記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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● 質問
20代後半の男性で、いま製造系の派遣社員として働いています。契約更新のたびに将来が不安になり、いつか自分で稼げるようになりたいと思っていますが、実績もお金もありません。
こんな状況から起業準備を始めるとしたら、何からやればよいでしょうか?

● 回答
「派遣社員で実績もお金もない20代は、起業準備なんて無理」。この常識は、ここ数年で大きく書き換わりました。むしろ20代のうちに小さく試しておくほうが、将来の選択肢は広がります。
最初の一歩は、資金でも資格でもなく、身近な人に声をかけて自分の話を聞いてもらうことです。「弱い人脈」を1本だけ動かすところから始めれば、実績ゼロからでも半年で景色が変わります。
「実績ゼロ」の20代は、実は動き出しやすい
総務省の労働力調査(2025年平均)によれば、労働者派遣事業所の派遣社員はおよそ156万人。相良さん(仮名・20代後半・男性・製造派遣)と同じような立場の人は、決して珍しくありません。契約更新の3か月ごとに「次はどうしよう」と感じる不安も、多くの若い派遣スタッフに共通するものです。
ただ、20代の派遣スタッフは、40代・50代の会社員より動きやすい面もあります。扶養する家族が少ない。失敗しても働き直す時間がある。平日夜と週末の時間の使い方を自分で決めやすい。この3つの余白は、起業準備において実は大きな武器になります。
拙著『会社で働きながら6カ月で起業する』では、起業準備に必要なチカラを「知」「人」「金」の3つで整理しています。20代で実績ゼロの相良さんに一番効くのは、そのうちの「人のチカラ」です。もう少し正確にいえば、「弱い人脈」を動かすことになります。
「強い人脈」より「弱い人脈」が転機を運ぶ理由
私のこれまでの起業支援の経験では、20代の派遣スタッフが最初にやるべきことは、名刺集めでも高額なセミナー参加でもありません。学生時代の同級生。以前の職場の先輩。SNSで数回やりとりしただけの人。そういう「たまに会う程度の相手」に、自分がやりたい方向を1文だけ話してみることです。
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強い人脈:
毎日会う家族・親友・同じ現場の同僚。応援はしてくれるが、外の情報は入ってきにくい -
弱い人脈:
月に1回も会わない旧友・元上司・SNSでゆるくつながっている相手。別の業界の話を運んできてくれる -
ドリームキラー:
「派遣で起業なんて無理」と真顔で言ってくる人。距離を置くだけでよい
相良さんに最初にやってほしいのは、この「弱い人脈」を3人だけ紙に書き出すことです。そのうえで、いちばん話しかけやすい1人に、自分の力で少しでも稼げるようになりたい方向と、どんな入口がありそうかを尋ねてみます。今夜のうちに、いちばん話しかけやすい1人へ短いメッセージを送るところまで進めてください。
20代派遣で動き出す人の3タイプ
起業18フォーラムの会員さんを見ていると、20代の派遣スタッフから動き出す人には、大きく分けて3つのタイプがあります。まずは、自分がどこに近いかを言葉にしてみてください。
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タイプ1:現場スキル発信型
派遣先で覚えた工程改善・図面の読み方・ヒヤリハット対策などをSNSで発信し、同業の若手からの質問対応を有料化する道 -
タイプ2:同世代代行型
20代・30代の忙しい会社員向けに、リサーチ代行や資料整形など、日常業務の小さな肩代わりから始める道 -
タイプ3:地域接点型
住んでいる街の掲示板・地域アプリで「小さく手伝います」を出し、半径3キロの困りごとを受ける道
3つのうち、自分の性格と生活動線に近いのはどれか。タイプが違うと最初に声をかけるべき相手も、SNSで書くべき内容も変わります。3か月試して合わなければ、別のタイプに切り替えても構いません。20代のうちは、何度でも組み直せます。
実績ゼロから初受注までの現実的な道筋
