記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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デザイナーとして働きながら「このスキルで独立できないか」と考えたことがある人は、思っている以上に多いです。でも、いざ起業を検討すると「何から手をつければいいか分からない」「自分の仕事に値段をつけられるか不安」という壁に当たる。
26年間で6万人以上の起業相談を受けてきた立場から言うと、デザイナーほど「自分の強みを低く見積もっている職種」はあまりありません。デザインの仕事を毎日続けていると、それが「普通」に見えてしまうのです。でも、その「普通」が外から見るとまったく普通ではない…。
デザイナーの「当たり前」は、実は起業の武器だった

起業において最も大事なことの一つが「自分の強みを正確に把握する」ことです。ところが、デザイナーはこれが特に苦手な職種です。毎日やっていることは「当たり前」に見えてしまうから。
「名もなき強み」とは、自分では気づいていないけれど、ほかの人には再現できないことです。
デザイナーには、この名もなき強みが驚くほど多い。
- 読み手を意識して情報を整理する習慣(多くの人にはこの発想がない)
- クライアントの曖昧な要望を「見えるかたち」に変換する力
- 複数の案を出して相手に選ばせるプレゼンの型
起業18フォーラムのWebデザイン系の会員さんと話すと、よくこう言われます。「デザインソフトが使えるだけでは差別化できないと思っていた」と。でも実際には、ツールよりも「どう考えるか」の部分に価値があります。ポスターを作ることと、ポスターで何を伝えるかを設計することは、まったく違う仕事です。後者ができるデザイナーは、起業の現場で確実に強い。
厚生労働省の職業情報提供サイト(jobtag)によると、グラフィックデザイナーの全国平均年収は令和5年時点で509.3万円です。会社の看板があるうちは「普通の給与」に見えますが、その仕事を個人で受注できれば、単価の設定次第でまったく違う収入構造になります。
起業の前に確認しておく「3つのチェック」

デザイナーが起業を考えるとき、最初に確認しておきたい問いがあります。
- 一人で始められるか?
- 一人で続けられるか?
- 大きなお金がかかりませんか?
この3つは、起業アイデアを検証するときの基本的な問いです。デザインの仕事は基本的に「一人で始められる」し「一人で続けられる」ケースが多い。パソコンと契約中のソフトがあれば、追加の初期投資はほぼゼロで動けます。この条件が揃っているだけで、スタートのハードルは大幅に下がります。
「まず1件」受注してみることが判断材料になる
会社員のうちに、小さな受注を1件体験しておくことをすすめています。「やれる気がする」と「実際にやってみた」の間には、思っている以上の差があります。
起業18フォーラムの会員さんの中には、最初に知人の飲食店のメニュー表を格安で受けて、そこから口コミが広がったというパターンが複数います。金額よりも「実績があること」が、その後の仕事獲得に効いてきます。会社員のまま走り始めて、需要を確認してから独立に進む。これがデザイナー起業の現実的な順番です。
デザイナーの起業アイデア:経験と業種を掛け合わせる

起業で成果を上げているデザイナーは「デザイン全般」ではなく、何かに絞っています。差別化は大げさにする必要はなく、小さな違いをいくつか掛け合わせれば、それだけでオンリーワンになれます。
- 「Webデザイン」×「美容サロン専門」 → 競合のいない特化型サービス
- 「グラフィックデザイン」×「中小企業の採用支援」 → 求人票・採用パンフ専門
- 「バナー・サムネイル制作」×「YouTube・SNS運用サポート」 → クリエイターのパートナー役
- 「デザインスキル」×「教える力」 → Canva・Figma講座やオンライン教材
ランサーズが発表した「フリーランス実態調査2024」によると、2024年のフリーランス人口は1,303万人(経済規模は20兆3,200億円)に達しており、クリエイティブ・Web・フォト系はその25%を占めます。市場の規模はすでに存在します。問題は「どこに届けるか」だけです。
飲食専門デザイナーに絞った40代の事例
起業18フォーラムの会員さんに、印刷会社でグラフィックデザインを10年以上担当していた40代の女性がいます。最初は「デザインができるだけで起業できるのか」と半信半疑でした。でも、過去の仕事を棚卸しすると、飲食業のメニュー表やPOP、チラシを大量に手がけてきた実績が出てきた。「飲食専門」に絞って打ち出したところ、地元の飲食店オーナーからの問い合わせが集まり始めました。起業から3ヶ月目に月6万円の売上が立ち、半年後には複数の飲食グループから継続依頼が来るようになっています。「何でもできます」より「これなら任せて」のほうが強い。それだけの話です。
デザイナー起業に多い失敗パターン

デザイナーが起業でつまずく場面は、多くの場合「デザインそのもの」ではありません。
「良いデザインを作れれば仕事が来る」という思い込みが、最初の壁になります。
どれだけ質が高くても、知ってもらわなければ存在しないのと同じです。仕事が来ないのは技術のせいではなく、認知の問題であることがほとんど。デザイナー起業でよく見る失敗パターンをまとめると、こうなります。
- 低単価案件を受け続けて、忙しいのに手元に残らない状態になる
- 1社への依存が深まり、取引が終わった瞬間に収入がゼロになる
- 「何でもできます」で打ち出して、逆に誰にも刺さらなくなる
26年間で見てきた傾向として、デザイナーが起業で行き詰まるときは「立ち位置」を間違えているケースが多い。「自分が誰の何の問題を解決するか」が定まっていない状態で走り始めると、どこにも辿り着けなくなります。
「何でもやります」は価格競争への入り口
会社員のデザイナーは、会社の仕事として様々な案件をこなします。それをそのまま個人事業に持ち込むと、強みが見えにくくなります。Webデザインも印刷物もSNS素材も全部やります、というポジションは、クラウドソーシング上の価格競争に巻き込まれやすい。特化することは「仕事が減る」感覚がありますが、実際には「指名で来る仕事が増える」という逆転が起きます。これはデザイン業界に限らず、起業全般に言えることです。
「最初の1円」が、デザイナー起業を本物にする
起業に踏み出せないデザイナーに「何が怖いですか」と聞くと、大抵こういう答えが返ってきます。「失敗したら戻れない気がする」「自分のスキルが通用するか分からない」と。でも、会社員を辞めなくても起業は始められます。
会社員のまま最初の1件を受注する経験は、「このスキルが市場で通用するかどうか」を教えてくれる、最高の実験です。うまくいけば自信になるし、修正が必要なら早いうちに気づける。どちらに転んでも、動いた人間にしか得られない情報があります。
デザイナーには、すでに起業に必要なものがそろっています。技術があり、伝える力があり、顧客の課題を形にする習慣がある。足りないのは「売る経験」だけです。
起業18フォーラムでは、「どこに特化するか」「最初の顧客をどう絞るか」を一緒に考える場を設けています。ひとりで考えていると同じところを堂々巡りしがちなので、ぜひ活用してみてください。
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