屋久島で起業を考える人へ|二拠点から無理なく根を下ろす手順

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

何千年もの時を重ねた屋久杉の森と、深く澄んだ海。屋久島の自然に心をつかまれて、いつかこの島で暮らしながら自分の手で何かを始めたい。旅行で歩いた原生林の空気が忘れられず、移り住んだあとの仕事を少しずつ思い描き始めている方がいます。

ただ、島への憧れと、島で食べていくための準備は別のものです。移ってから収入の組み立てを考え始めると、思い描いていた暮らしとの差に何度もぶつかります。この記事では、屋久島での起業を観光案内としてではなく、会社員を続けながらどう準備を進めるかという視点で整理していきます。

ポイント 屋久島で起業する前に整理しておきたいこと

島の現実をふまえて準備の順序を整理する視点

屋久島

屋久島での起業は、自然への憧れだけでは形になりません。島の人口規模や産業の成り立ちを知ったうえで、自分の収入をどう組み立てるかを先に描いておくこと。それが、島で長く続けるための土台になります。ここからは島の現実、支援制度、始めやすい起業の形を順に見ていきます。

ポイント 屋久島で起業を考える前に知っておきたい現実

人口規模と産業構造からつかむ島の市場感覚

屋久島

屋久島町は鹿児島県熊毛郡にあり、屋久島と口永良部島からなります。島の人口は約1万1,000人で、毎年少しずつ減り続けています。都市部の感覚で「それなりに人がいる」と考えると、市場の見立てを誤りやすくなります。総務省統計局の令和2年国勢調査でも、屋久島町は人口の減少が長く続いてきた地域として記録されています。

1993年、屋久島は日本で初めて世界自然遺産に登録された地域の一つになりました。樹齢数千年とも言われる縄文杉に代表される屋久杉の森は、島の何よりの価値であり、観光の大きな後押しにもなっています。島の経済は、その観光を中心とするサービス業が大きな比重を占め、ほかに屋久杉を扱う林業、ポンカンやタンカンなどの農業、漁業、焼酎づくりが島の暮らしを支えています。

こうした土地で起業を考えるなら、限られた人口の中で誰に何を届けるのかを丁寧に描く必要があります。島内の住民だけを相手にする商売は、人口が減り続ける現実の中で先細りしやすい面があります。島外の人や観光で訪れる人まで視野に入れられるかどうかが、準備の段階で考えておきたいところです。

ポイント 屋久島の移住・創業支援制度

移住と創業をめぐる屋久島町の支援の選択肢

屋久島

移住をともなう起業を考えるとき、屋久島町が用意している制度を知っておくと選択の幅が広がります。ここでは知っておきたい情報として整理します。

  • 移住支援金:東京23区の在住者または通勤者が移住し就業要件などを満たす場合、世帯100万円・単身60万円
  • 子育て加算:18歳未満の子ども一人につき100万円
  • 移住促進家賃等補助:45歳未満、または18歳以下の子と同居する方が対象
  • 移住者住宅取得事業等補助:住宅の取得や修繕にかかる費用の一部を補助
  • 暮らし体験住宅:月1万円で3か月以上1年未満の暮らし体験

このうち暮らし体験住宅は、いきなり移り住む前に島での暮らしと働き方を試せる仕組みとして知っておくと役に立ちます。制度の内容や条件は年度によって変わることがあるため、最新の情報は屋久島町に確認してください。出典は屋久島町です。

もう一つ知っておきたいのが、事業者向けの支援です。屋久島と口永良部島は特定有人国境離島地域に指定されており、島で事業を始めたり広げたりする際の経費を後押しする雇用機会拡充事業があります。会社設立を考える段階になれば、屋久島町商工会の創業塾で経営や財務などを学ぶことで、登録免許税の軽減といった特定創業支援等事業の対象になる道もあります。

大切なのは、これらの制度を起業の動機にしないことです。支援制度は方向性が固まったあとに使う道具と位置づけ、何で収入を得るかを先に決めてから調べに行きましょう。

ポイント 屋久島で会社員が現実に始めやすい起業

島の資源と今の仕事を結ぶ起業アイデアの発想

屋久島

屋久島で始めやすい起業を考えるとき、まず目を向けたいのは島がすでに持っている資源です。世界自然遺産の森、屋久杉、ポンカンやタンカンといった農産物、島の焼酎は、それぞれが屋久島ならではの物語を持っています。

