記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:
● 質問
教育訓練給付金は在職中しか使えないと聞きましたが、退職して起業準備に入ったあとでも申請できるのでしょうか?
離職翌日から1年など細かい条件も含めて、実際どこまで使えるのでしょうか?

● 回答
教育訓練給付金は、一定の要件を満たせば退職後でも利用できます。一般、特定一般、専門実践の3種類があり、一般は受講費用の20%、専門実践は基本給付50%から一定の就職・賃金要件を満たした場合の最大80%まで段階があります。退職金を講座費に投じる前に、対象講座と自分の受給資格を確認しておくと選択肢が広がります。
ただし、退職金の勢いで手当たり次第に講座を申し込むと、給付対象外の民間セミナーばかりを積み上げてしまい、制度の恩恵を受けないまま「勉強で終わる起業準備」に陥りやすいのも事実です。段階的に整理した3種類の給付率と、離職者向けの緩和措置を先に押さえてから、講座選びに進んでください。
退職後の受講開始は原則「離職の翌日から1年以内」
まず押さえたいのは、退職者に用意された適用対象期間の考え方です。離職日の翌日から1年以内に受講を開始すれば、雇用保険から離れた立場でも教育訓練給付金の申請対象になります。逆に言えば、この1年の枠に間に合えば、退職後でも制度は使えるということです。
- 離職日の翌日から1年以内:
ほかの支給要件と合わせて対象になり得る受講開始期間 - 妊娠・出産・育児・疾病等のやむを得ない事情:
通常1年の適用対象期間に受講困難期間を加算する、合計最大20年までの延長制度 - 延長申請の窓口:
住居所を管轄するハローワーク(教育訓練給付適用対象期間延長申請書)
「起業準備で忙しくなった」という理由だけでは、原則として延長の対象になりません。また、離職後1年は給付金の支給申請期限ではなく、原則として受講を始めるまでの適用対象期間です。受講前の確認や修了後の支給申請には別の期限があるため、申込前にハローワークで確認してください。
3種類の給付率と上限を段階で押さえる
教育訓練給付制度は、講座のレベルと目的別に3種類に分かれています。給付率と上限額は令和6年10月以降の講座について、以下のとおり整理されました。
- 一般教育訓練給付:
受講費用の20%(上限10万円)と、ビジネス系の入門講座・汎用資格 - 特定一般教育訓練給付:
受講費用の40%(上限20万円)と、資格取得後の就職要件を満たした場合の50%(上限25万円) - 専門実践教育訓練給付:
受講費用の50%(年間上限40万円)と、就職・賃金上昇の追加要件を満たした場合の70%・80%
専門実践の受講中の基本給付は50%で、70%・80%は資格取得後の雇用や賃金上昇などの追加要件を満たした場合です。起業しただけで追加給付が自動的に適用されるわけではありません。「給付率が高い=自分の起業に役立つ」でもないため、講座内容と準備期間との相性で選びます。
離職者の雇用保険加入期間と初回受給の緩和
もう1つ確認しておきたいのは、支給要件期間(=雇用保険に加入していた通算年数)です。ここで初めて教育訓練給付金を使う人には、期間が短縮される緩和措置が用意されています。
- 一般・特定一般教育訓練:
通常は雇用保険加入通算3年以上、初回受給者は1年以上の支給要件期間 - 専門実践教育訓練:
通常は通算3年以上、初回受給者は2年以上の支給要件期間 - 複数社経験者:
被保険者期間の空白が1年以内の場合に認められる前職加入期間との通算
初回受給の要件に該当する可能性がある人は、講座を申し込む前に、ハローワークで支給要件期間と受給歴を確認してください。特定一般と専門実践は、原則として受講開始日の2週間前までに受給資格確認などの手続きが必要です。
起業準備で使うときの落とし穴(勉強で終わる罠)
ここまで数字を押さえてきましたが、起業準備で給付制度を使うときの最大の落とし穴は、制度そのものではありません。給付率の高さに引き寄せられて講座を積み上げ、「勉強はしたけれど動き出せていない」状態で、退職から1年が過ぎてしまうことです。
拙著『会社で働きながら6カ月で起業する』では、起業がなかなか進まない人を3タイプに分けて紹介しています。そのひとつが、まず勉強から始まって講座やセミナーの受講だけが積み重なるタイプ、いわゆる「セミナー難民」です。給付が出るかどうか以前に、勉強と受注活動を切り分けて設計しておく必要があります。
先日、電機メーカーの制御ソフト設計部門で15年勤めていた北条さん(仮名・40代前半・男性)から、退職後の講座選びについて相談を受けました。北条さんは早期退職に応募したあと、退職金の一部を使って商工会議所主催の起業入門講座に自費で申し込んだ経緯があります。受講後に給付対象講座を確認したところ、同じ経理実務の内容で特定一般の対象講座があり、40%分は戻せた計算だったと後から気づいたのです。
流れが変わったのは、起業18フォーラムの勉強会に参加した日でした。同世代の会員から、退職前後の切れ目で特定一般教育訓練の経理講座を選び、給付を使いながら見積書作成・帳簿の基礎までを身につけた事例を直接聞き、「先に対象講座から逆算して学ぶ順番を決めればよかった」と腹に落ちたそうです。
そこから北条さんは講座の追加は1本にとどめ、残った時間を制御系ソフト設計のスキル棚卸しに振り替えました。前職の秘密情報や顧客情報を使わず、公開イベントで知り合った事業者へのヒアリングから需要を確かめ、半年後に検証用スクリプトの試作案件を受注しました。給付だけを追いかけず、守秘義務と就業上のルールを守って市場確認を並走させたことが節目になりました。
避けたいのは、退職金を使い切ってから制度に気づくこと、戻る率だけで講座を選ぶこと、給付対象外の民間セミナーを重ねること、受講だけで満足して受注活動に入らないことです。
まずは厚生労働省の教育訓練給付制度検索システムで候補を探し、申込前にハローワークで受給資格と必要手続きを確認してください。会社の担当窓口が公式の対象講座や個人の受給資格を判定するわけではありません。希望に合う講座があるとは限らないため、給付対象かどうかと講座の実用性を分けて比べます。
本業を続けているあいだは、暮らしを支える収入が途絶える心配はありません。仮に退職の判断が先にきてしまっても、離職翌日から1年という制度の枠は残されています。制度を先に把握しておけば、退職後の1年は「勉強だけで終わる期間」ではなく、給付を活かしながら自分の商品を組み立てる期間に変えられます。
さらに詳しく知るには、以下より検索してみてください!
★【起業セミナー】会社員のまま始める起業準備・6ヵ月で起業する!
★【動画セミナー】あなたのタイミングで学べる動画版もあります!
