頭の中の商品アイデアを商品化するには? 素人が今日から動ける手順

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

● 質問

世の中にない商品のアイデアを、自分ではたくさん持っています。こういうものが安く手に入ったら絶対に売れる、という確信もあります。ただ、それを作るのにどんな技術が必要なのか、その辺りの知識はまったくなく、イメージだけが先に走っている状態です。

こうした企画は、メーカーに売り込めば商品化できるものでしょうか? それとも、クラウドファンディングで資金を集めて自力で形にするしかないのでしょうか?

起業前質問集

● 回答

自力でゼロから作るより、まず「小さく売れるか」を試し、その手応えが出てから権利化と売り込みやクラウドファンディングに進む順番が、いちばん現実的です。イメージが先走っている段階ほど、この順番が効いてきます。

アイデアそのものは、おっしゃるとおり立派な資産です。ちょっとした思いつきが製品になって収入につながった例は、実際にいくつもあります。ですから可能性はゼロではありません。問題は「良いアイデアがあるかどうか」ではなく、そのアイデアを、損をせず、盗まれず、どういう順番で世に出すかのほうにあります。

アイデアがたくさんある人ほど、形にできずに止まりやすい

少し意外に聞こえるかもしれませんが、私がこれまで起業相談の現場で見てきた限り、アイデアが豊富な人ほど一歩目で止まりがちです。あれもこれも作れる気がして、どこから手をつけるかが決められないからです。

拙著『起業神100則』に「成果が出ないときの原因は『漠然』にある」という考え方を書きました。スキルや才能が足りないのではなく、計画と行動がぼやけたままだから前に進めない、という話です。頭の中のイメージを、たった一つの「誰の・どんな不便を・いくらで解決する商品か」まで絞り込めると、急に動けるようになります。

まずは持っているアイデアの中から、いちばん自分が「何に詳しい人」として語れるテーマを一つ選んでみてください。同書では、自分が何に詳しい人と呼ばれているかという問いを、強みの入り口に置いています。十個のアイデアを同時に追うより、一個を最後まで運ぶほうが、結果的に近道になります。

自力でゼロから作るより、すでに作れる人や売れる場と組む

技術の知識がないのに、自力で一から製品化するのは、正直いちばん難しい道です。金型も、量産も、品質管理も、未経験から一人で抱えるのは現実的ではありません。ここで無理に全部を自分でやろうとすると、お金も時間も消えていきます。

現実的な選択肢は、大きく三つあります。一つ目は、その商品を作れる開発メーカーや町工場と組む方法。二つ目は、Makuakeなどの購入型クラウドファンディングで先に「欲しい人がどれだけいるか」を確かめながら、製造を引き受けてくれる相手を探す方法。三つ目は、特許や実用新案を取ってから企業にライセンス(使用許諾)で売り込む方法です。

どれを選ぶかは、アイデアの中身と、かけられる資金と、ゴールによって変わります。共通して言えるのは、いきなり大量生産を狙わず、まず試作を一つだけ作り、知り合いに有料で使ってもらうところから始めると、判断材料が一気に増えるということです。

盗まれない順番を守る|売り込む前に権利を考える

売り込みやクラウドファンディングでつまずきやすいのが、権利の扱いです。アイデアを開示した後に似た商品を出されても、何も準備していなければ打つ手がありません。順番が大事です。

企業に話を持っていくときは、秘密保持契約(NDA)を結んでから具体的な中身を見せるのが基本です。面倒がられることもありますが、ここを省くと後悔しやすいところです。心配なら、売り込む前に実用新案や特許を出願しておく手もあります。出願の要否は、お近くの弁理士さんに一度相談すると整理できます。

「個人のアイデアなんて、どうせ相手にされない」と感じる必要はありません。特許庁の『特許行政年次報告書2024年版』によると、2023年の実用新案登録出願4,949件のうち、個人による出願は1,247件で、全体の約25%を占めます。権利化の入り口は、4件に1件が個人という世界です。素人が締め出されているわけではない、というのがこの数字から読み取れることです。

