記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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沖縄市に暮らしている人は141,489人で、那覇市に次いで県内で2番目に多い数です(令和8年7月1日現在・沖縄市の住民基本台帳)。沖縄市で起業を考えるなら、まず足を運ぶ先は市の創業支援拠点「Startup Lab Lagoon KOZA」と沖縄商工会議所の二つになります。
ただ、窓口に行く前に決めておきたいことがあります。コザの通りには、来る理由のまるで違う三つの客層が重なって歩いています。そのどれを相手にするかが決まらないうちは、商品も値段も形になりません。
沖縄市とコザという二つの呼び名が指すもの

沖縄市が生まれたのは1974年4月1日です。コザ市と美里村が合併して、いまの市の形になりました。そのため「コザ」という住所は残っていません。それでも胡屋十字路の周辺やコザゲート通り一帯は、地元でも県外から来た人の間でも、今なおコザと呼ばれています。
市域の面積は49.72平方キロメートル、世帯数は68,684世帯です。中央パークアベニュー、一番街、パルミラ通り、銀天街といった商店街が歩いて回れる距離に並んでいて、その真ん中に胡屋十字路があります。人も店も、狭い範囲に集まっている街です。
街の外から人を呼ぶ仕掛けもいくつかあります。コザ運動公園では毎年、沖縄全島エイサーまつりが開かれます。2021年に完成した沖縄サントリーアリーナ(旧称・沖縄アリーナ)では、バスケットボールの試合や大きなライブが行われます。催しのある日とない日で、通りを歩く人の数がはっきり変わります。ここが沖縄市で商売を考えるときの前提になります。
コザには性格の違う三つの客層が重なっている

「商売をするなら那覇まで出ないと客がいない」。沖縄市にお住まいの方から、この心配を何度か聞いてきました。けれど14万人が毎日そこで暮らしている街で、客がいないということは起こりません。つまずくのは客の数ではなく、来る理由のまるで違う客が同じ通りに混ざっているところです。
沖縄市で何を売るかを考えるとき、先に分けておきたいのが客層です。ひとまとめに「沖縄市のお客さん」と考えているうちは、商品も値段も決まりません。
| 客層 | 来る日 | 単価と回数 | 先に用意するもの |
|---|---|---|---|
| 地元の暮らしの客 | 平日も週末も動く | 単価は低く回数が多い | 顔と名前を覚えてもらう仕掛け |
| 催しの日に来る客 | 試合・ライブ・祭りの日 | 単価は上がるが日で波が大きい | 当日に売り切る段取りと告知 |
| 英語で話す客 | 曜日にあまり左右されない | まとめ買いが出やすい | 英語の案内とカード決済 |
この三つは、同じ通りにいながら別の商売相手です。地元の暮らしの客に売れるものが、催しの日に来る客に売れるとはかぎりません。逆もまた同じです。
客層を一つに絞ると用意するものが決まる

勤め先の仕事を続けたまま試すなら、選びやすいのは地元の暮らしの客です。売上の波が読みやすく、催しの日程に振り回されません。何より、自分が毎日通っている道の中に相手がいます。
- 地元の暮らしの客から始める:
平日の売上が読めて、勤め先の休みにも合わせやすい入口 - 相手の店を一軒に絞る:
コザの店同士の紹介が次の一件につながる流れ - 催しの日は上乗せに使う:
エイサーまつりや沖縄サントリーアリーナの試合日は、土台ができてからの上乗せ
逆に、最初から催しの日だけを狙う進め方は苦しくなります。年に数回の大きな日に合わせて仕入れると、外れたときの在庫がそのまま残るからです。人出の落差が大きい街では、波の高い日を基準に規模を決めると、平常月の家賃が重くのしかかります。
- 催しの日を基準に規模を決める:
人出のない月の固定費が重荷 - 三つの客層に同時に手を出す:
案内も値段も定まらず、どの客からも中途半端な印象 - 英語対応を後回しにしたまま出店する:
コザゲート通り周辺で、来た客をそのまま帰す取りこぼし
沖縄市で使える創業の窓口と制度

市が委託運営している創業支援拠点
沖縄市の創業支援拠点「Startup Lab Lagoon KOZA」は、一番街商店街の中にあります。沖縄市の経済文化部企業誘致課が、スタートアップエコシステム支援事業として委託運営している場所です。創業・起業の支援や創業スクール、各種の講座やイベントが随時ひらかれています。
コワーキングスペースは1階が無料、2階が2時間で500円、1日1,500円です。スタートアップに関する相談は無料で、営業は9時から20時まで、土日祝は休みです(2026年7月26日時点)。
商工会議所と創業スクール
沖縄商工会議所は沖縄市中央4-15-20にあります。金融・税務・経理・労務といった相談のほか、事業計画書の作り方や開業の手続き、開業資金の借り方についても相談できます。創業塾も開かれています。
もう一つの入口が、コザ信用金庫の「コザしん創業スクール」です。沖縄市を含む12市町村の創業支援等事業計画にもとづく特定創業支援等事業で、第12期は令和8年8月15日から11月7日までの土曜、全7日間の日程です。会場はコザ信用金庫本店(沖縄市上地2-10-1)になります。
特定創業支援等事業は、中小企業庁が所管する産業競争力強化法の仕組みです。市町村が商工会議所や地域の金融機関と組んで創業を支え、修了して市の証明を受けると次の扱いになります。
- 登録免許税:
会社を設立するときの税額が軽くなる扱い - 自己資金の要件:
沖縄県の融資制度「創業者・事業承継支援資金」で必要な自己資金が所要資金の10%以上に緩和 - 補助金の上限額:
小規模事業者持続化補助金などで上限額が引き上げられる要件
補助金も創業スクールも、売るものと相手が決まってから使うほうが効きます。先に制度から入ると、制度に合う事業をあとから探すことになります。
客層を混ぜたまま考えていた比嘉さんの場合

