記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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「きれいに編集できるようになったのに、これで仕事になる気がしなくなってきた」。CapCutで動画を作れるようになった人から、最近こういう声をよく聞きます。テンプレートに沿って字幕を入れ、エフェクトをのせて、見栄えのいい1本は仕上がる。それなのに、いざ仕事にしようとすると、足元が崩れていくような不安がつきまとうのです。
背景にあるのは、生成AIの急速な進歩です。テキストを打てば数十秒で動画ができ、CapCut自身もAIが自動でカットや字幕を付けてくれるようになりました。だからこそ、これからの問いは「上手に編集できるか」ではなく「AIにできない部分で、誰のどんな結果に役立てるか」に移っています。この記事では、CapCutの編集力をAI時代の収入につなげる順番を、起業準備の視点で整理します。
AI時代にCapCutを起業準備へ活かす全体像

CapCut(ByteDance系のサービスが提供)は、無料で使える動画編集アプリです。テンプレートを選んで素材を差し込むだけで形になり、いまではAIが長尺の素材から見せ場を自動で切り出すAutoCutや、多言語の自動字幕、音声読み上げまで一通りそろっています。かつては手作業で何時間もかけていたカット詰めや字幕入れが、AIによって誰でも数分で終わる作業に変わりつつあります。
変化は編集アプリの中だけではありません。文章を打ち込むと短い動画そのものを作り出す生成AIも、この1、2年で実験段階から実用段階へと近づいてきました。誰でも、しかも速く動画を用意できる方向へ、技術全体が動いています。これからは「動画を作れること」そのものよりも、その動画を誰のどんな結果につなげられるかが問われていきます。
市場の側を見ると、動画の需要そのものは広がり続けています。矢野経済研究所の調査(2024年8月発表)では、2024年度の動画コンテンツビジネスの総市場規模は前年度比108.9%の9,880億円と予測されています。市場は伸びる、けれど編集できる人も一気に増える。「きれいに編集できます」だけでは埋もれてしまう時代に入ったからこそ、どこで差をつけるかを最初に決めておく必要があります。
AI時代の動画編集に向いている人・苦しくなる人

AIが編集の大半を肩代わりするようになると、向き不向きの基準も変わってきます。腕の良し悪しよりも、AIとどう付き合うかで進みやすさが分かれます。まずは、これからも伸びやすいタイプから挙げます。
- AIを道具として受け入れられる人:
自動編集や自動字幕に作業を任せ、浮いた時間を別の工程へ回せる人 - 相手の事情をくみ取れる人:
「このお店の常連は誰で、何に困っているか」まで想像できる人 - 現場に足を運べる人:
その店・その商品を、その場に行って撮りに動ける人
逆に、次のような向き合い方だと、これからは苦しくなりやすいと感じています。
- 手作業の腕にこだわりすぎる人:
AIに任せられる工程まで自力で抱え、時間で消耗してしまう - 速さと安さだけで競おうとする人:
作業の値段だけで勝負し、AIや量産勢との価格競争に巻き込まれる - 作れることを誰にも伝えない人:
腕は上がっても、声をかける相手を持たないままになる
どれも本人の能力ではなく、編集を「自分の作業」として閉じてしまうところに原因があります。AIを敵と見るのではなく味方の道具と捉え、人にしかできない部分へ時間を移せるかどうか。ここが、これからの分かれ目になります。
AI時代に選ばれる人の3つの考え方

起業18フォーラムで、CapCutをはじめ動画編集に取り組む会員さんを見ていると、AIが広がった今でも依頼が途切れない人には共通点があります。大きく3つに整理できます。
1つ目は、売っているものを取り違えないことです。拙著『会社員が働きながら月30万円を稼ぐ起業法』に「お客様が買うのはドリルではなく、ドリルがあける穴だ」という考え方を紹介しています。依頼主が欲しいのはきれいに編集された動画そのものではなく、その動画が呼び込む来店や問い合わせ、商品の売れ行きという結果のほうです。
この考え方は、AIが編集を肩代わりする時代にむしろ強まります。編集という作業の値段はAIによって限りなく下がっていきますが、来店や売上という穴は、相手のビジネス理解や現場の判断を全部使わないと開きません。値付けの単位を作業から相手の結果へ移すほど、AIによるコスト低下が自分の味方に変わります。
2つ目は、誰のための動画かを先に決めることです。「動画編集を請け負います」では、AIで量産する人たちと同じ土俵に立つだけです。「地元の飲食店が新メニューの来店を増やすための縦型動画」というところまで絞ると、AIには持てない事業の文脈が武器になります。
3つ目は、AIにできない信頼と現場を積むことです。私のところには「AIを使えば誰でも作れるよねと言われ、単価が下がってしまった」という相談が増えています。AIは成果物は出せても、納品後に効果を一緒に確かめ、お店との関係を続けていくことはできません。
- 結果を売る:
作業ではなく、動画が生む来店や問い合わせを届ける - 相手を絞る:
AIに持てない事業の文脈を握れるところまで対象を決める - 信頼と現場を積む:
撮影と納品後の伴走という、AIに渡せない部分で勝負する
まずは、自分の編集で「相手にどんな結果を届けたいか」を一行にしてみてください。その一行が決まると、AIに任せる作業と、自分が踏み込むべき場所の線引きが、いっきにはっきりしてきます。
単価崩れから抜け出した会員さんの実例