素人が今日から使える、無料の相談窓口

知識がないところから始めるなら、まず公的な相談先を頼るのが安全で早道です。費用をかけずに、自分のアイデアが権利化に向くか、商品化の見込みがあるかを整理できます。

たとえば発明学会には「商品化までの流れ」という道筋があり、相談から権利化のアドバイス、企業との商品化契約まで段階を追って支援しています。特許や商標の出願で迷ったら、各都道府県にある知財総合支援窓口(INPIT)が無料で相談に乗ってくれます。大学や公設試験研究機関と連携する道もあります。

技術知識ゼロから「最初の一人」に試した会員さんの話

起業18フォーラムの会員さんに、内海さんという方がいます。製造業で品質管理の仕事をしていて、設計や技術の専門ではありませんでした。日々の生活の中で「こういう道具があれば」というアイデアをいくつも書きためていた方です。

最初は内海さんも、ご質問者様と同じように「メーカーに売り込めば形になる」と考えていました。設計図もない企画書を何社かに送ってみたものの、返事はほとんど来ません。次は自分で量産まで持っていこうとして、見積もりの金額に手が止まりました。全部を自分で抱えようとした時期がいちばん苦しかったと、後で振り返っていました。

流れが変わったのは、勉強会で「最初の一人に有料で試してもらう」という考え方に触れてからでした。十個あったアイデアを一個に絞り、町工場に頼んで試作を一つだけ作り、知人の小さな飲食店に実費で使ってもらったのです。すると使い勝手の改善点が具体的に見え、店主の知り合いから「うちでも使いたい」という問い合わせが入りました。

今は試作の改良を重ねながら、製造は外部に委託し、注文が入るたびに少しずつ作る形に落ち着いています。大量生産はしていませんが、欲しい人の顔が見える状態で続けられているそうです。

内海さんのやり方で参考になるのは、売り込む順番を逆にしたところです。アイデアを売り込む人ではなく、最初の一人に有料で試した人のほうが、結果として形にできていきます。

よくある質問

Q.特許を取る前に、企業へ売り込んでも大丈夫ですか?

出願前に試作品や詳しい中身をそのまま渡すのは避けたほうが安全です。先に秘密保持契約(NDA)を結ぶか、実用新案や特許を出願してから具体的な話に進むと、後のトラブルを防げます。判断に迷うときは、知財総合支援窓口や弁理士さんに無料相談で確認しておくと安心です。

Q.クラウドファンディングとメーカーへの売り込みは、どちらを先にすべきですか?

「欲しい人がどれだけいるか」をまず確かめたいなら、購入型クラウドファンディングが向いています。ただし公開した時点でアイデアは不特定多数に見えるので、必要な権利化は先に済ませておくのが順番です。すでに作れる相手と組みたいなら、NDAを前提に売り込みから入る道もあります。

Q.アイデアだけで、企業に買い取ってもらえますか?

図面も試作もない「思いつき」の段階で買い取ってもらえることは、まずありません。実用新案や特許という形で権利になっていて、はじめて交渉のテーブルにつけます。だからこそ、小さく試して手応えを示し、権利化してから話を持っていく順番が現実的です。

頭の中のアイデアは、寝かせておくと色あせていきます。完璧な企画書を待つより、一個に絞って小さく動かしてみてください。今日できることは、お近くの知財総合支援窓口か発明学会に「このアイデアは相談に乗ってもらえますか」と一本問い合わせるだけで十分です。

そこから先は、試作と権利化を少しずつ進めていけば、イメージだけだったものが少しずつ手触りのある商品に変わっていきます。

アイデアの発想法や技術アドバイスをするビジネスで起業したいです。
● 質問 私は、長年特許事務所で発明の出願に関する仕事をしています。 その経験を生かし、個人や中小企業を相手に

アイデアは、売り込む相手より先に、試させてくれる最初の一人を探すところから。その一人が見つかったとき、あなたの企画はもう動き始めています。


さらに詳しく知るには、以下より検索してみてください!
記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

起業アイデア診断
【起業セミナー】会社員のまま始める起業準備・6ヵ月で起業する!

【動画セミナー】あなたのタイミングで学べる動画版もあります!

ポイント この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます!