会社に行きたくない。逃げの起業はアリ? まず心を守ってから選ぶ別の道

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

朝、会社に行きたくない。その気持ちが何日も続いているなら、まずあなたを責めないでください。同じ思いを抱えている人は、想像よりずっと多くいます。

この記事では、心と体の安全を最優先にしたうえで、会社を辞める以外の道として「起業」という選択肢をどう考えればいいのかを、順番立ててお話しします。勢いで辞めて後悔しないために、今日できることから整理していきましょう。

ポイント 「行きたくない」は、あなただけではありません

約7割が強いストレスを抱える今の職場の現実

会社に行きたくない

会社に行きたくないと感じる自分を、意志が弱いと責めていませんか。けれど、それは特別なことではありません。厚生労働省「令和6年 労働安全衛生調査(実態調査)」では、現在の仕事や職業生活で強い不安、悩み、ストレスを感じている労働者は68.3%にのぼります。令和5年の82.7%からは下がったものの、なお働く人の約7割が同じ重さを抱えているのです。

ストレスの中身を見ると、最も多いのが「仕事の量」で43.2%、次いで「仕事の失敗、責任の発生等」が36.2%、「仕事の質」が26.4%と続きます。あなたが朝つらいのは、気持ちの弱さではなく、この環境のなかで誰にでも起こりうる反応です。まずは「自分がおかしいのではない」と知ることから始めてください。

起業の前に、心と体の安全がいちばん先

この記事は起業をすすめる記事ですが、順番だけは間違えたくありません。眠れない、食べられない、涙が出る。そんな状態なら、起業より先にやることがあります。心療内科や精神科を受診する、産業医に相談する、有給や休職で会社といったん距離を取る。これらは逃げではなく、回復のための正しい手当てです。

  • つらさを我慢して通い続ける
  • 勢いだけで翌日に退職を決める
  • 誰にも言わず一人で抱え込む

上のような進み方は、心の余力をさらに削ってしまいます。実際に、心の不調と無縁ではいられない職場も少なくありません。同じ調査では、過去1年間にメンタル不調で連続1か月以上休業した、または退職した労働者がいた事業所は12.8%にのぼりました。限界の手前で休む判断は、その後の人生を守る大切な決断です。

ポイント 勢いで辞める前に。起業は「逃げ道」ではなく「別の道」

悩みの種類が人間関係から売上へと入れ替わる

別の道を選ぶ

私はいつも「起業は逃げ道ではありません」とお伝えしています。逃げ道ではなく「別の道」です。会社員は人間関係、特に上司に悩まされることが多く、起業家は売上や報酬にいつも悩まされています。ストレスがゼロになるのではなく、悩みの種類が入れ替わるだけなのです。

だから判断軸はシンプルになります。人間関係で悩むほうがましだと思うなら会社、売上で悩むほうがましだと思うなら起業。操縦かんを自分で握れることに心が軽くなる人は、起業という別の道が合っています。

近年は、限界まで我慢せずに職場を離れる人が静かに増えています。パーソル総合研究所「離職の変化と退職代行に関する定量調査」(2025年)によると、離職者の5.1%、つまり20人に1人が退職代行を使って会社を去っています。利用者は20代から30代が中心で、前職に1年も在籍していなかった人が約4割を占めました。「辞めたいのに辞められない」と感じているのは、あなた一人ではありません。

興味深いのは、退職代行を使う人ほど協調性が高く、責任感が強い傾向があると報告されている点です。真面目で人に気をつかえる人ほど、組織のなかで自分をすり減らしてしまいます。その丁寧さや誠実さは、別の道では大きな武器になります。

ポイント 会社に行きたくない人に、起業が合いやすい5つの理由

心がすり減りやすい人と起業の働き方の相性

自分を責めない

ここからは、心がすり減りやすい人にとって、なぜ起業という働き方が合いやすいのかを5つに分けて整理します。どれも「会社では選べなかったもの」を、自分の手に取り戻す話です。

