での起業には、大きく2つの方向があります。ひとつは島の資源を生かす道、もうひとつは本土でできる仕事を島に持ち込む道です。
島の資源を生かす方向
明日葉や八丈島焼酎、くさやといった特産品は、島の外から見ると魅力的な素材です。これらを使った加工や、観光客向けの体験プログラム、宿泊と組み合わせたサービスなど、島ならではの資源を起点にした起業は考えられます。ただし、この道は移住して島の暮らしに根を張ってからのほうが進めやすい性質があります。島の生産者や地域とのつながりがないと、素材を仕入れることも信頼を得ることも難しいからです。
仕事を持ち込む二拠点の方向
もうひとつ、現実的に始めやすいのが、本土でできる仕事を島でも続ける道です。リモートで完結する仕事を持っていれば、八丈島でもそのまま稼ぎ続けられます。ライティング、デザイン、オンライン相談、教育系のサービスなど、場所を選ばない仕事が当てはまります。
そして、いきなり完全移住をしなくても始められる形があります。東京と八丈島を行き来する二拠点の暮らしから入り、島との関わりを少しずつ深めていく関係人口モデルです。月の一部を島で過ごしながら島の人や仕事を知り、収入の柱を本土で保ったまま、島での事業の芽を育てていく。この進め方なら、生活が崩れるリスクを抑えられます。
拙著『会社を辞めずに朝晩30分からはじめる起業』に、会社の仕事を続けながら朝晩30分の小さな時間から起業準備を始める、という考え方が出てきます。八丈島での起業も同じで、いまの収入を保ったまま、小さな準備を積み重ねていくのが現実的です。
八丈島で起業準備をする人が陥りやすいパターン

離島で何かを始めようとする人によく起きるのが、準備の順番を逆にしてしまうパターンです。具体的には、こういう流れになりがちです。
- 島の暮らしに憧れて、何で稼ぐかが決まらないまま先に移住する
- 島に着いてから「ここでは仕事がない」と気づき、焦って動く
- 支援金や貯金が減っていく不安に追われ、落ち着いて事業を組み立てられない
- 結局、生活が苦しくなって本土に戻ることになる
八丈島は本土から船で約11時間、海が荒れれば欠航もある離島です。本土なら「とりあえず動いてみる」で何とかなる場面でも、島では一度の見込み違いが暮らし全体に響きます。先に移住してから方向性を探すのは、離島では特にリスクの高い進め方です。
八丈島で起業準備に動くのは30代から50代の方が多く、移住の前に島外向けの収入が月10万円から月20万円ほど見えているかどうかが、その後の安定を左右します。
うまくいく人の流れは、これと逆になっています。まず島の外で起業の基礎と自分の方向性をしっかり固め、何で食べていくかの見通しを立ててから島に持ち込む、という順番です。外で学んで方向性を整え、それを島の暮らしに合わせて形にしていく。この順番なら、移住が「賭け」ではなく「計画の実行」になります。
八丈島起業の進め方

最後に、八丈島での起業をどんな順番で進めればよいかを整理します。憧れを実現するための、現実的な手順です。
- まず起業18フォーラムの動画やセミナーで、起業の基礎と全体像を学ぶ
- 自分が何で食べていくのか、収入の柱になる方向性を固める
- 方向性が定まったら、八丈町の移住相談窓口や定住支援金などの情報を活用する
- いきなり移住せず、関係人口や二拠点の形から島との関わりを少しずつ深める
- お試し移住で島の暮らしを体感してから、本格的な移住を判断する
この順番の良いところは、どの段階でも引き返せることです。基礎を学ぶ段階でも、二拠点で関わる段階でも、いまの収入は保たれています。島での起業は「学ぶ・固める・近づく」の3ステップで進め、移住は最後の判断にしてください。
八丈島は逃げていきません。焦って先に飛び込むより、準備を整えてから向かうほうが、結果的に島で長く暮らせる可能性が高まります。

花と緑と温泉の島で自分の力で食べていく。その夢は、進め方を間違えなければ十分に手の届くものです。まずは島に渡る前に、自分の方向性を固めるところから始めてみてください。準備の積み重ねが、いつか八丈島での新しい暮らしを支える土台になります。
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