記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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「宇都宮で起業できるか」と聞かれたら、私は「できます」ではなく「できている人がいます」と答えるようにしています。地方中核市での起業に二の足を踏む理由の多くは、東京と比べてしまう感覚から来ています。でも比べるのが間違いで、宇都宮には宇都宮の市場があります。
人口約51万人の中核市で、2023年8月にLRTが開業し、沿線の動きが変わり始めた宇都宮で、どう始めればいいかを整理してみます。
宇都宮で起業する前に知っておくこと

宇都宮市は人口約51万人の中核市です。政令指定都市には届かないという見方もありますが、同規模の地方都市と比べると、産業の厚みはかなり違います。
自動車関連、光学機器、電子部品などの製造系企業や関連事業所が集積しており、技術系の会社員が多い土地です。そのぶん、「会社の名前を外したとき、自分には何があるか」を早めに考えておく必要があります。
もう一つ見落とせないのが、2023年8月26日に開業した宇都宮ライトレール(LRT)の存在です。宇都宮駅東口から芳賀・高根沢工業団地まで14.6kmを結ぶ路線で、日本国内では75年ぶりの路面電車新設でした。宇都宮ライトレールの公表では、開業からの累計利用者数は2025年8月19日に1,000万人に到達しています。沿線周辺では人の流れが変わり、地域サービスの作り方にも影響が出ています。
交通網の変化は、事業の場所選びと客層に直結します。
LRT沿線にできたコワーキングや新しい飲食店、工業地帯に向けたBtoBサービスなど、「宇都宮らしい市場」を自分のスキルと掛け合わせた起業が少しずつ見えてきています。
好きの全部を事業にしなくていい

拙著『朝晩30分 好きなことで起業する』にこんな考え方が出てきます。「好きなことをそのまま事業にしようとすると、たいてい全部を背負いすぎる。好きなことの一部だけを切り出し、そこに誰かの困りごとを重ねるほうがずっと続く」。
宇都宮で起業を考える人が犯しやすい間違いが、まさにこれです。「餃子が好きだから飲食をやる」「製造業の知識があるから同じ業界で独立する」という方向性は一見まっすぐに見えますが、好きの全部を仕事にしようとすると広げすぎになります。
宇都宮には餃子という文化が根づいていますが、それは競合の多さでもあります。一方で、製造業の下請けに必要なIT管理や品質文書のデジタル化、工業団地近くの外国人技術者向けの日本語支援など、「宇都宮の産業が持つ困りごと」は掘り起こしてみると残っています。
自分の好き・得意の一部を切り出して、宇都宮の地域資源と重ねる。それが始め方の軸になります。
- 好きの切り出し例(宇都宮):
IT知識→製造業向け業務改善サポート - 好きの切り出し例(宇都宮):
コーチング経験→LRT沿線に転入してきた子育て世代の相談業 - 好きの切り出し例(宇都宮):
英語力→工業団地エリアの外国人向け生活サポート
宇都宮の産業構造の中にある「誰も手をつけていない困りごと」が、最初の商品の種になります。
宇都宮で使える支援制度と相談窓口

起業の準備を進めるうえで、宇都宮には実際に使える相談窓口が複数あります。「誰に聞けばいいか分からない」で止まっている人は、まず以下の2つを押さえておいてください。
一つ目は宇都宮市産業政策課の創業相談窓口です。宇都宮市の「創業支援等事業計画」に基づく特定創業支援事業を提供しており、この事業を受けると法人設立時の登録免許税の軽減や、日本政策金融公庫の貸付利率引き下げなどの国の支援措置が使えます。
創業相談の予約は宇都宮ベンチャーズ(電話028-680-6010)で受け付けており、毎週水曜・金曜に専門家相談が対応しています。起業前でも相談できるため、「創業を考えているが、相談を申し込めるか」と一問だけかけてみることができます。
二つ目は宇都宮商工会議所(電話028-637-3131)です。専門家(中小企業診断士など)が個別相談に対応しています。起業前の事業計画の相談から、融資書類のチェックまで幅広く受け付けています。商工会議所の場合、「話を聞いてもらう場」として使うだけでも十分な意味があります。
さらに、栃木県では2026年度も「地域課題解決型創業支援補助金」を実施しています。デジタル技術を活用した創業を対象に、補助上限200万円・補助率2分の1で支援する制度です(栃木県産業振興センター窓口)。詳細な要件は直接確認が必要ですが、IT活用を絡めた事業設計なら候補に入ります。
- 宇都宮ベンチャーズ(市創業相談窓口):
TEL 028-680-6010 / 特定創業支援で国の優遇措置が使える・水曜・金曜対応 - 宇都宮商工会議所:
TEL 028-637-3131 / 専門家による個別相談・事業計画サポート - 栃木県地域課題解決型創業支援補助金:
上限200万円・補助率1/2(デジタル活用の創業対象・栃木県産業振興センター)
起業18フォーラム会員の実例:地元依頼が13ヶ月で月10件に

