記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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大阪市と堺市以外の府内39市町村で起業を考える会社員から、「大阪市まで通うほどの理由はない、地元で小さく始めたい」という相談が増えています。北摂・北河内・中河内・南河内・泉北・泉南エリアにはそれぞれ違う産業集積があり、地元から始めたほうが事業が早く立ち上がるケースは多いのです。
本記事では、大阪府の公的データと府内特有の創業支援制度を踏まえて、府内中小都市に住む会社員が取れる現実的な手順を整理します。
読み終えた頃には、大阪市に出向かなくても次の一歩が見える状態になっているはずです。
大阪府で起業する強み|府内39市町村に分かれた経済圏

事業所数37万社のうち、大阪市外にも豊富な集積がある
大阪府総務部統計課が公表した令和3年経済センサス‐活動調査の確報では、大阪府の民営事業所数は377,959事業所(事業内容等不詳を除く・2021年6月1日現在)に上ります。卸売業・小売業が87,771事業所(23.2%)、宿泊業・飲食サービス業が43,341事業所(11.5%)、製造業が38,727事業所(10.2%)。卸売業・小売業の事業所密度が高いのは、大阪市・堺市以外でも商圏が成り立っていることの裏返しです。
中でも製造業の地域別構成を見ると、大阪市が4,989事業所(34.6%)であるのに対し、中河内地区(東大阪市・八尾市など)は3,176事業所(22.0%)、泉北地区(堺市・高石市・泉大津市など)は1,722事業所(11.9%)と、府内全体に集積が分散しています(※いずれも従業者4人以上の製造業事業所を対象とした構成比)。府内中小都市は「大阪市の下請け」ではなく、地域内で完結した分業ネットワークを持っているのです。
北摂・河内・泉州で違う「お客さんの顔」

エリア別の特性を踏まえた事業設計
府内中小都市の起業相談を受けてきた経験からいうと、エリアごとに「来てくれるお客さん」がまったく違うのが大阪府の特徴です。同じ府内でも、北摂と河内ではビジネスの組み立て方を変えたほうが成果は早く出ます。
- 北摂(高槻・茨木・吹田・豊中・箕面・池田):京阪神の通勤層・教育熱心な世帯・共働き家族
- 北河内(枚方・寝屋川・守口・門真・大東):京都・大阪両方向の通勤動線・商業集積
- 中河内(東大阪・八尾・柏原):町工場の経営者・職人・分業ネットワーク
- 南河内(富田林・河内長野・松原・大阪狭山):地縁の強い住宅地・教育サービス需要
- 泉北(堺・高石・泉大津・和泉):製造業+住宅地の二層構造
- 泉南(岸和田・貝塚・泉佐野・泉南・阪南):関空ビジネス・地場産業(タオル・繊維)
たとえば、ものづくり支援を提供したいなら中河内に身を置き、教育系サービスを始めたいなら北摂・北河内のほうが顧客接点を作りやすい。自分が住んでいるエリアのお客さんの顔を1つ思い浮かべてから、扱う商品・サービスを決めてみてください。
府内に「東京並みの密度」を持つ町がある

東大阪市は人口約48万人の中核市ですが、可住地面積に対する事業所密度は全国1位で、徒歩圏に複数の中小製造業が並ぶ稀有な町です(東大阪市公表)。さらに、地域の製造業のうち約9割が大企業の系列に属さず、近隣の協力工場との分業ネットワークだけで仕事を回しています。
このことは「会社員のまま起業準備を進めたい」人にとって大きな意味があります。営業・受注・配送・検品まで、近所で完結する事業が組めるのです。在職中の限られた時間でも、大阪市まで出向く必要がない分、行動の密度を上げやすい。
大阪府の創業支援制度|まず知っておく3つの仕組み

府レベルと市町村レベル、両方を押さえる
大阪府の創業支援は、府レベル(大阪府・大阪産業局)と、市町村レベル(特定創業支援等事業)の2層に分かれています。府内中小都市に住む会社員は、まず両方の存在を知ったうえで、自分のステージに合わせて選ぶのがコツです。
①新事業展開テイクオフ支援事業(府レベル)

令和7年度に大阪府が実施した「新事業展開テイクオフ支援事業」は、府内中小企業等が新事業展開にチャレンジする際の専門家伴走支援と補助金がセットになった制度です。補助上限は100万円、補助率は対象経費総額の2分の1以内(大阪府公表)。
すぐに使える制度ではありませんが、「自分が将来この補助対象になるには何が必要か」を逆算しておくと、開業後の方向性がぶれにくくなります。
②特定創業支援等事業(市町村レベル)

