記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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神奈川県は人口約922万人(東京都に次ぐ全国第2位)、民営事業所数28万5,325(経済センサス令和3年・神奈川県統計)を抱える、県内総生産が全国4位の経済規模を持つ県です。横浜・川崎・相模原の3政令市が大きな存在感を放つ一方で、藤沢・平塚・茅ヶ崎の湘南エリアや、厚木・海老名・大和の県央、小田原・秦野の県西、横須賀・三浦の三浦半島など、それぞれが固有の産業と顧客層を持つ多層的な県でもあります。
「神奈川で起業を考えているけど、横浜の華やかなスタートアップ情報はピンとこない」という会社員の方からの相談が、起業18フォーラムでも増えてきました。
今日は政令市以外の神奈川で起業を始める手順を、県と市町村の二層支援制度、地域に合った仕事の選び方、会員さんの実例まで含めて整理します。
神奈川で起業するメリットと多層構造の県の特徴

通勤時間が片道1時間圏にある1都3県市場
神奈川県の特徴は、東京都心まで電車で30〜60分という立地にありながら、県内に独立した産業集積と暮らしの圏域を持っていることです。横浜・川崎・相模原以外の市町村に住んでいる会社員の方は、平日は東京勤務、休日は地元商圏という二刀流を最初から組み立てやすい立場にいます。これは大阪や愛知の郊外都市にもない、首都圏特有の優位性です。
神奈川県の製造品出荷額は全国4位(経済産業省・経済構造実態調査2024年公表・2023年データ)で、京浜工業地帯の中核として輸送機械・化学・食料品の集積を持ちます。同時に「情報サービス業」と「学術・開発研究機関」の従業者割合は全国トップクラスで、研究開発機能への産業転換も進んでいます。会社員時代の専門性が、地元の中小製造業や研究開発関連企業に対して直接価値を持つ構造になっているのです。
湘南・県央・県西・三浦半島で性格が違う
ひとくちに神奈川といっても、エリアによって顧客層も商習慣もまったく違います。
- 湘南エリア(藤沢・茅ヶ崎・鎌倉・大磯):移住層・ライフスタイル消費・観光客・小規模事業者
- 県央エリア(厚木・海老名・大和・座間・伊勢原):中堅中小製造業・物流・研究開発拠点
- 県西エリア(小田原・秦野・南足柄):観光・農業・地場産業・移住起業
- 三浦半島エリア(横須賀・三浦・逗子・葉山):海洋・防衛・水産・マリンレジャー
- 湘南北部・県北(平塚・伊勢原・愛川):神奈川と東京の中継地・物流結節点
商品やサービスを設計するときは「神奈川県全域に売る」ではなく、自分が住んでいるエリアと隣接1〜2エリアに絞り込むほうが、最初の10人の顧客は早く見つかります。
神奈川県+市町村の二層支援制度を知っておく