相良さんに近い会員さんの動き方を、時系列で紹介します。派遣先でCNC旋盤の段取り改善を任される20代後半の男性で、参加した当初はSNSも名刺も持っていませんでした。
最初の1か月は「自己流」でした。無料の起業系動画を毎晩1本ずつ見て、ノートに手順を書き写す。何本見ても、朝、派遣先に向かう電車の中で「今日も何も変わっていない」と感じる日々が続いたそうです。ここで手が止まる若い人は、実は多いものです。
転機は、勉強会で先輩会員に「まずSNSで、現場で困った話を1つだけ書いてみたら」と助言されたことでした。書いてみた「機械の段取り替えで3時間かかっていた工程を、指示書の順番を変えるだけで1時間短くした話」に、思いがけず保存とDMが集まりました。学びの場は起業18フォーラムの勉強会で言語化を手伝ってもらい、投稿の書き方と有料化の入口を整えていきます。
そこから半年、月に1本のペースで発信を続けたところ、9か月目に同業の20代若手から「有料で相談に乗ってほしい」と依頼がありました。派遣以外の口座に振り込まれた初受注は5千円ほどでしたが、そのお金が届いた瞬間の景色は、まったく違ったといいます。
額は小さくても、自分の力だけで一円でも稼いだ体験は、そのあとの半年を大きく変えます。派遣以外の入金が「あり得ない話」ではなくなるからです。
相良さんも今日、派遣先の現場で「これ、他の人は困っていそうだな」と感じた小さな工夫を1つ、思い出してみてください。
お金と時間の「怖さ」への現実的な対応
20代の派遣スタッフから最も多い質問が、「お金も時間もない自分に、本当にできるのか」というものです。ここに数字で答えておきます。
拙著『会社で働きながら6カ月で起業する』では、起業準備の最初は20点でも出す、と繰り返し書いています。100点にしてから出そうとする完璧主義は、20代がいちばん陥りやすい罠です。実績も知名度もないうちは、「出してみて反応で直す」が唯一の正解になります。
時間についても、朝晩それぞれ30分を目安にしてください。派遣先のシフトによっては、朝は無理な週もあります。その場合は夜の30分だけでも構いません。週に合計3時間・月に12時間確保できれば、半年後には十分に手応えの出る発信量になります。

相良さんのように「実績もお金もない20代の派遣」だからこそ、弱い人脈の1本目を今日動かしてほしい。数十万円の自己投資よりも、数千円の初受注のほうが、次の半年を変えます。
よくある質問
Q.派遣先の就業規則で兼業が禁止されていても、起業準備はできますか?
準備段階でやれることは想像以上に多くあります。学ぶ・書く・人と話す・調べるといった行動は、一般には売上を伴う兼業そのものとは切り分けやすい領域です。ただし、派遣元・派遣先の規則、守秘義務、競業やSNS発信の制限に触れないことが前提になります。
実際に売上を立てる段階に入る前に、規則を確認する時間は十分にあります。心配な場合は、無償のモニターでも事前に条件を確認してから、就業時間外の学びとして小さく試してください。
Q.20代のうちに退職して独立したほうが、時間を使えて有利ではないですか?
私のこれまでの支援経験では、20代の即時退職はあまりおすすめしません。派遣であっても、毎月の入金があること自体が、起業準備の最大の資本になります。実績を積む前に固定収入を絶つと、半年後の家賃が最初の判断を歪めます。少なくとも、月に3万円が3か月続いてから、退職の話を検討するくらいで十分です。
Q.どこで学べば、20代の派遣スタッフが同じ立場の仲間と出会えますか?
起業18フォーラムの勉強会には、20代の派遣・契約社員・若手会社員が数多く参加しています。同じ「実績ゼロから始める」立場の相手と、直接顔を合わせて話せる場です。ドリームキラーに囲まれた日常から一度離れて、別の視野を持つ人の話を聞く時間を、月に1回でも持ってみてください。
やめたくなったら、いつでもやめられます。退路があるからこそ、思い切って試せるのが、派遣で働きながらの起業準備の良いところです。今夜、弱い人脈の名前を3人書き出して、そのうちの1人に声をかけてみてください。
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