記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:
● 質問
働きすぎて体調を崩し、いまは休職中です。療養しながら今後を考えるうちに、復職してまた同じ働き方に戻るのが怖くなってきました。いつか自分のペースで働けるように、起業の準備を少しずつ始めてみたいと思っています。
とはいえ、まだ本調子ではありませんし、また無理をして潰れるのも避けたいです。回復を最優先にしながら、体に負担をかけずに起業準備を始める進め方はありますか?

● 回答
まず、起業準備よりも回復を先に置いてください。体調を取り戻すことそのものが、いまのあなたにとって最初の準備です。そのうえで、もし気持ちが少し動く日があれば、一日5分から手を動かせる「低負荷の準備」だけを選ぶ。この順番を守れば、療養と準備は両立できます。
休職をきっかけに働き方を見直したいという相談は、これまで何度も受けてきました。共通しているのは、まじめで頑張れてしまう方ほど、回復しきる前に全力で準備に飛び込み、また息切れしてしまう点です。だからこそ、最初に決めるのは「やること」ではなく「やりすぎない仕組み」のほうなのです。
頑張りすぎると、続かない
拙著『会社で働きながら6カ月で起業する』に「頑張りすぎると、続かない」という考え方を紹介しています。起業準備はやる気が満ちた数週間で終わるものではなく、年単位で細く長く続けるものです。最初に飛ばしすぎた人ほど、途中で力尽きて止まってしまいます。
これは、体調を整えながら進めたいあなたにこそ当てはまります。準備の総量を増やすより、続けられる小ささに削るほうが、結果として遠くまで進めます。「今日は調子が悪いから何もしない」という日があってもいい。むしろ、休む日をあらかじめ織り込んでおくことが、低負荷の準備設計そのものです。
- 回復しきる前に、一日何時間も準備に充ててしまう
- 「早く形にしなければ」と締め切りを自分で設けてしまう
- 体調の波を無視して、毎日同じ量をこなそうとする
この3つは、休職中に準備を始めた方がはまりやすい落とし穴です。どれも、会社で求められていた「常に一定の成果を出す」働き方を、そのまま準備に持ち込んでしまっています。会社の物差しをいったん手放し、その日の自分に合わせて量を変えていい、と先に許可を出しておきましょう。
一日5分から始められる、低負荷の準備
では、体に負担をかけずに始められる準備とは具体的に何でしょうか。私がお伝えしているのは、机に向かわなくてもできる、次のような小さな作業です。
- 気持ちが動いた瞬間をメモする:
読んでいて引き込まれた記事や、人に頼まれてうれしかったことを一行だけ書き留める - これまでの経験を棚卸しする:
仕事で人から相談されたこと、得意で苦にならなかった作業を思い出して並べてみる - 休む日を先に決めておく:
体調の悪い日は何もしないと決め、それを準備の「失敗」と捉えない
どれも、調子のいい日に数分だけ取り組めば十分です。準備の入口は、商品を作ることでも集客でもなく、自分が無理なく続けられるテーマを見つけることにあります。体力が戻ってきてから、そのテーマを小さく試す段階へ進めばいいのです。焦って先の工程に飛ばないことが、遠回りに見えて一番の近道になります。
回復を物差しにして、量を決める
進めるペースは、カレンダーではなく自分の回復具合で決めてください。今週は調子がいいから少し増やす、今週は波が来ているから止める。この調整を自分に許せるかどうかが、無理なく続けられるかの分かれ目です。
体調が思わしくない日は準備を完全に休み、それを後ろめたく思わないと、あらかじめ自分に約束しておいてください。休むことを準備計画の一部として最初に組み込んでおけば、波が来ても計画そのものは崩れません。なお、療養の進め方や復職の判断は、主治医や産業医など専門家とよく相談しながら決めるのが安心です。準備はあくまで、その回復の歩みに添える形で進めましょう。
たとえば、起業18フォーラム会員の城島さん(仮名・40代後半・IT企業のシステム保守職)も、過労で体調を崩して休職したことが相談のきっかけでした。最初は早く復職の道筋を立てたい一心で、休職中に毎日何時間も独学で資格の勉強や事業計画づくりに打ち込んでいたそうです。
けれども自己流で詰め込んだ結果、かえって眠れなくなり、準備も療養も中途半端なまま空回りしていました。やる気はあるのに体がついてこない状態が、しばらく続いたのです。
転機は、起業18フォーラムの勉強会で「頑張りすぎると、続かない」という考え方に触れたことでした。城島さんは計画を組み直し、準備を一日5分のメモだけに削りました。調子の悪い日は迷わず休み、回復が進んだ月だけ少しずつ作業を増やしていったのです。
半年ほどかけて体調が安定してくると、長年の保守業務で身につけた「困りごとを順序立てて整理する力」を生かせると気づきました。現在は復職したうえで、勤めを続けながら個人向けにパソコンの困りごと相談を小さく請け負い、月に数万円の手応えを得ています。
自己流のまま走り続けていたら、回復も準備も遠のいていたかもしれません。今日は、調子のいい時間に「最近うれしかったこと」をひとつだけメモしてみてください。無理なく続けられる起業準備は、その小さな一行から静かに始まります。

準備の速さで自分を測らないでください。いまは、回復という一番大事な準備を進めている最中です。
体が戻る速さに合わせて、できる日にできる分だけ。そのくらいの歩幅が、あなたには一番ちょうどいいはずです。
よくある質問

Q.休職中に起業準備を始めると、会社に問題視されませんか?
- 就業規則や休職制度の条件を、まず人事に確認
- 療養に専念すべき期間は、収入を伴う活動を避ける
- 準備として無理のない範囲は、棚卸しやメモなど無報酬の作業に限る
休職中の活動は会社の制度や復職条件にかかわります。気持ちの整理や経験の棚卸しといった負担の軽い作業にとどめ、収入を得る段階に進む前には、就業規則を確認して職場とのトラブルを避けてください。
Q.働き方を見直して起業する人は、実際に多いのでしょうか?
- 開業動機の最多は「自由に仕事がしたかった」で56.9%
- 「自分のペースで働きたい」層は決して少数ではない
- 収入よりも働き方の自由を重視する流れがある
日本政策金融公庫総合研究所の「2024年度新規開業実態調査」では、開業動機として「自由に仕事がしたかった」が56.9%で最も多く、「収入を増やしたかった」の45.1%を上回りました。働き方そのものを変えたくて起業を選ぶ人は、あなたが思うより多いのです。
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