沖縄市に住む比嘉さん(仮名・40代前半)は、市内の自動車販売会社で店舗の運営と販促を9年担当してきました。地元で自分の仕事を持ちたい気持ちはあったものの、最初に手をつけたのはSNSのアカウント作りでした。何を書けばいいかが決まらず、3ヶ月で更新が止まりました。
手が動き始めたのは、一番街にある市の創業支援拠点に通うようになってからです。1階が無料で使えると知り、月に4日、仕事帰りに机を借りるようになりました。そこで顔を合わせる人たちは「誰の、どの困りごとを、いくらで引き受けるか」を一言で答えます。比嘉さんは答えられませんでした。
答えが出ないまま、比嘉さんは起業18フォーラムの勉強会に通い始めました。勉強会では、ほかの会員がどうやって相手を絞り込んでいったのかという話が何度も出てきます。聞くうちに比嘉さんが気づいたのは、自分が客層を混ぜたまま考えていたことでした。地元の暮らしの客も、催しの日に来る客も、英語で話す客も、ひとつの「沖縄市のお客さん」として扱っていたのです。
絞ったのは、地元の暮らしの客を相手にしている個人店でした。比嘉さんが本業で毎日やっていたのは、来店したお客さんにもう一度来てもらうための段取りです。顧客台帳の付け方、点検の案内を出す時期、次回の予約を取る声のかけ方。自分には当たり前の作業が、コザの個人店ではほとんど手つかずでした。
最初に手伝ったのは、知り合いの整備工場です。そこから紹介が続きました。1年半で関わった店は延べ18店になり、いまも毎月続けて見ている店が6店あります。勤め先の仕事は続けたままです。
「食べていけない」の中身を先に見る

拙著『朝晩30分 好きなことで起業する』では、リスクについて「お化けの正体がススキだった」という言い方で紹介しています。正体が見えないまま怖がっているから、それがリスクになってしまう、という話です。あわせて、リスクの避け方を保有・予防・移転・分散・補完・回避の六つに分けて紹介しています。
沖縄市で起業を考える方が抱えている不安も、口に出してもらうとたいてい形が決まっています。「地元だけでは食べていけないのではないか」。この一言を分けていくと、次の三つに落ち着きます。
- 催しのない月の売上が読めない:
地元の暮らしの客を土台に置き、催しの日は上乗せに回す分散 - 地元客の単価が上がらない:
単発の売り切りをやめ、毎月続く関わり方へ商品を作り替える予防 - 英語の客に対応できない:
翻訳された案内板とカード決済に任せ、自分が話す必要をなくす移転
不安は、形が決まった瞬間に、手を打てる課題に変わります。三つに分けてしまえば、どれも今日から一つずつ潰していけるものばかりです。

沖縄市の起業についてよくある質問

Q.沖縄市で起業するなら、那覇まで出たほうがいいですか?
那覇に出ないと成り立たない、ということはありません。沖縄市には141,489人が暮らしていて(令和8年7月1日現在)、県内では那覇市に次ぐ人数です。まず沖縄市の中で誰を相手にするかを決めて、足りなければ県外やオンラインに広げるほうが、家賃も移動も軽く済みます。
Q.沖縄市で創業の相談ができる窓口はどこですか?
市の創業支援拠点「Startup Lab Lagoon KOZA」と、沖縄商工会議所の二つが入口になります。前者は沖縄市の企業誘致課がスタートアップエコシステム支援事業として委託運営していて、スタートアップに関する相談は無料です。後者では創業の相談に加えて創業塾もひらかれています。
Q.特定創業支援等事業を受けると、何が変わりますか?
市の証明を受けると、会社を設立するときの登録免許税が軽くなります。沖縄県の融資制度「創業者・事業承継支援資金」では、必要な自己資金が所要資金の10%以上に緩和されます。沖縄市の場合は、コザ信用金庫の「コザしん創業スクール」がこの事業にあたります。
Q.コザの商店街に店を借りないと始められませんか?
借りなくても始められます。比嘉さんのように、店を持たずに個人店の裏側を手伝う形もあります。まず一件だけ受けてみて、続きそうなら場所を考える。この進み方なら、勤め先の休みの範囲でも試せます。
沖縄市で今日からできること

沖縄市で起業を考えるとき、最初にやることは書類でも資金計画でもありません。自分が相手にする客層を、自分の目で選ぶことです。それは机の上では決まりません。
今日できることは、今度の休みに一番街か中央パークアベニューを歩いて、開いている店の人に「なぜこの街で開いたのですか」と3分だけ聞いてくるだけで十分です。三軒も回れば、三つの客層のどれで食べている店なのかが見えてきます。
相手が決まってから Lagoon KOZA や沖縄商工会議所を訪ねると、聞くことが具体的になります。創業スクールや補助金の話も、そこで初めて自分の話として入ってきます。
那覇に店を構えるのも、沖縄市で始めて相手を県外まで広げるのも、どちらも選べます。決めるのは、コザの通りを自分の足で歩いたあとで間に合います。
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