県全域をカバーする「神奈川県よろず支援拠点」
神奈川県内で創業相談に行く最初の窓口候補は、神奈川県よろず支援拠点です。横浜の本部に加え、海老名市・横須賀市・小田原市・川崎市・藤沢市・相模原市の6サテライトが県全域をカバーしており、相談料は無料、中小企業診断士などの専門家が経営・財務・販路まで一貫対応します。政令市以外に住んでいる方は海老名・小田原・横須賀・藤沢の4サテライトが近く、移動時間も短く済みます。
市町村ごとの特定創業支援等事業
特定創業支援等事業は、産業競争力強化法に基づく国認定の継続支援プログラムで、修了すると会社設立時の登録免許税の軽減や信用保証協会の創業関連保証の特例が使えるようになります。
- 藤沢市:藤沢商工会議所・湘南産業振興財団との一体支援、創業塾、湘南ビジネスコンテスト
- 平塚市:平塚商工会議所・平塚/中南/中栄信用金庫との連携、創業塾、ハンズオン支援、創業支援アドバイザー派遣
- 茅ヶ崎市:湘南ビジネスコンテスト、神奈川ビジネスオーディション、ワンストップ相談窓口
- 厚木市:個別相談、創業予定者へのハンズオン支援、ものづくり拠点との連携
- 小田原市・横須賀市:地場産業や三浦半島特性に合わせた個別相談・創業塾
藤沢市の「キュンとするスタートアップ融資」は支払利子のうち年1.8%以内(女性・若者・シニア起業家は3年間)を補助、加えて支払信用保証料の100%(上限20万円)を補助する仕組みです。政令市以外の市町村でも、商工会議所と信用金庫が連携した独自融資・利子補給メニューが整備されています。
県の補助金とインキュベーション施設
神奈川県中小企業生産性向上補助金(令和8年度)は、一般枠(上限500万円)、グループ化支援枠(上限4,000万円)、創業者成長支援枠(上限300万円)の3つの申請枠があります。補助率は中小企業者(一般枠・グループ化支援枠)が1/2、小規模事業者および創業者成長支援枠は2/3が基本となります。令和8年度は米国関税や日産自動車生産縮小の影響を踏まえた加点項目も新設されています。
藤沢市内には湘南藤沢インキュベーションセンター(SFIC)と慶應藤沢イノベーションビレッジ(SFC-IV)の2施設があり、入居者にはインキュベーションマネージャーが事業計画から販路開拓までサポートします。県央には公益財団法人神奈川産業振興センター(KIP)の総合経営相談窓口があり、創業相談から補助金情報、事業計画書作成支援まで無料で対応しています。
支援制度や補助金は「何を売るか」「誰に売るか」が決まったあとに使う道具です。最初に窓口を回って「これからのことを相談したい」と話しても抽象的な助言で終わることが多く、商品を仮決めしてから訪ねるほうが100倍中身が濃くなります。
神奈川で勝てるビジネス設計:仕事の4分類で考える

あと5万円から始める設計の基本
拙著『会社を辞めずにあと「5万円!」稼ぐ』(大和書房)に「いきなり月30万円を狙わず、月5万円が安定して入る仕組みを先に作る」という考え方が出てきます。神奈川県内で会社員のまま起業準備を進める場合、最初の目標は「半年以内に月5万円の継続収入」に置くのが現実的です。退職金や貯金を切り崩さず、在職中の給与で生活費を回しながら、固定費月5万円以内・自分ひとりで回せる仕組みを設計するほうが続きます。
商品を考えるとき、「何を売るか」を抽象的に悩むより、商品の形を先に4つに分けて選ぶほうが進みやすくなります。
- モノ:物販、食品加工、ハンドメイド、農産物ECなど在庫を伴う商品
- やってあげる:代行、外注、アシスタント、サポート、現場作業など労働集約型
- 教える:講座、コーチング、コンサルティング、研修、レッスンなど知識提供型
- 場・機会:レンタルスペース、コミュニティ、イベント、サブスクなど集まる仕掛け
神奈川のエリア別に向きやすい仕事
エリアごとに住んでいる人・通っている人が違うので、向きやすい仕事の形も自然と分かれます。
- 湘南エリア:移住者・観光客向けの「教える」「場・機会」(料理教室、ヨガ、ワーケーション拠点、地元食材EC)
- 県央エリア:中堅中小製造業向けの「やってあげる」(業務改善代行、マニュアル整備、技術文書作成、Excel自動化)
- 県西エリア:観光・農業との連携型「モノ」「教える」(地場産品EC、農家伴走、移住者向け生活サポート)
- 三浦半島エリア:海洋・水産・マリン関連の「やってあげる」「場・機会」(漁業者支援、ダイビングスクール、観光ガイド)
- 平塚・伊勢原・愛川など中継地:BtoBの「やってあげる」(物流補助、現場改善、データ整理代行)
自分が住んでいるエリアの主力産業と、自分の会社員時代の経験が重なる場所を探すと、最初の顧客との距離がぐっと近くなります。
通勤時間と地元商圏を両方使う
横浜・川崎・相模原以外の神奈川で起業準備を進める強みのひとつが、平日の通勤時間です。片道1時間として往復2時間、月20日で月40時間が読書・スマホ学習・原稿作成・SNS発信に使える可動時間になります。朝晩30分でも年間180時間が起業準備の純粋投下時間として確保できる計算です。会社の勤務時間を1分も削らずに、通勤時間と週末の地元活動だけで仕組みを組み立てる人が、起業18フォーラムの会員さんの中にも多くいます。
起業18フォーラム会員 厚木市Iさんの転換ストーリー

