記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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● 質問
一生続けられる仕事には、どのようなものがありますか? 老後のことを考えると、なるべく長く続けられる仕事を選んでおきたいのですが、最近はAIの話も多く、どんな仕事なら安心なのか分からなくなっています。

● 回答
一生続けられるかどうかは、どの職種に就くかよりも、自分で続けられる小さな収入の流れを持てるかどうかで決まります。「これなら安心」という職業をひとつ探し当てるより、自分の手で動かせる流れを少しずつ育てておくほうが、長い目で見たときに強いのです。
AIの話が増えてきて、不安が大きくなっているのもよく分かります。だからこそ、まず「安定した職に就けば一生安心」という前提が、今どう変わってきているのかから整理していきます。
「安定した職種に就けば一生安心」が崩れてきた
少し前までは、資格職や大企業の正社員のように「これなら一生食べていける」と言われる職種がありました。ところが生成AIが広まったここ数年で、その前提が静かに揺らいでいます。
国際労働機関(ILO)が研究機関と共同で出した報告書「Generative AI and Jobs」(2025年)では、世界の雇用の約4分の1が、生成AIから何らかの影響を受ける可能性があると示されました。そのうえで報告書が強調しているのは、多くの仕事は「なくなる」のではなく「中身が変わる」という点です(ILO・2025年)。
つまり、職種そのものが丸ごと消えるより、同じ仕事の進め方や求められる役割が入れ替わっていく可能性が高いということです。
同じ報告書では、何らかの影響を受ける割合は、男性より女性のほうがやや高いとも示されています。事務系の仕事など、これまで「安定」と思われてきた働き方ほど、中身が変わりやすいのです。
ここで大事なのは、変化の波が来るかどうかではなく、波が来たときに自分の手元に何が残るか、です。勤め先や職種は外の都合で形が変わりますが、自分で育てた収入の流れは、波が来ても自分の手に残ります。だからこそ、「どの職種なら安泰か」を探す発想だけでは、安心の土台にしにくくなっています。
問いを「どの仕事に就くか」から変える
こうした時代に効いてくるのが、問いの立て方を変えることです。「一生続けられる仕事はどれか」と職種を探すのではなく、「自分で続けられる仕組みを持てるか」と考え直してみます。
職種は、時代や勤め先の都合で外から変えられてしまうことがあります。けれども、自分のお客様と自分の手でつくった収入の流れは、誰かの判断ひとつで打ち切られるものではありません。外から与えられる安定ではなく、自分で動かせる収入を少しでも持っておくことが、一番の備えになります。
その小さな流れは、今の仕事を続けたまま育てられます。空いた時間で小さく試し、手応えを確かめながら少しずつ太くしていけば、無理なく準備が進みます。起業18フォーラムで基礎を整え、数年かけて育てていく道は、まさにこの考え方に沿ったものです。
収入の流れは「一本」でなく「複線」にする
では、その流れをどう持てばいいのでしょうか。ここで大切なのが、流れを一本に頼らないことです。
拙著『1億円稼いでいる人は何をしているのか?』では、お金の流れを枯れさせないために「複線化」という考え方を紹介しています。いくつもの小さな流れをつかんでいくと、流れと流れがやがて結びついていく、というものです。一本の太い収入に頼ると、それが細ったときに一気に苦しくなりますが、細くても複数の流れがあれば、どれかが弱っても全体は倒れません。
複線化の小さな始め方
- まず一本目を細く持つ:
今の経験を活かせる小さな仕事を、知り合い一人から有料で引き受けてみます。 - 近い流れを足す:
一本目のお客様が次に困ることに、二本目の小さなサービスで応えます。 - 流れを結ぶ:
片方のお客様がもう片方にも来てくれるよう、二つをつないでおきます。
いきなり大きな仕組みを作ろうとせず、今の経験を活かせる小さな流れを一本だけ持つところから始めてみてください。一本が回り始めると、二本目、三本目の作り方も自然と見えてきます。
職種選びで迷い続けていた方の例
起業18フォーラムにいた久保田さん(仮名・50代前半・女性・損害保険会社の内勤事務職)は、定年後も続けられる仕事を探して、長く迷っていました。資格を取ろうか、手に職をつけようかと情報を集めるほど、どの職種が一生安泰なのか分からなくなり、かえって動けなくなっていたそうです。
潮目が変わったのは、勉強会で講師に「一生続けられるかは、仕事選びではなく、続く仕組みづくりで決まりますよ」と問い直されたことでした。探していたのは安泰な職種で、自分で動かせる収入の流れという発想がそもそも抜けていた、とそのとき気づいたといいます。

勉強会のあとの質疑で、久保田さんは「自分にも続けられる小さな流れは作れるのか」と相談しました。これまでの事務の経験を棚卸しすると、書類の整理や保険の見直しの相談に、周りからよく頼られていたことが分かってきたそうです。そこから、知人の個人事業主の書類整理を月に数件引き受けるところを一本目にしました。
一本目が回り始めると、その人たちから「保険の見直しも見てほしい」と頼まれるようになり、二本目の小さな相談業が自然とつながっていきました。準備開始から1年半ほどで、二つの流れを合わせて月に数万円が安定して入るようになり、定年後の不安がずいぶん軽くなったと話しています。職種を一つ選び当てようとしていた頃より、自分で流れを増やせると分かったことが何よりの支えになった、と振り返っていました。
よくある質問

今の仕事を辞めずに始められますか?
始められます。むしろ、勤めを続けたまま始めるほうが安全です。毎月の給与があるうちは、小さな流れがすぐに大きくならなくても生活は揺らぎません。だからこそ、焦らずに試しながら育てられます。空いた時間で一本目を細く持ち、手応えを見ながら少しずつ太くしていけば、十分に間に合います。
何歳からでも遅くないですか?
遅くありません。長く働いてきた経験そのものが、収入の流れの種になります。これまで人から頼まれてきたこと、感謝されてきたことの蓄積は、年齢を重ねた人ほど厚いものです。一生続ける仕組みは、若さではなく、積み上げてきた経験から立ち上げます。実際、50代から始めて定年後の収入につなげた方も少なくありません。
何から始めればいいですか?
まずは、自分の経験のなかから「人に頼られたこと」を見つけるところからです。大きな計画を立てる必要はありません。今の仕事や暮らしのなかで、誰かに「ありがとう」と言われた場面に目を向けてみると、最初の小さな流れの種が見つかります。それが、一生続けられる仕組みの一本目になります。
一生続けられる仕事は、どこかにある正解を探し当てるものではなく、自分の手で少しずつ育てていくものです。今日できることは、今の仕事で「ありがとう」と言われた瞬間を、一週間だけ気に留めて数えてみることです。そこに、あなたの最初の流れの種が隠れています。

定年という区切りは、働き方の終わりではなく、自分の流れを持つ次の章の始まりにもなります。そう思えたとき、老後という言葉の重さは、少しだけ軽くなるはずです。
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