家計を一人で支える人の起業準備|生活防衛から逆算する朝晩30分の3段階

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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「もう半年も準備しているのに、何ひとつ売れていない」。起業準備の相談で、もっとも多く届く言葉です。事業計画書は何度書き直し、書籍は十数冊読み、セミナーにも何回か通った。それでも動けない。原因は準備の量ではなく、準備の順番にあります。最初に作るのは事業計画書ではなく、「失敗しても痛まない1ヶ月実験」です。

会社員のまま、本業に支障を出さず、お金もほとんどかけずに、お客様1人に届く小さな試行を仕込む。この1ヶ月実験が立ち上がると、計画書では絶対に見えなかった景色が見えてきます。

ポイント 真面目な人ほど止まる構造

準備項目を増やして動けない罠

ネットショップ

起業準備で止まる会社員に共通するのは、「準備項目を増やせば増やすほど、動き出すラインが遠ざかる」という構造です。事業計画書、資金計画、競合分析、マーケティング、税務、法務、SNS、AI集客。学べば学ぶほど「これも要る、あれも要る」が増えていきます。

準備の量ではなく、準備の順番が間違っているだけのことが多いのです。日本政策金融公庫『2025年度新規開業実態調査』によれば、開業費用は平均975万円・中央値600万円と長期的に少額化が進んでいます。それでも「いくら必要か」を最初に詰めようとすると、数字の大きさに圧倒されて止まってしまいます。

最初に手をつけるのは資金でも事業計画書でもなく、お金をかけずに1人のお客様に届く実験です。

ポイント なぜ「1ヶ月」なのか

短すぎず長すぎない実験単位

フリーランス

実験の単位は1ヶ月がちょうどいい長さです。1週間では仕込みと検証の両方が間に合いません。3ヶ月は長すぎて惰性が始まります。1ヶ月は「やる前から終わりが見えている」「失敗しても次の月で立て直せる」「家族に説明しやすい」の3点が揃う、ちょうどいい単位です。

拙著『会社を辞めずに朝晩30分からはじめる起業』の第4章で書いているのですが、起業準備のスタート期は「予算・期間・出口」の3つを先に紙に書くことが続ける条件になります。1ヶ月実験は、まさにこの「期間」を最初に固定する装置です。

ポイント 1ヶ月実験を設計する3点

条件を絞ることで動き始める

Instagram

実験の条件はシンプルに3点だけです。条件が増えるほど準備時間が伸び、動き出すラインがまた遠ざかります。

条件1:お金をかけない

広告費もシステム費もかけずに、メールとSNS、紙のノートだけで完結する設計にします。投資が必要になるのは実験で「需要があるかもしれない」感触を掴んだ後の話です。

条件2:本業に支障を出さない

平日朝の30分・夜の30分、または週末の2時間に時間枠を固定します。残業や家族時間を削って捻出した時間は、続きません。

条件3:お客様1人に提案する

不特定多数に発信するのではなく、知人・友人・元同僚から「この人なら相談に乗ってくれそう」という1人を選び、口頭で「こんなサービスを試そうとしているけど、要るか」と聞く。1人に届く設計を最初に作ると、SNSの数字を追いかけずに済みます。

1ヶ月実験の3条件(記入用)

  • 使うお金:上限を「0円〜3千円」で固定
  • 使う時間:朝晩30分または週末2時間で固定
  • 提案先:知人1人の名前を紙に書き出す

ポイント 実例:細田さんの1ヶ月実験

設計から12ヶ月目までの記録

シングル

起業18フォーラムの細田さん(仮名・40代前半・男性・メーカー設計職・既婚・小学生1人)は、起業準備の最初の半年を「事業計画書づくり」に費やしていた方です。月収48万円・本業に支障なし・家族の理解はある。それでも「商品が決まらない」を理由に動けない状態が続いていました。

転機は、自己流での準備に区切りをつけて起業18フォーラムに参加し、勉強会で「事業計画書ではなく1ヶ月実験から始める」順番を学んだことでした。細田さんが選んだ実験は、「自社業界向けの技術相談」を、退職した先輩設計者3名にモニターとして無料で提供するというものです。

条件は朝活30分の対応・1セッション45分・1ヶ月で3件まで。

1ヶ月で実際に届いたのは3件中2件のフィードバックだけでした。ただし、そこから「相談者が知りたいのは設計の理屈ではなく、若手部下に説明する言葉だった」というズレが見えてきました。

6ヶ月目には1件5,000円の有料相談が立ち上がり、月4万円。12ヶ月目には月12万円に到達。現在は在職を続けながら、業務委託契約2社で安定運用中です。

ポイント 「準備不足」と思い込む人が陥る2パターン

情報収集で時間を溶かす罠

シングル

1ヶ月実験を立てる前に、よく出てくる2つの罠があります。

準備不足を理由に止まる2パターン

  • セミナー巡回型:毎週セミナーに出席して情報を補充するが、自分の名前で誰かに声をかけたことはない
  • 計画書完璧型:事業計画書を10回以上書き直して数字を磨くが、誰にも提案していない

どちらも「準備が足りない」自覚から動いているように見えて、実際は「失敗を体験する場所」を持たないまま安全圏に留まり続けている状態です。

1ヶ月実験は、計画の精度を上げるためではなく、「お客様1人と接する経験」を確保するために組みます。その経験がない限り、事業計画書の数字は妄想のままです。

ポイント 公的データが示す「準備の順番」の現実

資金より動機の壁が高い実態

ネットショップ

中小企業庁『2025年版 小規模企業白書』では、起業関心層が踏み切れない理由として「自己資金不足」「失敗リスク」「アイデア不足」が並んでいます。表面の数字は「お金が足りない」に見えますが、実態は「資金が決まらない=商品が決まらない=検証していない」が積み上がっている構造です。

つまり、最初に動かすべきは資金でも計画書でもなく、検証の最小単位=1ヶ月実験です。「お金がない」の本当の意味は「いくら必要かを検証していない」であることが少なくありません。

ポイント 今日から始める3ステップ

紙とペンだけで動く出だし

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実験を立ち上げるための3ステップは紙とペンだけで完結します。

今夜から動く3ステップ

  • ステップ1:本業で過去5年に「ありがとう」と言われた場面を5件書き出す
  • ステップ2:その中から「もう一度頼みたい」と言われそうな1件を選ぶ
  • ステップ3:その内容を伝えられそうな知人1名の名前を書く

このリストが揃えば、来週には「ちょっと相談に乗ってもらえないか」と声をかけるところまで動けます。

ポイント 実験の先にあるもの

計画書では見えない景色

point

1ヶ月実験は完璧に成功する必要はありません。むしろ「失敗の輪郭」を掴むためのものです。実験を1回やり切った会社員は、事業計画書を10回書き直していた頃には絶対に書けなかった具体的な提案文・価格・対象像を、数行で書けるようになります。

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「起業準備を始めよう」と決めた日は誰でも気合が入っています。ところが数週間後、気がつくと何も動いていない。 ノ

事業計画書を厚くする方向ではなく、お客様1人と接する方向に歩を進める。これが、半年動けなかった準備期間を短縮する、いちばん地味で確実な方法です。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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