作業療法士の独立は何から始める?|現場経験を商品の輪郭に変える順番

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

「病院勤務を続けながら、いずれは独立も視野に入れたい」。作業療法士(OT)として10年前後のキャリアを重ねたかたからの相談が、ここ数年で目に見えて増えました。担当する患者さんの暮らしに近い距離で関われるOTという仕事は、現場経験そのものが起業準備の素材になります。

ただし、現場経験を「自分のサービス」に翻訳する順番が組めていないと、勢いで開業して半年で疲れてしまう例も少なくありません。本記事では、作業療法士が在職のまま起業準備を始める場合の現実的な道筋と、振り分ける3つの軸を整理します。

ポイント 作業療法士が起業準備で見ておきたい全体像

現場経験を商品の輪郭へ変えていく整理視点

作業療法士

在宅医療や地域包括ケアの広がりにより、作業療法士の活躍領域は病院の中だけに限られなくなっています。厚生労働省の職業情報提供サイトjob tagでも、作業療法士は病院だけでなく訪問介護の場で患者さんから直接ヒアリングして支援する仕事として整理されています。

病院勤務を続けながら準備する人にとって、独立のチャンスは「現場で見えてきた患者さんの困りごと」をどれだけ言葉にできているかに集約されます。制度や開業の手続きより、現場経験の言語化が先になります。

拙著『起業がうまくいった人は一年目に何をしたか?』にも書いたのですが、商品はかならず4つの形――自分で作って届けるか、代わりにやるか、伝えるか、集まる場を設けるか――のどれかに当てはまる、という整理があります。作業療法士の現場経験は、この4つすべてに展開できる珍しい職種です。だからこそ、最初の半年で「どの引き出しを軸にするか」を決めると、その後の動きが安定します。

ポイント 振り分ける3つの軸

訪問・教育・物販に分けて強みの軸を考える

理学療法士

作業療法士の起業準備で現実的な選択肢は、大きく次の3つに振り分けられます。

  • 訪問軸:自費の訪問リハ・生活コーチ・自宅環境調整など、患者さん側に出向いて支える形
  • 教育軸:同職種の若手指導・家族向け介護講座・他職種向け勉強会など、知識を渡す形
  • 物販軸:自助具・福祉用具・補助グッズの選定支援や紹介など、モノを通じて関わる形

この3軸のうち、最初から2軸以上を同時に走らせる人は消耗しやすいです。最初の半年は1軸だけに絞り、現場での仮説検証を10件ほど積み上げてから次の軸に進む順番が、勤めながら続ける現実的な進め方になります。軸を絞ることで、平日の昼休みに患者さんと交わす会話の質も変わってきます。

ポイント 在職のまま積み上げる3つの行動

病院勤務と起業準備を地続きで回す動線設計

作業療法士

続いている方の共通点は、病院勤務と起業準備を切り離さず、地続きの動線として扱っていることでした。

  • 毎日の終わりに「今日の患者さんから出た言葉」を2つだけメモする:商品の素材になる
  • 週1回30分、メモを読み返して類似テーマを束ねる:軸の輪郭が見える
  • 月1回、外部勉強会か小さな発信枠を1つだけ持つ:在職のままでも外側に出口を作る

この3つを半年回すと、自分の中で「自分のOTとしての強みはこのテーマで効いている」という核が見えてきて、その核に対して訪問・教育・物販のどの軸を当てるかが自然と決まるはずです。最初から軸を決めるのではなく、核が見えてから軸が決まる、という順番になります。

ポイント 会員さんの事例

手探りの準備から立て直したOTの実例

作業療法士

会員さんの矢萩さん(仮名・37歳・既婚・小学生の子2人・回復期病院勤務14年目)は、勤続10年目に「自費の訪問リハで独立したい」と考え、見様見真似で名刺と料金表だけ作って準備を始めました。最初の半年は知人に告知しても問い合わせがほぼ来ず、消耗してしまったそうです。

起業18フォーラムの勉強会で「核が見えてから軸が決まる」順番を学び直し、まずは毎日の患者さんの言葉を2つメモする習慣から組み直しました。3ヶ月たつ頃には「退院後に自宅で食事ができるようになりたい」という困りごとが束として見え、矢萩さんは訪問軸の中でも食事自立に絞ったサービスを設計したそうです。

準備11ヶ月目で初めての自費契約が成立し、22ヶ月目には月12万円の継続収入になりました。現在も病院勤務を続けながら、土日と平日の朝に訪問対応を組み込む形で運営しているとのことです。名刺を作る前に、患者さんの言葉を200個メモするほうが、独立後の動きが早く落ち着く、というのが矢萩さんの実感でした。

ポイント 作業療法士が止まりやすい3つの落とし穴

勢いで進めず地続きで組み立てる落とし穴対策

作業療法士

独立準備で止まりやすいパターンには、職種特有の落とし穴があります。

  • 制度を先に勉強しすぎる:開業届や保険適用の話より、現場の言葉が先
  • SNSで「私もOT独立しました」を量産する人を追う:自分の核が薄いまま型だけ真似てしまう
  • 退職時期を最初から決める:核が見えていない段階で日付を切ると、半年で焦りが噴き出す

在職のまま準備する時間は、コストではなく投資です。半年で見える景色と18ヶ月で見える景色は、まったく違うものになります。急がず、患者さんの言葉から組み立てていってください。

理学療法士が起業する始め方手順|保険外で収入を育てる在職中からの4ステップ
理学療法士(PT)として病院や施設で働きながら、「このキャリアを外でも活かせないか」と考える人が増えています。

作業療法士の現場経験は、独立後のサービスの土台です。今日の業務終わりに、患者さんから出た言葉を2つだけメモすることから始めてみてください。その小さなメモの束が、いつかサービスの核になります。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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