起業準備の最初の1歩は事業計画書ではなく無料相談1件の受付から

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

起業準備を始めて半年、1年と経っても、ノートに書く言葉ばかり増えていく。本を読み、セミナーに通い、講座に申し込むほど、「やる気はある」「準備はしている」のに、肝心の1人目の顧客は影も形も見えない。起業18フォーラムには、こうした「準備が止まる方」からの相談が毎月のように届きます。

準備しているのに進まない人は、勉強が足りないのではありません。自分が今すぐ申し込まれる小さな売り場を持っていないだけです。今日は、その「最初に作る売り場」の組み立て方を、順番に見ていきます。

ポイント 準備の量と顧客の数は比例しません

準備量と顧客数の不一致は構造的に起こる

男性

日本政策金融公庫総合研究所が2026年2月に発表した「2025年度起業と起業意識に関する調査」では、起業関心層が「まだ起業していない理由」のトップ3は、「自己資金が不足している」48.4%、「失敗したときのリスクが大きい」29.1%、「ビジネスのアイデアが思いつかない」29.0%という結果です。

在職中の会社の方は、リスクを下げる手段として「もっと勉強してから」「もっと準備が整ってから」を選びがちなのが現状です。

ところが、勉強と顧客の出会いは別の話です。事業計画書がどれだけ整っても、それを読んでお金を払ってくれる人は出てきません。顧客はあなたの計画書ではなく、目の前に差し出された小さなサービスに反応します

ポイント 準備が止まる人に共通する3つのパターン

学習過剰に陥る会社員の典型パターン

50代

26年間で約60,000人の方の起業相談を受けてきた中で、準備段階で止まる会社員には共通点があります。順番に見ていきましょう。

準備が止まる人の典型パターン

  • 正解探しの繰り返し:
    本を10冊読み、講座を5本受講しても、自分の答えが出てこないので次の本へ向かう
  • 完璧な事業計画の追求:
    収支シミュレーションを何度も書き直すが、誰にも見せていない
  • SNS発信の準備止まり:
    プロフィール設計と投稿計画ばかり練り直して、最初の投稿に手が届かない

共通するのは、「人に見せる前にもう少し整えたい」という気持ちが、整えるための時間をどんどん引き延ばしていることです。整えれば整えるほど、最初の有料提案を切り出す勇気が遠ざかっていきます。

ポイント 小さな売り場とは何か

受付窓口の最小単位として持てる形

歯科衛生士

ここで言う「小さな売り場」とは、店舗や立派なサイトのことではありません。あなたの提供できることを、その場で受け付けられる最小の窓口を指します。具体的には次のような形です。

会社員が今日から作れる売り場の例

  • 無料の30分相談を受け付けるGoogleフォーム1枚
  • 1回3,000円の単発診断を受け付けるココナラの出品ページ
  • 過去の業務知見をまとめたチェックリスト販売(noteの有料記事)
  • 社内で頼まれてきた仕事を外部向けに整理した一覧(A4一枚)

大切なのは、「これを試してみたい」と思った人が、その場で連絡を取れる経路があること。整っていなくていい。完成度ではなく、申し込める入口があるかどうかが分かれ目です。

ポイント 会員さんの体験:4ヶ月で停滞を抜けた佐久間さんの場合

停滞期から最初の受注への切り替わり

女性

起業18フォーラム会員の佐久間さん(仮名・40代後半・男性・大手メーカー営業企画・妻と高校生の子2人)の話をご紹介します。会社員月収は手取り38万円。在職のまま起業準備を始めて半年が経った時点で、会社の外での収入は0円のままでした。

佐久間さんが最初の半年でやっていたのは、起業本の読破、財務会計講座への通学、事業計画書のフォーマット集め。家族からは「やる気はわかったから、いつ始めるの?」と聞かれるたびに「準備中」と答え続けていました。転機が訪れたのは7ヶ月目の勉強会で、「過去に社内で頼まれた仕事をA4一枚にまとめて、知人3人に送ってみる」という宿題が出たときです。

11ヶ月目には知人経由で最初の有料相談(5,000円・60分)を受注。13ヶ月目には継続クライアント2社・月収4万円。現在は18ヶ月目で月収11万円、本業に在職継続中です。佐久間さんが振り返るのは「準備の9割は不要だった。最初に必要だったのは、A4一枚と送る勇気だけだった」という一言でした。

ポイント 最初の売り場を作る4つのステップ

今夜から動ける具体的な手順

拙著『会社で働きながら6カ月で起業する』に「準備とは申し込まれる状態を作ること」という考え方があります。これを実際の手順に落とすと、次の4段階になります。

今週末から始める4ステップ

  1. 提供メニューを1つ選ぶ:
    30分相談・診断・チェックリスト送付など、自分が今夜できる最小のサービスを1つに絞る
  2. A4一枚で説明文を作る:
    誰に・何を・いくらで・どう申し込むか、を箇条書きで埋める
  3. 受付経路を1つ用意する:
    Googleフォーム・ココナラ出品・LINE公式アカウントなど、申し込みを受け取る場所をひとつ作る
  4. 知人3人に送る:
    SNSの広い発信は後回しでよい。まず信頼関係のある3人に「こういうの始めました」と伝える

4つとも、今日から週末までに終わる作業です。1日30分の朝活時間があれば、土曜日には受付フォームのURLが手元にあります。

ポイント 家族・会社との両立で気をつけたいこと

在職のまま守るべき境界線の整理

アイデア

本業を続けながら起業準備をする場合、次の4つは小さな売り場を始める前に整理しておきます。

事前に決めておく4つの境界線

  • 就業規則の兼業規定(届出制か承認制か)の確認
  • 本業に支障を出さない作業時間帯(夜21時以降・土日午前など)の固定
  • 守秘義務との切り分け(社内案件を題材にしない)
  • 家族との会話時間を削らない週次の予定組み

家族には「会社は辞めません。本業を続けながら月数万円の収入軸を作る練習を始めます」と先に伝えておくと、後から説明を増やす負担が減ります。

ポイント まとめ|準備のゴールは申し込まれる状態を持つこと

1週間後に手元へ届く到達点

在宅

起業準備が止まる原因は、知識不足でも才能不足でもありません。「申し込まれる入口を、まだ世の中に出していない」というたった1点です。完璧な事業計画よりも、A4一枚の説明文と、Googleフォーム1枚のほうが、最初の1人を連れてきてくれます。

今夜の30分で、提供メニューを1つだけ決めてみてください。明日の30分で説明文を書く。明後日に受付経路を準備する。週末に知人3人へ送る。これだけで、今週末のあなたの起業準備は「申し込まれる状態」に到達します。

準備量と顧客数は比例しません。小さくても申し込まれる状態を持っている人だけが、半年後に最初の手応えを手にしています。今日のあなたの30分は、本を1冊読むより、Googleフォームを1枚作るほうに使ってください。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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