記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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今回のマネ虎レポートは、日本初のフィッシングカフェ開業を目指す、インテリアショップ経営者の男性のお話です。

令和版も大人気、今も色褪せることのない伝説「マネーの虎」。ビジネスを始めたい志願者が、成功社長(マネーの虎)5人を前に事業計画をプレゼンし、出資、または融資を勝ち取る番組です。コワモテ社長がブチ切れるシーンに、毎回ドキドキしっぱなしでした。

- 安田久(41歳・年商18億円)
(株)エイチ・ワイ・ジャパン 代表取締役社長 - 堀之内九一郎(56歳)
(株)生活創庫 代表取締役社長 - 南原竜樹(43歳)
(株)オートトレーディングルフトジャパン 代表取締役社長 - 吉川幸枝(68歳)
よし川グループ 代表取締役 - 貞廣一鑑(40歳)
(株)ラヴ 代表取締役
ちなみに、現在の南原会長です。虎ノ門・株式会社LUFTホールディングス事務所にて。

「日本初のフィッシングカフェ」 釣り堀×カフェという奇抜な発想

この回に登場したのは、インテリアショップを2店舗経営する男性です。
彼が虎の前に持ち込んだプランは、「日本初のフィッシングカフェ」というユニークなもの。店内の中央に大きな池(釣り堀)を設け、その周囲をカフェスペースで囲んだ空間で、飲み物を楽しみながら釣りを楽しめる、これまでにない業態を目指していたのです。
希望額は1500万円。虎たちの前で、彼はまっすぐな目でプレゼンを始めました。
安田社長「どんなお店なんですか?」
志願者「はい。店内はですね、中央にまあ大きな池がありまして、それを取り囲んでいただくように釣りを基本的には楽しんでいただきます」
安田社長「釣りをしながらお茶を飲むってことですか?」
カップルが遊びに行くところも少なくなってきている現状で、アミューズメント性ある落ち着ける空間を作りたいと訴える志願者は、イメージ図を取り出し、カフェスペースと釣り堀が一体になった店舗のレイアウトを説明します。
釣りをしながら飲み物が楽しめる空間、つまり「ただの釣り堀でも、ただのカフェでもない」第三の場所を作りたいというのが彼の構想でした。
安田久、真っ先に食いつく「俺はこれ素晴らしいと思う!」
プレゼンを聞いた虎たちの反応はさまざまでしたが、まず真っ先に声を上げたのは安田久社長でした。アミューズメントレストランのパイオニアとして「刑務所レストラン」など奇抜なアイデアで知られる安田社長は、このプランに強い関心を持ちます。
しかし、堀之内社長は懐疑的な表情を浮かべます。
志願者「純和風テイストを大切にしながらモダンな感じを出す。今やっているインテリアショップをディスプレイして、その中にアミューズメント性のある釣り堀を作る…」
ここで南原社長が質問を挟みます。
志願者「もともと最初は、インテリアショップにカフェを併設したかったっていうのもあったんですね。ただ、資金的な部分とか、いろんな面でちょっとそこまではできないと。私も一応、今、独立開業をしてから2年目なんですけれども、一応黒字です。今年7月に2号店を出しました。本当に小さな15坪ぐらいの、小さなお店を2つなのですけれども……」
南原社長「場所はどちらでオープンしてるんですか?」
志願者「奈良県です」
南原社長「郊外の、どこかのモールみたいなところにテナントで入ってるんですか?」
志願者「モールとかではなくて、うちだけがぽつんとある路面店で。本当に手作りなので、月販で100万前後です」
貞廣社長が驚きの顔をします。
南原社長が続きます。
貞廣社長「ええ、まあ13店舗ありますね。『ざうお』っていう会社で…… 九州(発祥)です」
志願者:「本当に、そういう居酒屋さんとか、そういう場所では逆にやっておられることは僕も存じてたんですけど。本当にカフェで手軽に、誰でもが楽しめるという、本当にアミューズメント性を持った『アミューズメントカフェ』というものを、僕が作りたい」
南原社長「でも楽しくて、本当……思い出しました。非常にコンセプトはいいと思うんです。我々にとって『何かすごいことできる人なんだな』って思わせますよね」
貞廣社長「すごいですよ」
ここで安田社長が切り込みます。
志願者「そうですね、あの、ぜひちょっと見ていただきたいものがあるんですけど。ちょっとだけ準備させていただけますか?」
男が持ち込んだものは、金魚鉢のようなもの。大きな鯉のような金魚が入っています。
「大和郡山の金魚」で女性を呼び込む

