会社員のうちに「個人ブランド」を育てる3つの基本|独立した瞬間に消える肩書きへの備え方

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

「○○株式会社の△△です」と名乗ってきた40代・50代の会社員が、いざ独立を考え始めた瞬間に直面するのが、「会社の看板を外したら、自分には何が残るのだろう」という不安です。

帝国データバンクの2024年調査によると、新規起業代表者の平均年齢は48.4歳まで上がってきています。会社員として20年以上のキャリアを積んだあと、人生の後半戦で起業に向かう人が増えているのです。

ところが、長く会社員をしてきた人ほど、独立後に「肩書きがなくなった瞬間に、誰にも頼まれなくなった」という現実に直面します。これは本人の能力の問題ではなく、会社員のうちに「個人としての看板」を育てる時間を取らなかったことが原因です。

この記事では、起業18フォーラムで支援してきた現場経験から、会社員のうちから在職中に育てておくべき「個人ブランド」を構成する3つの土台を整理します。在職中に動けば、会社の看板が外れても選ばれ続けるための準備ができます。

ポイント なぜ「会社員の肩書き」だけでは独立後に通用しないのか

独立直後に「価値ゼロ」になる人の構造

融資

大手企業の部長や課長として20年・30年と働いてきた人ほど、退職した瞬間に「自分は何者なのか」を語れなくなる傾向があります。これは、これまでの仕事の成果のすべてが、会社の看板(信用・取引履歴・組織の力)と密接に結びついていたためです。

たとえば、起業18フォーラムには、退職後に独立した50代男性のAさんから、「最初の名刺交換で相手の反応が完全に変わった」という相談が届くことがあります。会社員時代は名刺を出した瞬間に話が始まったのに、独立直後の名刺は「個人の名前」と「事業内容」しか書いていない。相手の表情が薄くなり、雑談で終わってしまう。これは経験則として、独立後の最初の半年に多くの人が経験する典型的な壁です。

拙著『起業神100則』に「自分は0」という考え方が出てきます。会社員時代に積み上げた信用・役職・人脈の多くは、独立後にはほとんど通用しないという前提から始めるべきだという話です。この前提を在職中に受け入れられるかどうかで、独立後の最初の半年の動きが大きく変わります

独立後に「価値ゼロ」と感じる人の3パターン

  • 会社の取引先からの仕事を「自分の実績」と認識しているケース
  • 役職名(部長・本部長)が自分の専門性だと混同しているケース
  • 会社のメールアドレスや名刺を前提にした人脈に依存しているケース

このパターンに当てはまる人ほど、退職前に「個人としての看板」を準備する必要があります。会社員のうちに動けば、会社の信用に頼らず個人で選ばれる経験を、リスクゼロで積むことができます。

ポイント 個人ブランドを支える3つの土台

在職中に育てるべき信用・発信・実績の三角形

フリーランス

個人ブランドというと、SNSで派手に発信して有名になることを想像する人が多いのですが、起業18フォーラムで支援してきた現場の感覚では、会社員のうちに育てるべき土台は3つあって、どれが欠けても独立後に苦戦します

拙著『会社で働きながら6カ月で起業する』でお伝えしている「知・人・金」の3チカラと近い発想ですが、独立後の「個人ブランド」に絞って整理すると、土台は次の3本柱になります。

土台①:自分名義の発信履歴(あなたを知る入口)

会社員時代の発信は、会社の広報や営業資料を通じてしか世の中に出ていきません。退職した瞬間、相手が「あなたを知る入口」がゼロになります。在職中に最低1年は、自分名義のブログ・SNS・メルマガなどで発信を続けておくことが、独立後の入口を作ります。

たとえば、私が支援した会社員の中には、業務知識をベースにブログを月4本だけ書き続けて、退職時点で月間アクセス1,000件を超えていた人がいます。発信の本数より、続けた期間と「自分の言葉で書いている」ことのほうが効きます。

在職中に始めやすい発信の3パターン

  • 業務知識を一般読者向けに翻訳するブログ(週1本・1500字程度)
  • X(旧Twitter)で業界の変化に対する自分の見解を毎日発信
  • 勉強会・社外セミナーでの登壇録をnoteに残す
土台②:第三者からの推薦・実績(あなたを信じる根拠)

個人ブランドの2本目の柱は、「あなた個人を信じる根拠」が会社の外にあるかです。会社員時代の実績の多くは、社内評価や取引先評価として残っているだけで、退職と同時にアクセスできなくなります。