自己流で経営コンサルを名乗った3ヶ月
厚木市にお住まいのIさん(47歳・大手メーカー研究職勤務15年)は、起業18フォーラムに参加する前、独学で読んだ本やネット記事をもとに「経営コンサルタント」を名乗り、価格30万円のコンサルメニューを作って名刺やWebサイトを整えました。ところが3ヶ月の間、問い合わせはゼロでした。知人に声をかけても「具体的に何ができる人なのかわからない」と言われ、行き詰まりを感じて起業18の門をたたいたそうです。
勉強会で学び直した「指名された理由から逆算する」
勉強会でIさんが取り組んだのは、自社内で「Iさんに頼みたい」と過去5年間で言われた仕事を30件ほど書き出す作業でした。書き出してみると、研究職としての専門性そのものよりも「中小製造業の試作品評価レポートを論理的にまとめ直して、社外提出用に書き直す」という仕事に集中していたことがわかったのです。Iさんは「経営コンサル」という大きな看板を一度外し、「中小製造業向け 製品試作レポート作成代行」という1サービスに絞り込みました。
- サービス名:中小製造業向け 製品試作レポート作成代行
- 価格:レポート1本3万円・モニター期間は1.5万円
- 営業先:県央エリア(厚木・海老名・大和)の中小製造業5社からスタート
- 稼働時間:朝30分の構成検討+週末土曜の本作業(約3時間)
- 固定費:月5万円以内(クラウドストレージ・WordPress・名刺)
11ヶ月目で月5万円・18ヶ月目で月15万円継続
絞り込みから2ヶ月で最初のモニター契約が成立、半年で継続顧客3社を確保し、11ヶ月目には月5万円の壁を越えました。現在は18ヶ月目で月15万円が継続的に入り、在職のまま神奈川県中小企業生産性向上補助金の創業者成長支援枠(上限300万円・補助率2/3)への申請を視野に、商品ラインを「試作レポート作成代行+月次伴走サブスク」へ広げる準備を進めています。「経営コンサル」と名乗っていた3ヶ月は遠回りに見えますが、Iさん自身は「あの時期に自己流の限界がわかったから、勉強会の話が一語ずつ刺さった」と振り返っています。
神奈川での起業準備、最初の一歩は基礎学習から

神奈川県内で起業を始めるとき、いきなり藤沢市やほかの市町村の創業窓口に駆け込むより、まず「自分は何をやる人か」「どのエリアの誰に売るのか」を固めるほうが先です。起業18フォーラムの無料動画と少人数セミナーで起業の全体像と仕事の4分類を体系的に学んでから、よろず支援拠点や特定創業支援等事業の窓口を訪ねると、相談の中身も補助金の活用もぐっと具体的になります。

神奈川県は「東京通勤圏」と「県内の独立した商圏」を両方使える稀有な県です。横浜・川崎・相模原という強い政令市の影に隠れがちですが、湘南・県央・県西・三浦半島それぞれに固有の産業と顧客がいて、会社員時代の経験が直接刺さる現場がいくつもあります。今日からできるのは、自分の住んでいるエリアと、過去5年で社内外から頼まれてきた仕事30件を書き出してみることです。
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