志願者がフィッシングカフェで使う魚は「金魚」。これは偶然の発想ではなく、明確な理由がありました。
出荷できない「規格外の金魚」を活かすという、コスト面でも合理的な発想です。そして金魚という「優しいイメージ」の生き物と、オシャレな内装を組み合わせれば、釣り堀に縁遠かった女性客を呼び込めると考えていました。
また、当時日本未発売の壁掛けの水槽なども用意していました。
ここで吉川社長が異論をはさみます。
志願者「今の若い方たちが、ブラックバスにしてもスポーツフィッシングという部分で、女性も増えています」
続いて、堀之内社長が面白いと評価しながらも、コーヒーを飲みにきて金魚を持って帰るのは不合理ではないかと指摘します。
ただ、安田社長からは「それだけでは出資をしてもらう人を口説くだけの厚みがない」と一蹴されます。虎たちには疑問符がついたようです。
話題性のある仕掛けを用意? 芸能人の金魚釣り大会構想
志願者は単にカフェを開くだけでなく、話題性を作るための仕掛けも構想していました。
安田社長「それがわからないんだよ……」
堀之内社長が畳みかけます。
雑誌にもフィッシングカフェのアイデアを持ち込んだり、メディアを活用して話題を作ろうとする構想があったことも話しましたが、虎たちには「夢物語」に聞こえたようです。
しかし、貞廣社長は違いました。
志願者が過去を語り始めます。
貞廣社長は共感しながら、しかし、背景を探って行きます。
志願者「そう…… あの、大切な僕に、仲間っていうのが……支えてくれて。」
虎「いい仲間ですか」
志願者「そうですね」
ついに虎が動きます。
しかし、安田社長はまだ納得がいかない様子です。
志願者「実際、メインターゲットに女性を置いてますので。そういう女性が多く集まっていれば、まあ勝手に男性客も来る。家族連れも、お父さんが金魚をすくったり釣ったりすると、子供は喜ぶ」
安田社長「それは素人的な考えだよ。ターゲットを絞っていかないと。例えば『10代だから、椅子はフカフカしなくてもいいよ』とか、『50代をターゲットにするカフェだから、ラウンジ風にするとか、フカフカにしなきゃいけない』とかさ。すべて、その入れるターゲットがあって、そこでもって料金設定が決まったり、内装が決まったり、そのすべてが俺、決まると思うんだよ。俺もよくあるんだけど、例えば自分が40(歳)になって、渋谷のさあ、若者がいっぱいいるセンター街に入って歩きづらいんだよ。だったら銀座で買い物したいんだよ。『自分のコンセプトはこうです』『ターゲットはこういう店をやるんだ』、だからそれをやるのに『この場所がいいんだ』っていう考え方じゃないの?」
志願者が安田社長に答えようとした瞬間、貞廣社長が割って入ります。
ここで南原社長が「客単価」の話に入ります。
南原社長「僕はてっきりお茶を頼むとタダで金魚が釣れると思っていたけど……?」
志願者「じゃないです。カフェはカフェ。5回転したとして,1日15万6,000円くらい」
安田社長が声を荒げます。
吉川社長も、名古屋で朝の7時からやって夜9時までやっても、5回転はとてもおぼつかないと。
虎が指摘したのは、客の「回転数」の問題です。カフェというのは、そもそも居心地よくゆっくりしていただくのが魅力のはずなのに、そこで「1日に5回転以上」という目標を立てるのは矛盾しているのでは? というわけです。飲食店経営のプロならではの、本質を突く指摘でした。
結果はノーマネーでした。志願者の人柄や熱意は評価されながらも、ビジネスとしての数字の裏付けが不十分だったのです。
まとめ「好きなこと」と「ビジネス」の間にある深い溝

この回で最も印象的だったのは、堀之内社長の言葉です。「ただ好きだからやりたいのか、金儲けとしてやりたいのか」という問いかけは、多くの起業家が直面する本質的な問いです。
釣りが好き。カフェが好き。落ち着ける空間を作りたい。その情熱は本物でした。しかし、起業で最も難しいのは、「好きなこと」を「他人がお金を払ってくれるビジネス」に変換する部分です。
志願者が交通事故という試練を乗り越えて夢を持ち続けたこと、それ自体は本当に素晴らしい。ただ、夢の大きさとビジネスモデルの現実性は別物です。
フィッシングカフェというコンセプト自体は今でも全国にいくつか存在し、一定の需要があります。ただし成功している店は、「釣りをメインとして、カフェ要素はあくまでもサービスの付加価値」という位置づけを明確にしているか、「カフェとしての居心地を前提に、釣りはオプション」と割り切っているかのどちらかです。志願者が描いた「融合型」は、当時の市場では難しかったのかもしれません。
よくある質問(FAQ)
Q. この回でマネーは成立しましたか?
A. いいえ。虎全員が出資を見送り、ノーマネーでフィニッシュとなりました。志願者の人柄や話し方は高く評価されましたが、ビジネスモデルの数字面や、アミューズメントとカフェを融合させるコンセプトの曖昧さが課題となりました。
Q. フィッシングカフェは現在も存在しますか?
A. 全国各地に釣り堀カフェ・フィッシングカフェは存在します。ただし、この志願者がその後フィッシングカフェを開業したかどうかについての情報は確認できていません。
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