新卒3年目でまだ実績が少なくても起業準備はできる? 経験を価値に変える棚卸しの方法

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

● 質問

新卒からもうすぐ3年目になりますが、周りの同期に比べて胸を張れるような実績がまだ何もありません。

資格も特にないですし、こんな状態のまま起業準備を始めてもいいのでしょうか?

起業前質問集

● 回答

経験が浅いことは、起業準備においてハンデではなく、むしろいちばんの伸びしろになります。日本政策金融公庫の2024年度調査では、開業時に29歳以下だった人はわずか6.9%です。少数派だからこそ、実績の数でなく中身の見せ方で差がつく場面を、20代の起業準備の相談で何度も見てきました。

「実績がない」という不安の正体

「実績がない」と感じるとき、実は2つの違う不安が混ざっています。ひとつは、人に自慢できるような数字や肩書がないという不安。もうひとつは、自分がやってきたことをうまく言葉にできないという不安です。

多くの人は前者だと思い込んでいますが、3年目の時点で実際に足りていないのは後者のほうです。数字や肩書は、これから積み上げればいい話であって、今すぐの武器にはなりません。一方で、この3年間に自分が現場で対応してきた具体的な場面は、すでにあなたの手元にあります。

3年間の現場経験は「量」でなく「質」で測る

拙著『起業神100則』にも、自分だけの強みは過去の積み重ねの中にしか見つからないという考え方が出てきます。突然のひらめきで生まれる強みなどなく、これまで重ねてきた行動の中にこそ答えがあるという指摘です。資格という入場券がなくても、積み重ねてきた中身の見せ方ひとつで勝負できることを示す一例です。

新卒3年目のあなたにも、同じ考え方が使えます。資格や表彰歴がなくても、日々の業務でこなしてきた具体的な対応こそが、他人には真似のできない中身になるからです。

  • 現場の困りごとを見た経験:
    取引先や同僚が実際に何に困っていたか、間近で見てきた場面
  • トラブル対応の経験:
    納期や段取りが崩れたときに、自分がとっさに動いて収めた場面
  • 先回りした改善提案の経験:
    言われる前に気づいて、自分から手直しを申し出た場面
神谷さんが取引先から掛けられた一言

部品メーカーの購買部門で調達アシスタントを務める神谷さん(25歳)は、3年目に入ってからも「自分には人に語れる実績なんてない」と焦りを感じていました。同期が営業成績や資格取得を話す場に居合わせるたび、自分だけ何も持っていないような気持ちになっていたそうです。

流れが変わったのは、ある日の何気ない立ち話でした。担当していた取引先の社長から「あなた、いつも納期の調整がうまいよね。個人的に、他の会社との交渉も手伝ってもらえないかな」と持ちかけられたのです。自分が日常業務でこなしていた納期調整が、他人からは価値のあるものに見えていたと初めて知った瞬間でした。

ただ、神谷さんはこの申し出にどう応えればいいか分からず、その晩、3年間つけていた業務日誌を初めのページから読み返してみることにしました。

読み返すうちに、実績は数でなく「自分が対応してきた具体的な場面をどう言葉にするか」で決まるという着眼点に、自分でたどり着いたそうです。納期調整で感謝された場面だけを拾い出してみたところ、3つの型に整理できることにも気づきました。

今では、担当していた取引先の社長から「今度もお願いできる?」と個人を指名して声がかかるようになりました。会社を辞めたわけではなく、声がかかったときだけ、納期調整の相談に単発で応じているという段階です。

今日からできること

起業18フォーラムで20代前半の相談を受けていると、日々の業務対応をひとつでも具体的に言葉にできる人ほど、準備の迷いが浅いものです。この3年間に自分が現場で対応してきたトラブルや工夫こそが、起業準備のいちばんの土台になります。まずは実績の数を数えるのではなく、対応した場面そのものを思い出すところから始めてください。

思い出すときは、範囲を区切ると進めやすくなります。何年分もさかのぼる必要はありません。

今週1週間だけ、職場で「ありがとう」と言われた場面を心の中で数えてみてください。それだけで、自分の商品の種が見えてきます。

数えた場面をそのまま人に話すときのコツも、実はひとつだけです。

具体的な一場面だけを切り取って話すほうが、初めて会う相手にはずっと伝わりやすいものです。無理に実績全体を大きく見せようとしなくて構いません。

  • 実績数ではなく対応場面の中身による評価
  • 現場の困りごと・トラブル対応・先回りの改善提案という3分類
  • 1週間の「感謝された場面」の記録

資格の有無や実績の数を気にしているうちは足踏みが続きますが、この3年間に対応してきた具体的な場面を数え直すだけで、見える景色が変わってきます。強みの言葉にし方に迷ったときは、経験を相手に伝わる言葉に翻訳する視点も参考にしてみてください。

自分の強みを一言で言えない人へ|経験を言葉に翻訳する
日本政策金融公庫が融資した開業後1年以内の企業を対象とする2025年度新規開業実態調査では、現在苦労しているこ

不安を感じているのは、それだけ真剣に自分のこれからを考えている証拠です。その慎重さは、起業準備において強みになります。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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