起業18フォーラムにいる三田村さん(仮名・40代前半・男性・住宅設備メーカーで営業職・妻と小学生の子ども1人)は、もともと趣味でCapCutをさわっていました。最初は自己流で、クラウドソーシングに登録し、安い金額でカット編集や字幕入れを引き受けていたそうです。
ところが、あるクライアントから「これ、AIで作れるよね」と言われ、提示される単価がじりじり下がっていきました。半年たっても、作業の速さで競う消耗から抜け出せませんでした。
変わり始めたのは、起業18フォーラムの勉強会で自分の受け方を発表し、参加者から「お客様が買うのは編集ではなく穴のほうでは」と返されてからでした。「作業に値段を付けていたから、AIと同じ土俵で叩かれていたんだ」と気づいた三田村さんは、進め方を見直します。
定型のカット詰めや字幕付けはCapCutの自動編集や自動字幕に任せて時間を作り、その時間を「来店を増やしたい地元の小さな飲食店」を理解することに回しました。本業で培った提案の言葉を添えて、知り合いのお店に縦型動画を1本だけ作って持ち込みます。
その動画を見たお客さんが実際に来てくれたことから、お店の側に「毎月お願いしたい」という気持ちが生まれます。三田村さんも、撮影のタイミングや見せ方をお店と相談しながら決め、公開後の反応を一緒に確かめる形に変えていきました。AIで速く作りながら、来店という結果とお店との継続した関係のほうで勝負していったのです。
三田村さんは24ヶ月目には依頼の大半が同じ数店からの継続案件になり、紹介で新しいお店ともつながるようになりました。今も会社員を続けながら、AIに任せられる作業を増やしつつ、自分にしか積めない信頼を一店ずつ太くしています。
AI時代に起業準備を前へ進める3つの行動

最後に、CapCutでの編集をAI時代の起業準備として進めていくための具体的な動かし方を3つ挙げます。どれも特別な機材はいりません。
1つ目は、AIを取り入れて作業を速くし、浮いた時間を相手の理解に回すことです。自動編集や自動字幕に定型の工程を任せれば、編集にかけていた時間は大きく減ります。その時間を「相手のお店は誰に来てほしいのか」を考えることへ移します。
2つ目は、納品して終わりにせず、結果に踏み込むことです。「あの動画を見て来てくれた人はいましたか」と聞きにいくだけで、関係は続きます。納めたあとに結果を一緒に確かめる姿勢が、一度きりの相手を続く依頼主に変えていきます。
3つ目は、AIにできない現場と信頼を積むことです。その店に足を運んで撮る一次素材や、お店との関係づくりは、AIには代われません。安心して任せられる相手だと伝わることも、価格ではなく成果で選ばれる理由になります。
- AIで速く作る:
定型作業を自動化し、浮いた時間を相手の理解に回す - 結果に踏み込む:
納品後に反応をたずね、来店や問い合わせまで一緒に追う - 現場と信頼を積む:
撮影と関係づくりという、AIに渡せない部分に時間を移す
作業の速さでAIと張り合うより、AIに任せて生まれた時間を相手の結果と関係に注ぐほうが、限られた時間で続けやすくなります。AI時代の起業準備で大切なのは、一回の編集を上手にこなすことよりも、同じ人がまた頼みたくなる関係を自分のなかに積み上げていくことです。

編集ができるようになった段階から、AIを味方につけて相手の結果に踏み込む一歩を足すだけで、半年後に見える景色は大きく変わってきます。まずは身近な一人に、あなたの編集で届けたい結果を伝えて、最初の1本の相談を持ちかけてみてください。ここまで丁寧に腕を磨いてきたあなたなら、AIに置き換えられない場所で、それを必要としている相手にきっと出会えます。
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