記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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● 質問
50代前半の会社員です。「60代から起業すればいい」と思って先送りしてきましたが、最近、退職金や年金だけで老後を過ごせるのか心配になってきました。定年後ではなく、今やっておくべきことがあれば教えてください。

● 回答
厚生労働省委託事業の高齢者就業状況等資料では、2024年の60代前半の就業率は男性84.0%・女性65.0%、60代後半でも男性62.8%・女性44.7%という数字が示されています。60代も働く時代になっていますが、現役のうちに何も検証していない方が、退職後に新しい事業を立ち上げて軌道に乗せるのは現実的に難しいのが実感です。
退職後に賭ける方と50代で動く方の決定的な差
同資料には、70歳までの高年齢者就業確保措置を実施済みの企業が31.9%、創業支援等措置を導入している企業は0.1%という記述があります。つまり、会社側が起業準備まで整えてくれる仕組みはほぼ存在しません。退職後に「これから何をしようか」と動き始めると、時間は確かに増えますが、信用、体力、家計の余白が同時に増えるわけではないという現実があります。
50代のうちに動く方は、本業で得た判断経験、人脈、社内信用、固定収入という4つの土台を持ったまま試行錯誤できます。週末の3時間で月1件の壁打ちを始めても、本業の収入が落ちる心配はありません。この「失敗できる余白」を持っているうちに小さな検証を回せるかが、定年後の景色を分けます。
50代会社員の武器を商品に変える順序
拙著『リスクゼロで小さく起業 会社を辞めずに「あと5万円!」稼ぐ』に「会社員が持っているのは資格ではなく、毎週判断してきた経験そのもの」という考え方があります。新人教育で何度も話してきた段取り、クレーム対応で身に付いた言葉の選び方、部門間調整で見つけた落としどころ。これらはすべて、50代会社員ならではの商品候補です。
- 1時間壁打ち:
新人教育や面談で培った「相手の話を引き出す技術」を、後輩世代の起業相談に向ける - チェックシート販売:
クレーム対応や段取り改善で何度も使ってきた判断軸を、Excel1枚にまとめる - 面談台本作成:
管理職として行った人事面談の構造を、中小企業の経営者向けに整える - 改善レビュー業務:
業務改善メモのコピーを匿名加工し、業界外の方に向けて添削する
どれも、本業を続けながら週末の3時間で試せる規模です。最初の月に3件の問い合わせが入れば、自分の経験が外部の方にいくらで届くのかが見えてきます。50代の武器は「資格ゼロでも社内で22年判断してきた」という事実そのものです。今夜、社内で何度も頼まれてきた仕事を1つだけメモに書き出してください。
退職金と年金だけに賭ける危険
退職金は一度きりの原資で、起業の初期投資に大きく充ててしまうと、運転資金が想定より早く尽きる事例が起業18フォーラムには定期的に届きます。日本政策金融公庫総合研究所「2025年度新規開業実態調査」では、開業費用の平均値は975万円、中央値は600万円という数字が示されていますが、これは「店舗・設備が必要な事業」も含めた数字です。
現職のうちに小さく始めれば、初期投資は数万円のレベルで十分に検証できます。
退職してから「何を売るか」を考える順序ではなく、本業を続けながら売れる感触をつかんでから退職を検討する順序が、家計の安全性も高めます。給与収入があるうちに毎月小さく試して、定年の頃には「すでに月数万円の収入軸が2本ある」状態を作っておく。これが現実的なシニア起業の入り口です。
60代起業は、60代から始める話ではなく、50代で小さく検証する話です。今週末の3時間だけ、退職後ではなく今やる「経験の小分け販売」を1つ書き出してください。それが定年後の風景を、不安からの再出発ではなく、続きから始める日常に変えてくれます。
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