記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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● 質問
30代に入ってから、今の会社にいることへの違和感が消えなくなりました。仕事は回せているし、評価も悪くありません。それでも「この先10年もここで働くのか」と考えると、急に息苦しくなります。
いつか自分の仕事を持ちたい気持ちはあるのですが、辞める踏ん切りはつきません。この中途半端な状態で、起業の準備はどう始めればいいのでしょうか?

● 回答
その違和感は、放っておくと消えるどころか、年々濃くなっていくものです。そして多くの方が「辞めるか、辞めないか」の二択で考えて、答えが出ないまま数年を過ごしてしまいます。
でも、起業準備の入口はそこではありません。辞める決断より先に、勤めを続けたまま動かせるものから始めるのが、30代の現実的な順番です。踏ん切りは、準備が進むうちに後から付いてきます。先に覚悟を決めようとするから、いつまでも動けないのです。
違和感が消えないのは、あなたが鈍いからではありません
まず安心してほしいのは、その息苦しさは30代に特有のもので、決してあなただけのものではないという点です。仕事に慣れて先が見えてきたからこそ、「ここでの10年」がリアルに想像できてしまう。その想像が違和感の正体です。
数字でも、この年代の動きははっきり表れています。日本政策金融公庫総合研究所の「2024年度新規開業実態調査」(2024年11月27日公表)では、開業した人の年齢で30歳代が28.6%を占め、40歳代の37.4%に次ぐ多さでした。つまり、30代で会社の外に自分の仕事を持ち始める人は、想像よりずっと多いということです。
違和感は、危険信号ではなく出発の合図に近いものです。問題は、その合図を受け取ったあとに何をするかだけになります。
「辞める踏ん切り」を入口にしないでください
踏ん切りがつかないのは当然です。30代は、収入も生活もある程度安定してくる時期。守るものがあるからこそ、ゼロか百かの決断はためらって当たり前なのです。
ここで覚えておいてほしいことがあります。退職を先に決めようとすると、準備が「重い決断の付属物」になり、かえって動けなくなります。順番が逆なのです。先に手元から動かし、手応えが見えてから出口を考える。これなら、今の生活を一切崩さずに準備を始められます。
会社員という立場は、足かせではなく土台になります。毎月の給料があるから、焦って値下げをする必要もなく、じっくり試せる。この余白は、辞めてから始める人には持てないものです。
最初の一歩は「付き合う相手」を少しずつ変えること
では、踏ん切りの前に何から始めるか。私が現場で勧めているのは、いきなり事業を考えることではなく、付き合う相手を少しずつ変えてみることです。
拙著『会社で働きながら6カ月で起業する』に、コンフォートゾーンという考え方を紹介しています。人は居心地のよい場所にとどまろうとしますが、そこから抜け出すのに最も効くのは、気合いではなく、付き合う仲間を入れ替えることだという話です。毎日顔を合わせる人がすべて同じ会社の同僚だと、違和感はモヤモヤのまま言葉になりません。
会社の外で、すでに自分の仕事を持っている人や、準備を始めている人と話す時間を持つ。それだけで、漠然とした息苦しさが「自分は何をしたいのか」という具体的な問いに変わっていきます。
- 会社以外の場に顔を出す:
週末や平日の夜に、起業の準備をしている人が集まる勉強会や講座に参加してみる - 一歩先の人の話を聞く:
すでに会社の外で稼いでいる人が、最初の半年で何をしたかを具体的に聞く - 違和感を口に出す:
「このまま会社にいていいのか」というモヤモヤを、同じ立場の人に言葉にしてみる
頼まれてきたことの中に、最初の仕事の種がある
付き合う相手が変わると、次に必要なのは「自分には何ができるのか」という棚卸しです。ここでよくある勘違いが、新しいスキルを身につけてから始めようとすることです。
そうではありません。起業の種は、これまであなたが周囲から頼まれてきたことの延長にあります。社内で資料づくりを任される、後輩の相談に乗る、面倒な調整役を振られる。本人にとっては当たり前すぎて見えませんが、頼まれるということは、そこに人の困りごとがあるという証拠です。
新しい資格を取りに走る前に、今の自分が何で頼られているかを確認してください。30代は、その頼られ方が職場で一通り出そろう時期でもあります。会社の中で当たり前にやってきたことが、外では立派な商品になることは少なくありません。
同窓会で動き出した沢渡さんの18ヶ月
起業18フォーラムの会員に、沢渡さんという30代後半の方がいます。メーカーで生産管理の仕事をしていて、まさに「このまま会社にいていいのか」という違和感を何年も抱えていた方でした。
動き出したのは、ある同窓会でした。学生時代の友人が会社を辞めて自分で仕事を始めた話を聞き、「自分も動けるはずだ」と眠っていた気持ちが戻ってきたといいます。とはいえ、最初は何をどう始めればいいか分からず、独学で情報を集めては手が止まる状態が続きました。
転機になったのは、起業18フォーラムの勉強会に顔を出すようになってからです。そこで一歩先を行く会員が、勤めを続けながらどう準備を進めているかを間近で見て、自分の進め方の漠然さに気づいたそうです。そのあと個別相談で、生産管理の経験を活かした中小工場向けの業務改善サポートという形にロードマップを整理していきました。
会社を辞めずに、平日の夜と週末だけで続けたため、立ち上がりはゆっくりでした。それでも続けるうちに口コミで依頼が増え、18ヶ月目には、副収入が月10万円という、生活の選択肢を一つ増やせる水準にまで届きました。沢渡さんは今も会社員を続けながら、辞めるかどうかを自分のペースで考えられる状態になっています。違和感に押し出されるのではなく、自分で選べる位置に立てたのです。
今日からできる、辞めずに始める準備
沢渡さんの歩みからわかるのは、最初の一歩は決断ではなく、行動できる環境に身を置くことだという点です。違和感の段階で一人で考え込んでも、答えは出ません。一歩先の人がいる場所に行くことで、初めて自分の輪郭が見えてきます。
辞める踏ん切りは、準備が進んだ先で自然と付いてきます。だから今は、その手前にある「動ける環境づくり」に集中すれば十分です。試せることは、思っているよりたくさんあります。
もし何から始めるか迷うなら、今日はオンラインの無料講座か体験回を一つ選んで、申し込みボタンを押してみてください。今の生活を一切変えずに、準備の入口に立てます。一歩先の人の話を聞くだけでも、あの息苦しさが具体的な行動の理由に変わっていくはずです。
よくある質問

Q.30代から起業の準備を始めるのは遅すぎませんか?
遅くありません。日本政策金融公庫の調査でも、開業した人の年齢は40歳代が最多で、30歳代がそれに次いでいます。むしろ社会人としての経験と人脈がそろい、体力もある30代は、勤めを続けながら準備を進めるのに向いた時期です。
Q.会社を辞めずに準備しても、就業規則に違反しませんか?
会社によって規定が異なるため、まずは自社の就業規則を確認してください。近年は社外での活動を認める企業が増えていますが、競業避止や届け出のルールがある場合もあります。準備の初期段階で、許可や届け出が必要かどうかを確かめておくと安心です。
Q.特別なスキルや資格がなくても始められますか?
始められます。新しい資格を取る前に、これまで周囲から頼まれてきたことを思い出してください。社内での調整や資料づくり、後輩への助言など、当たり前にやってきたことの中に、人の困りごとを解決する種が埋まっています。

違和感は、あなたが次の場所へ進もうとしているサインです。辞めるかどうかを今すぐ決める必要はありません。まずは一歩先の人がいる場所へ足を運ぶところから始めてください。
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