在職中に、会社とは関係ない場所で「個人として誰かに喜ばれた経験」を残す。これは難しいことではなく、たとえば近所の知人にエクセルの使い方を教えて感謝された記録、起業準備で書いたブログ記事に対する読者からのコメント、勉強会で受講者に書いてもらった感想文なども、すべて独立後に「私はこういう人です」と説明する一次資料になります

50代前半・大手メーカーで営業を25年続けてきた小早川さん(仮名)は、起業18フォーラムに参加された当時、月収50万円の会社員でしたが起業準備収入はゼロでした。半年目から営業向けのブログを書き始め、12ヶ月目に元同僚や同業他社からの相談が月2件入るようになり、25ヶ月目に独立。現在は法人2社と顧問契約しており、在職中に書き溜めた記事60本がそのまま「個人としての実績の証拠」として機能しています。

土台③:自分の専門領域の言語化(あなたが何者かを伝える短文)

3本目の柱は、「あなたは何の専門家ですか?」と聞かれたときに、15秒で答えられる短文を持っていることです。

会社員のときは「○○株式会社の△△部長です」で済みます。けれど独立した瞬間、それは説明になりません。「営業を25年やってきました」「マネジメント経験があります」では、相手は何を頼めばいいか分かりません。

専門領域の言語化とは、たとえば「BtoB製造業の営業マネージャー向けに、新人育成の仕組みを3ヶ月で作り上げる支援をしています」のように、「誰に・何を・どのくらいで」を一文にまとめた短文のことです。

専門領域の言語化テンプレート

  • 誰に:BtoB製造業の40〜50代営業マネージャー
  • 何を:新人育成の仕組み構築・OJT設計
  • どのくらいで:3ヶ月の伴走支援
  • 結果:新人の独り立ち期間が平均6ヶ月→3ヶ月に短縮

このテンプレートは、独立してからではなく、在職中の段階で書いて何度も書き直しておくものです。会社の中で「この相談は自分のところに集まる」「この種の質問は社内でいちばん答えられる」という領域を観察しておくと、自然と書けるようになります。

ポイント いつから始めるべきか|独立日から逆算した2年計画

在職中の2年で土台を作る具体的な進め方

個人ブランドの土台は、独立を決めてから半年で作れるものではありません。会社員のうちに最低2年、できれば3年の助走期間を取るのが現実的です。

独立予定日から逆算して、まず24ヶ月前に発信を始めるのが、起業18フォーラムでお伝えしている目安です。理由はシンプルで、発信を始めて半年は読者がほぼゼロ、12ヶ月で月数十アクセス、24ヶ月でやっと月数百アクセスというのが平均的な伸び方だからです。

独立日から逆算した2年計画

  • 24ヶ月前:自分名義の発信媒体を1つ立ち上げる(ブログ or note)
  • 18ヶ月前:勉強会・社外コミュニティに月1回参加し、個人として顔を出す
  • 12ヶ月前:起業準備として小さな受注を始め「個人としての納品履歴」を作る
  • 6ヶ月前:専門領域の言語化を15秒の自己紹介に整える
  • 独立直前:受注見込み客リストとブログ記事60本以上を確保

このスケジュールで動くと、独立日に「会社の看板」が外れても、すでに個人としての発信履歴・第三者からの推薦・自己紹介の言葉が揃った状態になります。焦って退職してから準備を始めるのではなく、在職中の余裕のある時期にコツコツ積むのが、最もリスクの少ない独立準備です。

会社員という立場を否定する必要はありません。会社の中にいるあいだに、その看板の外でも生きられる準備を進める。これが、独立後の最初の半年を穏やかに過ごせる人と、慌てて何でも引き受けて疲弊する人を分ける分岐点になります。

起業準備中の「信用の作り方」|会社員の肩書きがなくなる前にやること
「○○株式会社の田中です」。この一言だけで、電話は折り返してもらえるし、商談のアポも取れる。会社員として当たり

会社の看板に頼らず個人として選ばれる準備は、退職を決めてから始めるものではなく、会社員でいる今この瞬間から始められるものです。在職中だからこそ作れる時間と心の余裕を、自分の看板を育てる土台づくりに使ってみてください。


さらに詳しく知るには、以下より検索してみてください!
記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

起業アイデア診断
【起業セミナー】会社員のまま始める起業準備・6ヵ月で起業する!

【動画セミナー】あなたのタイミングで学べる動画版もあります!

ポイント この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます!