マイナンバーで会社の外の収入は勤め先に伝わる? 住民税で気づかれる本当の経路と普通徴収の実際

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

● 質問

マイナンバー制度が始まってから会社に社外の仕事がバレやすくなったと聞きます。週末だけ知人から頼まれた仕事を受けたいと考えているのですが、税務署から勤め先に自分の申告データが通知される仕組みは実際にあるのでしょうか?

起業前質問集

● 回答

マイナンバー制度が始まったことで、税務署から会社に自分の申告データが自動的に届くようになったと考えている方が少なくありません。しかし、実際の税務の流れを追いかけると、これは事実とは違います。

住民税の金額は気づかれる経路の一つですが、職場の人づてやSNS、取引先との接点など、税以外の経路もあります。

マイナンバーではなく住民税で気づかれる

税務上の入口になり得るのは、税務署から申告内容が通知されることではなく、市区町村が勤務先へ通知する住民税の特別徴収税額です。

住民税の税額通知は紙または電子で勤務先へ届き、担当者は給与から差し引く月額を扱います。給与以外の所得も特別徴収に含まれれば、本業の給与から想定される額との差が気づきのきっかけになる可能性はあります。ただし、勤務先へ確定申告書そのものが渡るわけではありません。

マイナンバーの導入によって、税務署から勤め先へ確定申告の内容が自動通知される仕組みが新設されたわけではありません。番号は法令で定められた税・社会保障などの手続きに使われ、勤務先が自由に個人の申告内容を照会できるものでもありません。

マイナンバー導入で起きたこと・起きなかったこと

  • 起きたこと:
    確定申告書や源泉徴収票へのマイナンバー記載義務
  • 起きたこと:
    税務・社会保障の各行政機関で、法令上認められた範囲の本人確認や情報連携の精度が向上したこと
  • 起きなかったこと:
    税務署から勤め先へ個人の申告データを通知する仕組みの新設
  • 起きなかったこと:
    住民税の徴収方法の全国一斉切り替え
給与所得と事業所得で経路が分かれる

ここで比較解剖しておきたいのは、同じ「会社の外の収入」でも所得の種類で税務経路がまったく違うという点です。

他の会社で受けたアルバイトやパートの賃金は給与所得です。給与所得に対する住民税は原則として給与からの特別徴収となり、確定申告書で「自分で納付」を選べる対象とは扱いが異なります。

給与・公的年金等以外の所得に対する住民税は、確定申告書第二表「住民税・事業税に関する事項」欄で「自分で納付」を選択できます。ただし、実際の納付方法や通知は自治体の処理によって異なることがあるため、住所地の市区町村にも確認しておくと確実です。

所得区分は、仕事の継続性、独立性、規模、帳簿保存など実態に基づいて判断します。普通徴収を選ぶために、給与所得や雑所得を事業所得として申告することはできません。

確定申告で普通徴収を選ぶ手順

  • ステップ1:
    確定申告書第二表の『住民税・事業税に関する事項』欄を開く
  • ステップ2:
    『給与、公的年金等以外の所得に係る住民税の徴収方法』で『自分で納付』に丸を付ける
  • ステップ3:
    申告内容の控えの保管、自治体から届く通知に沿った納付、市区町村への徴収方法の確認

普通徴収を選んでも、勤務先に知られないことが保証されるわけではありません。また、税の納付方法と就業規則上の届出・許可は別問題です。所得は実態に合う区分で申告し、必要な手続きはそれぞれ正しく行うことが基本です。

まずは勤め先の就業規則を開いて、社外の仕事に関する条項の有無と申請の要否を確認しておくところから始めるのが順番として手堅い動き方です。

就業規則の内容は職場ごとに異なります。届出や許可が必要なら、会社の時間・設備・顧客情報を使わないこと、競業や本業への支障を避けることも含め、定められた手続きを先に確認します。

税務の芯は、所得区分を実態に合わせ、申告と納付を正確に行うことです。普通徴収は利用条件を満たす場合の選択肢の一つです。

岡林さん(Web制作・30代)の実際

拙著『会社を辞めずに朝晩30分からはじめる起業』にこの点を取り上げていて、バレる最大の要因は税金の仕組みではなく、自分から周囲に話してしまうことだと書いています。実際の会員さんの経験を紹介します。

Web制作の技術職として働く岡林さん(仮名・30代)は、知人から頼まれてサイト制作を月に1件、3万円ほど受けていました。初めての確定申告の直前になって「住民税でバレるのでは」と考え込んでしまい、書類作成の手が1ヶ月止まっていたそうです。自己流で情報を集めるほど、記事によって書いてある内容が食い違い、判断がつかなくなっていきました。

転機になったのは、起業18フォーラムの勉強会でした。ほかの会員さんから、所得区分を実態に合わせて申告し、給与以外の所得について普通徴収を選んだ経験を聞いたのです。岡林さんは税務署と市区町村にも確認し、帳簿を整えて申告しました。開業届を出しただけで所得区分が決まるわけではないことも理解したうえで、今は月数万円の売上を積み上げています。

まずは売上と必要経費を記録し、国税庁の確定申告書等作成コーナーで所得税を試算します。住民税の試算や徴収方法は、市区町村の案内や税務相談で確認してください。

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家族や職場との温度差は、正確な数字と手続きの実物を少しずつ共有していけば、時間をかけてやわらいでいきます。今日は納付方法の選択肢を1つ確認するだけで、明日から見える景色は変わっていきます。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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