記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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● 質問
起業に向けてやりたいことを書き出してみたら、候補がいくつも出てきて、逆にどれを選べばいいのか分からなくなりました。どれも中途半端な気がして決めきれません。たくさんある中から一つに絞るには、何を基準にすればいいのでしょうか?

● 回答
「やりたいことが多すぎて選べない」という悩みは、何もない状態よりずっと良い場所にいます。ただ、その絞り方には、多くの方が引っかかる思い込みがあります。
「一番やりたいこと」を選ぼうとすると決まらない
候補を一つに絞れない方の多くは、「この中で一番好きなのはどれか」「一番情熱を持てるのはどれか」という基準で選ぼうとしています。実はこの基準こそが、決められなくなる原因です。
気持ちの強さは日によって揺れますし、どれも同じくらい好きに思えるのが普通です。選べないのは決断力がないからではなく、選ぶ物差しが「好きの大きさ」になっているからなのです。そもそも、最初の一つは「一番やりたいこと」である必要がありません。
起業の動機について、中小企業庁の2024年版小規模企業白書では、「社会の役に立ちたい」と答えた人が7割を超えて最も多いという調査結果が紹介されています。多くの人の出発点は、強烈な情熱というより「誰かの役に立てそうだ」という手応えのほうにあるわけです。だとすれば、絞る基準も気持ちの強さからずらしたほうが、現実に合っています。
好きの大きさではなく、続けられるかで選ぶ
では、何を基準にするか。拙著『起業がうまくいった人は一年目に何をしたか?』に、起業ネタを判断する「3つのチェック」という考え方が出てきます。
- 一人で始められるか
- 一人で続けられるか
- 大きなお金がかからないか
候補を全部この3つに通してみると、不思議なほど数が減ります。「好き」では同点だった候補も、「一人で続けられるか」で見ると差がはっきり出るからです。誰かと組まないと回らないもの、毎月まとまったお金が出ていくものは、最初の一つとしては脇に置きます。残ったものの中から、自分の本業の経験に一番近いものを選ぶと、立ち上がりが早くなります。
今ある候補を、まず「一人で始められて・一人で続けられて・お金がかからないか」の3つに通してみてください。
- 「どれが一番好きか」だけで選ぼうとして決まらない
- 全部を同時に少しずつ進めて、どれも前に進まない
- 選んだ一つを「一生やる仕事」だと重く考えすぎる
最初に選ぶ一つは、試験的な一歩です。やってみて違えば、残した候補に戻ればいいだけのことです。
今週末、絞り込んだ一つを、知り合い一人に声に出して説明してみてください。そこで言葉に詰まらなければ、その候補は十分に形になっています。
五つの候補を一つに絞れた例
起業18フォーラムの会員に、Sさん(40代前半・部品メーカー勤務・夫婦二人暮らし)という方がいます。仕事への漠然とした行き詰まりから起業を考え始め、やりたいことを書き出したら、講師業・物販・写真・カウンセリング・地域イベントと五つも候補が出てきて、半年ほど一つに決められずにいました。
勉強会で先ほどの3つのチェックに全部を通したところ、写真と地域イベントは「一人で続けるのが難しい」、物販は「在庫のお金がかかる」と引っかかり、残ったのは講師業とカウンセリングの二つでした。最後は、本業のメーカーで毎日やっていた「新人への手順説明」に一番近い講師業を選んだそうです。
知り合い向けの無料勉強会から始め、反応を見ながら少しずつ形を整え、今では月に数回の有料講座を本業と並行して開けるところまで来ています。「全部やろうとしていたときが一番動けなかった」と振り返っていました。
選べないときは、好きの大きさで比べるのをやめて、続けられるかで比べてみる。基準を一つ変えるだけで、候補は驚くほど絞れていきます。

候補がたくさんあるのは、それだけあなたの中に種があるということです。全部を抱えたまま止まるより、まず一つを通してみる、と思えれば、もう半分は進んでいます。
今日選ぶ基準は、完璧な正解ではなく、続けて確かめられる小さな一つで十分です。
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