記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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● 質問
会社で長く続けてきた仕事の経験を、これから誰かに教える形で起業できないかと考えています。ただ、私はもともと人前で話すのが得意ではなく、大勢を前にすると頭が真っ白になるタイプです。
話すのが苦手な人間でも、教える仕事で起業することはできるのでしょうか?

● 回答
「自分には、お金を払ってもらえるような話術なんてない」。教える仕事に関心を持つ方の多くが、ここでつまずきます。けれど、結論からお伝えすると、話し上手であることと、教える仕事で稼げることは、まったく別の能力です。
教える仕事の価値は、よどみなく話せるかではなく、相手のつまずきを的確に見抜いて、その人に合う一点を手渡せるかにあります。むしろ口下手な人のほうが、相手の表情をよく見て、ていねいに進める分だけ信頼されることも少なくありません。
「教える」は、大勢を前にすることだけではない
そもそも、教える仕事を「セミナー講師が壇上で大人数に話す姿」だけで思い描いていると、入口が一気に狭くなります。拙著『起業がうまくいった人は一年目に何をしたか?』では、商品の形には「モノを渡す」「やってあげる」「教えてあげる」「場や機会を提供する」の四つがあると整理しています。教える仕事も、この中ではいくつもの届け方に分かれます。
一対一の個別レッスン、少人数の勉強会、文章にまとめた教材、質問に答える形のサポート。大勢の前で話すのが苦手なら、まずは一対一や少人数の届け方を一つ選んでみてください。同じ「教える」でも、自分に合う形を選べば、苦手は表に出てきません。
経験がある人ほど、教える種を持っている
もう一つ安心してほしいのは、教える材料はすでにあなたの中にある、ということです。日本政策金融公庫の2024年度新規開業実態調査では、開業した人のうち、その事業に関連する仕事の経験がある人の割合は83.1%にのぼります。多くの人が、新しく身につけた何かではなく、これまでの仕事で積み上げた経験を元手に起業しているのです。
長く続けてきた仕事には、自分では当たり前すぎて気づかない知恵が必ず詰まっています。その「自分には当たり前」が、これから学ぶ人にとっては喉から手が出るほど欲しい情報になります。
話し上手な人と、選ばれる人の違い
起業18フォーラムにいた滝沢さん(仮名・50代前半・男性・品質管理職・子どもは独立済み)は、製造現場の品質改善を30年近く担ってきた方でした。教える仕事に挑戦したいものの、人前が苦手で、最初は話の上手な同業者と自分を比べては落ち込んでいたそうです。
独学で動画配信に挑戦した時期は、流暢に話す競合に見劣りして、再生数も伸びませんでした。流れが変わったのは、起業18フォーラムの勉強会で、他の会員が一対一の個別指導で着実に受講者を増やしている事例を知ったことでした。「自分も大勢の前で話さなくていいんだ」と腰を据え、会員間の個別相談で進め方を整えていきました。
滝沢さんが選んだのは、現場の若手向けに少人数で行う実地指導の形でした。仕事の繁忙期と重なって時間のやりくりには苦労したものの、話術ではなく「現場で本当に困る点を先回りして教えてくれる」という評判で、受講者が一人また一人と増えていきます。気づけば準備開始から15ヶ月で、延べ40名近くが彼の指導を受けるまでになっていました。派手な集客をしたわけではなく、受けた人が次の人に伝えてくれた積み重ねでした。
- 話の流暢さより、つまずきを見抜く力が選ばれる理由になる
- 一対一や少人数なら、人前の苦手は表に出にくい
- 受けた人の満足が、次の受講者を静かに連れてくる
大勢を前にすらすら話せることは、教える仕事の必須条件ではありません。まずは無料の体験会を一対一で一回だけ開いて、目の前の相手が「分かった」と表情を変える瞬間を確かめてみてください。

話すのが苦手なことを、あなたは引け目に感じているかもしれません。けれど、同じ立場から教える仕事を始めた方を何人も見てきましたが、その慎重さこそが、受講者にとっての安心になっていました。苦手の裏側に、あなたの強みが隠れています。
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