産業競争力強化法に基づく「特定創業支援等事業」は、市町村が国の認定を受けた創業支援計画にそって行うサポートです。一定期間の支援を受けて証明書をもらうと、株式会社設立時の登録免許税が、資本金の0.7%から0.35%に軽減される(東大阪市・高槻市・茨木市・枚方市など)など、実利の大きい優遇が受けられます。
東大阪市は平成26年4月1日から令和9年3月31日を計画期間として国の認定を受けており、現在も継続中です。高槻市は「高槻創業支援ネットワーク」、枚方市は「ひらっく(枚方市立地域活性化支援センター)」、茨木市は「創業促進事業補助」と、それぞれ独自の名称で運営しています。
- 東大阪市:創業支援等事業計画(平成26年4月1日〜令和9年3月31日)
- 高槻市:高槻創業支援ネットワーク
- 茨木市:創業促進事業補助
- 枚方市:ひらっく(枚方市立地域活性化支援センター)
- 豊中・吹田・寝屋川・八尾など、他の府内市町村にも同様の枠組みあり
ただし、これらは「方向性が決まってから取りに行く道具」です。まず何を売るかを決めるほうが先で、制度から逆算して事業を作るとあとで歪みます。
③MOBIO・サンソウカン(実務支援拠点)

ものづくり関連の起業を考えるなら、東大阪市にあるMOBIO(ものづくりビジネスセンター大阪)が中心拠点です。国内最大級の常設展示場(約200ブース)を持ち、ビジネスマッチング、産学連携、知財活用、IoT・DX導入の相談まで一貫して受けられます(大阪府・大阪産業局公表)。
中小企業全般の創業相談なら、大阪市内にある大阪産業創造館(サンソウカン)が窓口になります。経営相談、創業相談、セミナー、ビジネスマッチングといったメニューがそろっています。
府内中小都市で向いているビジネスアイデア

商品のカタチを「4つ」から選ぶ発想
拙著『起業がうまくいった人は一年目に何をしたか?』に「商品のカタチには4つある」という整理が出てきます。①モノを渡す/②やってあげる/③教えてあげる/④場・機会を提供する。この4つから自分のエリアと相性のよいカタチを1つ選ぶと、事業設計が一気に進みます。
府内中小都市で実際に立ち上がりやすかったパターンを整理します。
- 中河内×やってあげる:町工場向け 治具設計代行・段取り改善コンサル
- 北摂×教える:共働き家庭向け プログラミング教室・ピアノ個人レッスン
- 北河内×やってあげる:高齢世帯向け 終活書類サポート・遺品整理
- 南河内×教える:児童向け 受験対策個別指導・週末アート教室
- 泉南×場・機会:関空インバウンド向け 多言語ツアー・体験プログラム
- 府全域×モノ:地場食材を使ったオンラインショップ(泉州タオル・河内ワインなど)
「ミニマムスタート≠ミニマム努力」を理解する

ここで気をつけたいのは、「小さく始める」ことと「手を抜く」ことはまったく違うという点です。拙著『会社員が働きながら月30万円を稼ぐ起業法』に「ミニマムスタート≠ミニマム努力」という考え方が出てきます。少額の元手で始めても、最初の1人のお客さんに対しては全力で動く。名刺を1枚配るドブ板営業を、まずは地元の知り合い10人にやってみてください。
府内中小都市の利点は、地域の人脈が密度高く残っていることです。同じ町内で名前と顔が一致する関係を持っている人が、20代の都心部より圧倒的に多い。これは大阪市内で起業するより速く事業が立ち上がる理由になります。
起業18会員の事例|東大阪Mさんの転換

自己流から学び直しへの転換
起業18フォーラム会員のMさん(仮名・40代後半・大阪府東大阪市在住・大手メーカー精密機器設計部勤務15年)は、自己流で個人受注の「治具設計代行」を会社員のまま始めました。知人ネットワークだけで価格設定もバラバラ、半年間月収0円が続き、行き詰まっていたのです。
転機は、起業18フォーラムに参加して「ミニマムスタート≠ミニマム努力」と「ドブ板営業」を学び直したことでした。地域の中小製造業3社に直接足を運び、現場で困っていることをヒアリングしたのです。すると、ほぼ全社が「治具を作るより前に、段取りそのものが遅れる」という共通課題を抱えていました。
そこからMさんは、サービスを「治具設計代行」から「中小製造業向け 段取り改善コンサル+治具設計」1本に絞り込み。12ヶ月目で月5万円、18ヶ月目で月20万円の継続契約に到達しました。
- 自己流で広げすぎ、価格基準もないまま半年売上ゼロ
- 起業18参加後、地域の町工場3社に直接ヒアリング
- 「段取り改善コンサル+治具設計」1本に絞り込み
- 12ヶ月目で月5万円、18ヶ月目で月20万円継続
Mさんの場合、東大阪という土地柄が決定的に効いています。徒歩圏に複数の中小製造業がある町に住むなら、最初の10件は近所を歩いて探すのが最短ルートです。
起業18フォーラムで全体像をつかむ|次のステップ
府内中小都市で起業を考えるとき、いきなり市役所の創業窓口に行くと「何を売るか決まっていない状態」で書類だけが進んでしまうことがあります。順序が大事です。まず起業18フォーラムの動画やセミナーで起業の全体像と基礎をつかみ、次にどのエリアで何を売るかの方向性を固める。そのあとで、地元の特定創業支援等事業や府の補助金、MOBIO・サンソウカンを使う流れが、府内中小都市の会社員には合っています。

会社員として通勤を続けながら、空いた時間に大阪府の市町村ごとの違いを観察してみる。それだけで、自分の暮らす町に眠っていた商機が見えてくることがあります。
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