記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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● 質問
同年代の友人から「シニア起業はそれなりの資金とコネがないと無理だよ」と言われ、その日から手が止まりました。私は62歳・元電子機器メーカーの法人営業で、会社員雇用は来月末まで。退職金はある程度ありますが、生活防衛のために大きく投じる気にはなれません。
シニア起業はやっぱり資金とコネがすべてなのでしょうか?

● 回答
シニア起業は資金とコネがすべて、と思っていませんか? 起業18フォーラムで支援してきた経験から見ると、その思い込みこそ、一番動けなくなる原因です。
実態は少し違います。シニア層が最も持っているのは、大きな資金でも派手な人脈でもなく、「経験という眠っている資産」です。この経験を、相談・代行・講座・伴走支援のような小さな出口に変えれば、退職金を大きく投じなくても、月5万円台のスタートは十分に組めます。
誤解の正体:大きく始める起業情報に振り回されている
「シニア起業に資金が必要」という情報の多くは、フランチャイズ加盟・実店舗開業・退職金で法人設立といった、最初から数百万円〜数千万円を投じる前提のケースを引いています。
もちろん、飲食店、店舗型ビジネス、在庫を抱える物販、設備が必要な事業であれば、まとまった資金は必要です。ここは軽く見てはいけません。起業は夢ではなく、現金の出入りで動く現実です。
ただし、すべてのシニア起業がその形とは限りません。日本政策金融公庫「2025年度新規開業実態調査」によると、開業費用の平均値は975万円、中央値は600万円です。また、開業費用は「250万円未満」が20.1%、「250万〜500万円未満」が21.7%で、500万円未満の開業が4割以上を占めています。
つまり、開業には資金がかかるケースがある一方で、比較的小さく始めている人も少なくありません。特に、法人営業・経理・人事・製造管理・品質管理・総務・教育研修など、長年の経験をサービス化する場合は、店舗や在庫を持たずに始められます。
- 「シニア起業=フランチャイズ・実店舗」前提の記事が目立ちやすい
- 退職金一括投入の事例は、成功談として取り上げられやすい
- 相談業・代行業・講座型など、低資金で動く事例は表に出にくい
- コネを「法人取引につながる太い人脈」と誤解しやすい
シニア起業で必要なのは、いきなり大きく張る資金ではありません。まずは、退職金を守ったまま試せる小さな設計です。
実態:眠っている経験を「半径3メートル」で換金する順序
拙著『会社を辞めずに朝晩30分からはじめる起業』に「朝晩30分」という言葉が出てきます。シニア層こそ、長年の業務経験が「人に教えると意外と価値がある」レベルに育っているケースが多いのです。
たとえば、営業職なら見積もり書の組み立て方。経理ならExcelによる月次集計。法人営業なら大手企業の発注フロー解説。製造現場なら工程改善の段取り。人事なら面接や研修の設計。こうした経験は、本人にとっては当たり前でも、困っている中小企業や個人事業主から見ると、十分に価値があります。
ただし、いきなり「大企業向けコンサルタント」と名乗る必要はありません。最初は、半径3メートルの相手に話してみるだけで十分です。元同僚、取引先、地元商工会議所、町工場、知人の事業者など、「少し話を聞いてもらえる相手」から始めます。
ここでいうコネは、特別な人脈ではありません。名刺交換だけで終わった偉い人より、10分だけ本音で相談できる近い相手のほうが、最初の仕事につながります。太いパイプではなく、細い糸を何本か持つイメージです。
62歳の元営業職会員Iさん。電子機器メーカーで37年勤務し、退職金は1,800万円ありました。しかし夫人と相談して、「退職金は生活防衛資金として守り、起業には大きく使わない」と決めました。
最初の3ヶ月は、地元商工会議所の経営指導員に紹介された中小製造業5社へ、「商談資料の構成相談」を無料モニターとして持ち込みました。4ヶ月目に、最初のモニター料金1万5,000円が発生。10ヶ月目には法人クライアント2社・月12万円が安定し、退職金には大きく手をつけずに、会社員雇用の終了を迎えました。
- 長年の業務経験を「他人に教える形」に整える
- 地元の中小企業・商工会議所など、半径3メートルから声かけを始める
- 無料または低単価モニター3〜5件で価値を検証してから有料化する
- 退職金は生活防衛資金として温存し、試験費用とは分けて管理する
- 会社員雇用が続いているうちに、月5万円の収入軸を仕込む
資金より大事なもの:継続できるジャンル設計
シニア起業で本当にネックになるのは、資金だけではありません。むしろ見落とされやすいのは、「体力的に続けられるジャンルか」です。
退職金を投じる前に、平日の朝晩30分で2週間試走できるジャンルかどうかを判定するほうが、資金繰りより先に見るべき判断軸になります。
Iさんも当初はオンライン物販を検討されていました。しかし、長時間のPC作業で目の疲労が強く、商品登録や在庫管理が負担になりました。そこで、訪問と対面を組み合わせた商談支援に切り替えたところ、身体への負担が減り、無理なく続けられるようになりました。
60代以降の起業は、短距離走ではなく、軽い荷物で歩く長い散歩に近いです。最初に重い荷物を背負うと、景色を見る前に疲れてしまいます。

今夜から動けるのは、自分が会社で頼まれてきた仕事を10件書き出すこと。それだけで十分です。
- 退職金は、生活防衛資金と起業の試験費用に分けて考える
- 身体に無理が来ないジャンル設計が、60代以降の継続率を左右する
- 月収を長く組むなら、相談・講座・顧問など継続型の要素を1本入れる
- 家族の合意は「いくら使うか」だけでなく、「どの時間を使うか」で取りにいく
シニア層の起業準備は、資金もコネも「すべて」ではありません。もちろん、資金計画も人とのつながりも大切です。けれど、最初の勝負どころはそこではありません。
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