島の資源を活かす起業の方向性

たとえば、森や自然を案内するガイドの仕事、自然のなかでの体験を企画する仕事、農産物を加工して島外に届ける仕事、屋久杉のクラフトの作り手と買い手をつなぐ仕事などが考えられます。島の資源は、ただ売るのではなく背景にある物語ごと届けることで価値が伝わります。

拙著『会社を辞めずに朝晩30分からはじめる起業』に、今の生活を守りながら、朝と晩の30分ずつの積み重ねで起業の土台をつくる進め方を紹介しています。屋久島での起業も同じで、いきなり大きく動くのではなく、小さな準備を毎日重ねていく姿勢が、島では特に活きてきます。

いきなり移住しない二拠点という選択

もう一つ忘れたくないのが、今の仕事を活かす道です。パソコンで完結する仕事をしている方なら、それをリモートで続けながら屋久島との関わりを深めていく形があります。都市で収入を保ったまま屋久島に通い、関係人口として島の人や仕事とのつながりを育てる二拠点のかたちは、最も無理の少ない入り口です。

島に通ううちに、地元の事業者や移住者とのつながりが生まれ、自分にできることが少しずつ見えてきます。最初から完成された事業を持ち込む必要はありません。

いきなり移住を決めず、まずは二拠点で屋久島との接点をつくり、半年から一年かけて島の事情を肌で知っていきましょう。

ポイント 屋久島で起業準備をした人の歩み

自己流の空回りから学び直しへ進んだある人の歩み

屋久島

屋久島に何度も通っていたある会社員は、島の暮らしに惹かれて勢いで移住を決め、観光客向けの体験サービスを始めようとしました。ところが、誰にどんな体験を届けるのかが定まらないまま動き出したため、最初の半年はほとんど反応が得られなかったといいます。

自己流で進めたことに行き詰まりを感じたその方は、起業18フォーラムで起業の基礎を学び直しました。勉強会で「まず相手の困りごとから考える」という順序を知り、サービスの組み立てを根本から見直したそうです。

  • 島に惹かれて自己流で移住し空回り
  • 起業18フォーラムで基礎を学び直す
  • 誰のどんな困りごとに応えるかを軸に方向性を修正
  • 小さな規模から試して手応えを確かめる

方向性を見直したあとは、届ける相手を絞り込み、小さく試しながら反応を確かめる進め方に変えたとのことです。

屋久島で起業準備を進める方の年代は30代から50代まで幅広く、移住より先に、島外からの収入が月10万円から月20万円ほどの手応えになっているかどうかが、序盤の分かれ目になります。島内だけの集客で事業が安定するまでには時間がかかるのが実際のところで、学び直してから動いた人ほど遠回りが少ない傾向があります。

ポイント 屋久島起業の進め方

学びから二拠点へとつなぐ現実的な進め方の順序

屋久島

最後に、屋久島での起業をどんな順序で進めるかを整理します。焦らず段階を踏むことが、島で長く続けるための近道になります。

まずは起業18フォーラムの動画やセミナーで、起業の基礎と全体像を学び、自分の方向性を固めます。何を、誰に、どう届けるかが定まらないうちに移住を決めると、島でつまずきやすくなるのです。

方向性が固まったら、屋久島町の移住相談窓口や、移住支援金・暮らし体験住宅といった制度を調べ、活用できるものを確認します。会社設立を考える段階になれば、屋久島町商工会の創業塾も心強い味方になります。

そのうえで、関係人口や二拠点という形から、少しずつ屋久島との関わりを深めていきます。一度にすべてを変えようとせず、暮らし体験住宅などのお試し移住も使いながら、自分と島の相性を確かめて進めましょう。

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屋久島の森は、何千年もかけてゆっくりと育ってきました。島で自分の仕事を築くことも、それと同じで、急がず順を追って進めれば形になっていきます。憧れを抱いたまま、まずは学ぶことと小さな一歩から始めてみてください。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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