自分の経験を商品に変えるコツ|起業前に会社員がすべき商品設計の考え方

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

会社員として真面目に働いてきた人ほど、起業準備でつまずきやすい場所があります。それが「商品設計」です。「何を売ればいいか分からない」「自分には売れるものがない」という声は、起業18フォーラムに届く相談のなかでも特に多いテーマのひとつです。

でも、その「分からない」の正体は、多くの場合、考え方の順番が逆になっているだけのことが多いのです。

今回は、商品設計でつまずく会社員の典型的なパターンと、そこからどう抜け出すかをお伝えします。

ポイント 「商品がない」は思い込み|会社員が陥りやすい設計ミス

「何を売るか」より先に確認すべきこと

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起業準備を始めた会社員の多くは、最初に「アイデアを探す」ことから始めます。でも実は、そこに大きな落とし穴があります。

拙著『起業神100則』にこんな言葉があります。「ドリルを売るな、穴を売れ」。商品(ドリル)を先に考えるのではなく、お客様が本当に欲しいもの(穴=解決したい課題)から逆算して考える。この順番の違いが、商品設計の成否を分けます。

日本政策金融公庫「2023年度起業と起業意識に関する調査」によると、会社員のまま小さく起業を始めるパートタイム起業家の89.1%が借り入れをせずにスタートしています。これは「大きな商品」「完璧な商品」を作らなくても始められる時代になっていることを示しています。だからこそ「何を作るか」より「誰の何を解決するか」という出発点が重要なのです。

  • 「画期的なアイデアがないと起業できない」という思い込み
  • 「自分のスキルは普通すぎて売れない」という決めつけ
  • 「まず商品を完成させてから売り出す」という会社員思考のまま

こうした誤解が重なると、起業準備は永遠に「準備中」のまま終わります。商品は最初から完成させる必要はなく、お客様の声を聞きながら育てていくものです。「穴を売る」とは、課題を解決する体験を売るということです。その体験さえ明確になれば、商品の形は後からでも変えられます。

ポイント 「名もなき強み」が商品の原石になる

自覚していない強みほど価値がある理由

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「すごいスキル」がなくてもいい

「私には特別なスキルがない」。この言葉を、私はこれまで多くの会社員から聞いてきました。でも、これは大きな誤解です。

拙著『起業神100則』の中で「名もなき強み」という概念を紹介しています。自分が当たり前にやっていること、当たり前にできることこそが、他の人には真似できない強みになります。製造業で品質管理を10年経験した人には「なぜこの部品が不良品になりやすいか」を瞬時に見抜く感覚があります。IT企業でプロジェクト管理を長年続けてきた人には「チームのコミュニケーションのどこがボトルネックになっているか」を察知する力があります。これらは、業界の外から見れば「専門知識」です。

「自分には当たり前すぎる知識」が、他の人にとっての大きな価値になります。だからこそ、棚卸しをしないまま「アイデアを探す」のは順番が逆です。まず自分の「当たり前」を書き出すことから始めてください。

  • 「自分が10年以上続けていること」をすべて書き出す
  • 「職場で自分だけに相談が来ること」を書き出す
  • 「友人・知人から何度も頼まれること」を書き出す
  • 「仕事でいつも見落とされているが自分は気づいていること」を書き出す

このリストから「誰が困っているか」を重ね合わせると、商品のアイデアが見えてきます。完璧な商品を先に作る必要はありません。まず、このリストを今夜作ることから始めてみてください。

ポイント 価格設定は「あなたの価値観」が現れる

値段を安くすれば売れるは幻想

会社員

最初に「安くする」と後が苦しくなる

商品設計と切り離せないテーマが価格設定です。多くの会社員起業家が最初にやってしまうのが「安くしすぎること」です。「自信がないから」「実績を作るため」という理由で、本来の価値より大幅に低い価格を設定してしまいます。

でも、安すぎる価格は逆効果になることがあります。お客様の側から見ると「安い=品質が低い」という印象を持つこともあるからです。起業18フォーラムでは「出した金額の倍以上の価値を提供する気概で活動する」という考え方を大切にしています。この気概があれば、価格に自信が持てるようになります。

「価値の置き場所を変える」という発想も重要です。手作りカバンを500円で販売していた方が、「お受験の面接対策バッグ」という用途を発見し、5,000円以上でも安定して売れるようになったケースがあります。商品は同じでも、誰に・どんな状況で届けるかで、価格は大きく変わります。これが「穴を売る」発想の具体的な形です。

価格を決めるときの基本は、コストの積み上げではなく「提供できる価値」から逆算することです。最初から安くしすぎると、値上げが難しくなる。かといって高すぎると動けない。お客様の反応を見ながら調整していく姿勢が、長期的には一番うまくいきます。同じサービスでも、届ける対象と文脈を変えれば単価は大きく変わる――これが「穴を売る」発想の価格版です。

「誰が、どんな状況で、何に困っているか」を一文で書いてみてください。その一文が価格設定の根拠になります。

ポイント 実例:品質管理の経験が商品になったBさんの話

40代会社員が8ヶ月で最初の月6万円を実現

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起業18フォーラムの会員Bさん(仮名・40代前半・製造業品質管理職・子ども2人の会社員)の話をご紹介します。

Bさんの月収は41万円。生活には困っていませんでしたが、「このまま定年まで今の職場でいいのか」という漠然とした不安がスタートでした。起業を考えたのは「自分の経験が会社の外でも通用するか確かめたい」という気持ちからでした。

最初の4ヶ月は、ブログに品質管理の知識を書き続けましたが、反応はほぼゼロでした。転機は、「品質管理とは何か」という知識発信をやめて、「中小製造業が抱えている不良品問題を減らすお手伝い」という課題解決の文脈に切り替えたことです。スペック説明から、誰かの悩みを解決するという発想への転換が、商品設計の核心でした。

8ヶ月目に最初のクライアントを獲得し、現在は月6万円の顧問契約を1社と継続中です。会社は辞めておらず、会社員のまま独立に向けて準備を着実に進めています。「スペックを売る」から「結果を売る」に切り替えた瞬間が、Bさんの商品が生まれた瞬間でした。

今夜、「自分のこれまでの仕事で、誰かから感謝されたこと」を3つ書き出してみてください。そこに、あなたの商品の原石があります。

ポイント 次のステップ:商品設計の最初の一手

「穴」を見つけてから商品の形を決める

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商品設計に「完璧な答え」は最初からありません。でも「誰の何を解決するか」が見えたとき、あなたの商品はもうそこにあります。起業準備中のこの時期は、完璧な商品を作ることよりも「誰かの課題と自分の経験が交差する一点」を見つけることの方が何倍も大切です。

商品を出すタイミングがわかりません。完成度の基準を教えてください
● 質問 起業準備として自分のサービスを作っているのですが、「まだ完成していないから出せない」という状態がずっ

「何を売ればいいか分からない」という状態は、スタートラインに立っているサインです。その問いを持ちながら動き続ければ、答えは必ず見えてきます。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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