起業18フォーラムの会員さんで、宇都宮市在住のITエンジニアの長浜さん(40代前半・メーカー勤務)の話をさせてください。
もともとは製造系の会社でシステム構築を担当していた方です。起業を考えたのは「会社のプロジェクト以外に、自分の仕事が何もない」という実感からでした。Webサービスや個人で請け負える仕事で収入を作ろうとしましたが、反応がなく、自己流では止まってしまっていたと話していました。
自己流でうまくいかない理由の多くは、「地元の困りごと」より先に「自分がやりたいこと」から始めてしまうことにあります。
話が動き始めたのは、起業18フォーラムの勉強会で「好きを全部やろうとするな、地元の困りごとから切り出せ」という視点に出会ってからです。
長浜さんが持っていたのは、製造業の現場に即した業務改善の知識です。でもそれをそのまま「コンサルティング会社を作る」という形にしようとして広げすぎていました。フォーラムの個別相談で整理したのは、「まず宇都宮近郊の中小製造業に、文書管理のデジタル化だけを手伝う」という切り口です。全部ではなく一部を切り出す。
最初の依頼は知人のつながりから来た1件でした。そこから紹介が広がり、地元のみの依頼が月3件、半年で月5件、13ヶ月目に月10件になりました。金額ではなく件数で積み上げ、同じ業界内での信用を先に作ったことが、継続につながっています。
件数が増えた理由を長浜さんは「宇都宮という狭い製造業コミュニティの中で、一つの専門に絞ったから紹介が回りやすかった」と話してくれました。
宇都宮で起業する手順をまとめると

宇都宮での起業を考えている人に、まず取ってほしいステップを整理します。
- STEP1:
自分の好き・得意の中から「地元の産業や住民の困りごとに重ねられる部分」を一つだけ選ぶ - STEP2:
それが「一人で始められるか・大きなお金がかからないか」を確認する(拙著『起業がうまくいった人は一年目に何をしたか?』の3つのチェック) - STEP3:
宇都宮ベンチャーズ(028-680-6010)か宇都宮商工会議所に電話し「創業相談を申し込めるか」と一問だけかける
STEP1は、宇都宮という地域をよく知っている人ほど有利です。LRT沿線の変化、製造業の集積、餃子文化と観光客の流れ。外から来た人には見えない「地元の当たり前」が商品の種になります。
宇都宮の産業資源を知らないまま「何でも対応します」で始めると、どこの地域でも通用するけれど誰にも刺さらない事業になります。
STEP2の「大きなお金がかからないか」は、初期費用と月間の運転コストを合わせて数万円以内で始められる形を基準にしてください。補助金を最初から前提にしない。使えると分かったら加えるもの、という順番が大事です。
STEP3の電話は、決断のためではなく情報収集のためです。「自分の考えを整理した」という前提で行くと、相談の質が変わります。
相談窓口に行く前に「自分が絞り込んだ一点」を言葉にしておくだけで、専門家からもらえるアドバイスの具体度がまったく変わります。
よくある質問

Q.宇都宮市の起業支援は、東京と比べて手薄ではないですか?
制度の種類だけで比べると東京の方が多いのは事実です。ただ、宇都宮には「競合が少ない市場」という強みがあります。特定創業支援事業・商工会議所の個別相談・栃木県の補助金と、三つの入口が使えます。地方だから支援が薄いとは必ずしも言えません。
Q.製造業の知識があっても、起業のやり方が分かりません。どこから始めればいいですか?
製造業の知識は宇都宮では強みになります。ただ、その知識の「全部」を事業にしようとせず、一番困っている課題に絞り込むことから始めてください。文書のデジタル化、品質管理の外注化、現場担当者向けの教育など、一つに絞るだけで相手に伝わる言葉が変わります。まず宇都宮ベンチャーズ(028-680-6010)に電話して相談の予約を取ることをお勧めします。
Q.宇都宮で起業するなら、最初から店舗や事務所を借りるべきですか?
最初から固定費を増やす必要はありません。相談業・制作業・教育系サービスなら、自宅やコワーキング、訪問型で小さく始められます。地元で必要とされる一点が見えてから、場所を持つかどうかを判断するほうが安全です。
Q.補助金を使えば、準備不足でも起業できますか?
補助金は事業の方向性が見えてから使う道具です。先に「誰に何を売るか」が決まっていないと、申請書は書けても売上につながりません。まずは地元の一人に有料で試す形を作り、その後で支援制度を組み合わせてください。
窓口への一本の電話は、決断ではなく情報収集のための行動です。
宇都宮で動き始める今日の一歩

今日できることは、宇都宮ベンチャーズか宇都宮商工会議所に「創業相談を申し込めるか」と問い合わせるだけで十分です。一本の電話から動き始めます。
ここまで自分なりに調べて読み進められるあなたなら、きっと宇都宮の市場の中から自分に合うやり方を見つけられます。

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