記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:
● 質問
子どもが独立して、週末に少し時間が持てるようになりました。何か始めたいのですが、自分に何が向いているのかがまるで分かりません。
向いていることが分からないまま起業準備を進めても、大丈夫なものでしょうか?

● 回答
向いていることを先に見つけてから始めようとしていませんか。実は、その順番こそが多くの人を足踏みさせている原因です。向き不向きは、動く前ではなく、動いたあとに分かってくるものだからです。
日本政策金融公庫の2024年度新規開業実態調査では、開業時の平均年齢は43.6歳で、40歳代が37.4%と最も多い層でした。40代は開業者の中で最も多い層で、いまから準備を始めるのは決して遅くありません。むしろ社会人歴が長いぶん、向き不向きを判断する材料を多く持っています。
「向いていること探し」が迷路になる理由
向いていることを頭の中だけで探そうとすると、答えはいつまでも出ません。なぜなら、人は自分が無理なくできていることほど、価値だと気づかないからです。これが何年もテーマが定まらない人に共通する落とし穴です。
私はこれまで多くの会社員の起業準備に向き合ってきましたが、向いていることが分からないと話す人の多くは、すでに身近な人の役に立っていました。向いていることは探して見つけるものではなく、過去にやってきたことの中から思い出すものです。探す対象が外ではなく内にあると気づくだけで、迷路から抜け出せます。
手がかりは「好きで、続けられること」に絞る
拙著『朝晩30分 好きなことで起業する』では、起業をするのに性格の向き不向きは特になく、好きなことや強みがビジネスになっていくと紹介しています。本書では、儲かるからでも楽だからでもなく、ただ好きであることを唯一の条件にすえると整理しています。
これまでお金を払ってでも続けてきた趣味や、人から相談されると嬉しい話題を思い返してみましょう。週末に1時間だけ、これまで続いた習いごとや趣味を時系列で紙に書き出してみてください。続いたものには、必ず自分なりの「好き」が隠れています。
選ぶときの軸は、儲かりそうかではなく続けられそうかに置きます。儲かりそうかではなく、続けられそうかで選んだ人ほど、最初の壁を越えていきます。好きという感情は、結果がすぐ出ない時期を支える燃料になります。
会員さんの実例:子が独立した笠原さん
起業18フォーラム会員の笠原さん(仮名・40代後半・保険会社の事務職・夫婦ふたり暮らし)は、最初「事務しかやってこなかった自分に、向いていることなんてない」と話していました。週末に資格の勉強を試しては、何のためにやっているのか分からなくなって、3ヶ月ほど迷走していたそうです。
転機は、ある週末にこれまでの自分を紙に書き出してみたことでした。職場でも親戚の集まりでも、家計や保険の相談を自然に受けてきたと自分で気づき、笠原さんは家計の見直し相談に的を絞りました。週末にオンラインで一件30分の相談を受けるところから始めたのです。
半年で口コミから依頼が増え、12ヶ月目には勤めながら月6万円ほどになりました。今週末、これまで人から自然に相談されてきたことを3つ書き出し、その中で自分も話していて楽しいものに丸をつけてみてください。向いていることは、その丸の中にあります。

向いていることが分からないのは、まだ動いていないからにすぎません。小さく試した先で、自分でも忘れていた強みに出会えるはずです。
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