理由① 好きなこと、楽しいことを仕事にできる

仕事はそもそも、自分の成長のために行うものです。好きだ、楽しいと感じながら働けることには、大きな意味があります。「給料をもらっているのだから」「仕事とはそういうもの」と無理に自分を納得させて働き続けると、ストレスは静かにたまっていきます。起業するなら、自分が前向きになれる題材を選んでスタートできます。

理由② 自分のペースで働く時間を決められる

雇用されて働くと、1日8時間、週40時間という拘束が基本です。前の晩の準備や通勤を入れれば、一日の大半を仕事に差し出すことになります。「あの人が苦手だ」と思い続ける時間がこれだけ長いと、心の負担はかなりのものです。起業なら、1日に1時間だけ、週に数時間だけといった始め方もできます。

理由③ わずらわしい人間関係から距離を取れる

一人で起業すれば、人間関係に神経をすり減らさずに仕事を進められます。会社では、仕事そのものに集中するだけでなく、上司や先輩、同僚との関係にも気を配る必要があります。私自身も、この距離の取り方ですっかり気持ちを立て直すことができました。気の合わない相手と毎日顔を合わせる前提が外れるだけで、心はずいぶん楽になります。

理由④ 必要以上に自分を責めなくていい

「ミスばかりしてしまう」「自分だけ仕事ができない」と、必要以上に自分を責めてしまう人は少なくありません。会社では周りと足並みをそろえる必要があるぶん、どうしても自分を責める要素が増えます。人はそれぞれ違うのですから、周りと同じでないことを責める必要はありません。自分の心に寄り添って働くという意味でも、一人起業は相性のよい選び方です。

理由⑤ 走りながら直していける

起業すれば、会社で疲れた心を回復させながら、自分らしく働き方を整えていけます。組織で心が折れると、通院する人も、生活リズムを立て直すために時間が必要な人もいます。いちばん大事なのは、疲れの原因と距離を取り、自分のペースを取り戻すこと。拘束時間が長く休息が限られる雇用の働き方では、それが難しい場面もあります。

ポイント 意志力に頼らず「環境を整えて」始める

意志力に頼らず無理なく続く仕組みのつくり方

環境を整える

心が疲れている時期の起業準備で、いちばん避けたいのは「気合いで頑張る」発想です。心の力は無限ではありません。疲れているときに残りわずかな気力をやる気だけで使い切ろうとすれば、すぐに底をついてしまいます。だからこそ、根性で押し切るのではなく、心の力をできるだけ温存できるよう環境のほうを整えるのが正解になります。

たとえば、毎朝SNSを開く流れのなかに発信を組み込む、決まった曜日の夜だけ作業すると決めておく。こうして「やろうと決意しなくても手が動く」状態をつくると、少ない気力でも前に進めます。続ける力を根性で補うのではなく、続く仕組みを先に用意してください。

起業は「精神論9割」、だから心の置きどころが先

拙著『会社員が働きながら月30万円を稼ぐ起業法』では、起業は精神論が9割だと書いています。スキルや資格より、心の持ち方が結果を分けるという意味です。やる気が満々のときほど、人は無理な目標を立てて燃え尽きます。同書では、頑張りすぎないちょうどいい目標の範囲を「継続可能ゾーン」と呼んでいます。疲れている人にこそ、小さく始めて長く続ける設計が向いています。

60%の力でできることから取り組む

ストレスを抱えやすい人には、常に全力で走ろうとする頑張り屋さんが多くいます。だからこそ、最初から「60%の力で取り組めること」を選ぶのがおすすめです。働いた分だけ報酬になる働き方ではなく、ブログや動画のように積み上げが効く題材を選べば、報酬と労働時間を少しずつ切り離していけます。

深く考えすぎない

それでも、会社を辞めることを思うと不安はよぎるはずです。そんなときは「うまくいかなければ会社員に戻ればいい」「これはスキルアップの期間だ」と考えてください。実際、戻ってもかまわないのです。起業に取り組む数年間は、後から振り返れば自分を大きく成長させてくれます。完璧な準備が整う日を待っていると、いつまでも一歩目を踏み出せません。

ポイント 休職から、小さく始めた会員さんの話

休職から回復しながら別の道を見つけた2年間

起業18フォーラム

起業18フォーラムの会員に、蓑輪さん(仮名)という方がいます。職場の人間関係に疲れ、休職して自宅で過ごしていた時期がありました。最初は起業など考える余裕もなく、ただ眠れない夜をやり過ごす日々だったといいます。

転機になったのは、休んでいる間に書いた一本の投稿でした。眠れない夜の過ごし方や、休職を会社にどう伝えたかを、誰かの役に立てばと思って発信したのです。すると同じ状況の人から「救われた」という反応が届きました。最初は自己流で発信を続けていましたが、伸び悩んだ時期に起業18フォーラムの勉強会へ。そこで「読む人をたった一人に絞る」という助言を受け、休職経験者向けに内容をしぼり込みました。

体調と相談しながら、無理のない範囲で続けた結果、復職後の働き方相談やオンライン講座へと広がり、2年ほどで月24万円ほどの収入になりました。蓑輪さんは「あのつらかった経験そのものが、誰かの支えになる商品になった」と話します。あなたが今しんどい思いをしている経験も、回復したあとに誰かを助ける財産になり得ます。

  • 転機:
    休職中に書いた発信への小さな反応
  • 修正点:
    読む人を休職経験者の一人にしぼり込み
  • 到達:
    無理のないペースで2年・月24万円ほど

ポイント まとめ:今日選べる、二つの一歩

焦らず順番に進めるための今日から選べる一歩

point

会社に行きたくない気持ちは、あなたの弱さではありません。働く人の約7割が強いストレスを抱える環境のなかで、当たり前に起こる反応です。だからこそ順番を間違えないでください。心と体が限界なら、まず休む、受診する、距離を取る。それが回復への最短の道です。

少し息がつけたら、別の道を考えてみてもいい時期です。起業は逃げ道ではなく、悩みの種類を入れ替える別の道。意志力で頑張るのではなく、続く環境を整えて小さく始めれば、疲れた心でも前に進めます。

起業に興味はあるけれど、スキルも自信もない、何から始めればいいか分からない。そんな方は「起業18セミナー」をのぞいてみてください。今日できることは、勤め先の就業規則を一度確認するか、つらすぎるなら相談窓口に連絡するか、どちらか一つを選ぶだけで十分です。「いつでも別の道がある」と思えるだけで、会社との距離感は静かに変わっていきます。

ポイント よくある質問

逃げの起業や休職中の準備についてのよくある疑問

起業前質問集

Q.逃げの起業でもいいのでしょうか?

  • 逃げではなく別の道として選ぶ
  • 心身が限界なら回復が先

きっかけが「会社から離れたい」でも問題はありません。大切なのは、勢いで辞めて収入も心の支えも同時に失わないことです。心と体が限界なら、まず休んで回復することが最優先です。少し落ち着いてから、続けられる範囲で小さく準備を始めれば、それは立派な「別の道」への一歩になります。

Q.休職中に起業の準備をしてもいいですか?

  • 体調の回復を最優先に
  • 就業規則と主治医に確認

休職の本来の目的は心身の回復ですから、まずはそこを最優先にしてください。そのうえで余力が出てきたら、情報を集める、頼まれごとを書き出すといった軽い準備から始めるのは一つの方法です。ただし会社の就業規則で会社の外で収入を得る活動の扱いを確認し、収入を得る活動を始める前には主治医にも相談しておくと安心です。

Q.自分に起業が向いているか、どう見分ければいいですか?

  • 人間関係と売上、どちらの悩みがましか
  • 自分で決められると楽になるか

判断軸はシンプルです。人間関係で悩むほうがましなら会社、売上で悩むほうがましなら起業が合います。指示に従うより自分で決めたい、操縦かんを握れると気持ちが軽くなる。そう感じる人は、起業という別の道が向いています。まずは小さく試して、自分の感じ方を確かめてみてください。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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