記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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● 質問
育休中で、復帰までに少し時間があります。実は今の仕事(SaaSのカスタマーサポート)にそこまで未練がなく、もっと自分が好きなことで、いつか起業できたらと考えています。
育休のあいだに、未経験の好きな分野を一から学んで起業準備を始めても大丈夫でしょうか。それとも、今の経験を活かすほうがいいのでしょうか?

● 回答
以前、起業18フォーラムにいたMさん(仮名・30代後半・IT企業でカスタマーサポートを担当・未就学のお子さんが一人)も、育休中にまったく同じ迷いを抱えていました。
Mさんが最初に選んだのは、まさに「未経験の好きなこと」のほうでした。学生のころから手芸が好きで、ハンドメイドのアクセサリー作りを一から学び直し、育休の時間を使って販売を始めたのです。けれど半年たっても売れたのは数点で、手元に残ったのは増えた材料費の領収書だけでした。
Mさんは決して怠けていたわけではありません。むしろ熱心でした。問題は努力の量ではなく、選んだ入口にありました。育休という限られた時間で「未経験ルート」と「経験ルート」のどちらを選ぶかは、最初に分けて考えておく価値があります。
未経験の「好きなこと」ルートで起きやすいこと
未経験の分野で起業を目指すと、本来の準備とは別に「学習」「実績づくり」「信用づくり」の3つを同時にゼロから積む必要が出てきます。育休の時間は思ったより細切れで、ここに学習がまるごと乗ると、最初の一人に届く前に復帰の日が来てしまいます。
働き方のデータにも、似た傾向が表れています。マイナビが2025年に発表した「フリーランスの意識・就業実態調査」では、本業を持ちながらフリーランスとして働く人の仕事は、「本職と異なる業務」が58.5%で、「本職と同じ業務」の31.9%を上回っていました。
多くの人が、つい今の経験と離れた分野を選びます。けれど、入口として人気のある分野と、無理なく続けやすい分野は、必ずしも一致しません。育休のような限られた時間では、この差が結果を大きく分けます。
- 準備に加えて、未知の分野の学習がまるごと積み上がる
- 実績ゼロのため、最初の一人に信用してもらう材料が乏しい
- 「もっと学んでから」と感じやすく、出すタイミングが遅れる
これは「好きなことで起業してはいけない」という話ではありません。好きなことは、続ける力の源になります。ただ、育休という時間の枠のなかでは、好きなことを「最初の商品」にするより「育てていく方向」に置くほうが、現実的に進みやすいのです。
経験を「商品の形」に変える4つの問い
では、今の経験をどう起業の入口にするか。拙著『起業がうまくいった人は一年目に何をしたか?』に、「商品の4つのカタチ」という整理を書いています。同じ経験でも、届け方を変えると別の商品になる、という考え方です。
- モノを渡す:手順書やテンプレートなど、形にして届ける
- やってあげる:相手の代わりに作業を引き受ける
- 教えてあげる:やり方を伝えて、相手ができるようにする
- 場・機会をつくる:同じ悩みの人が集まれる場を用意する
Mさんの転機も、ここにありました。勉強会で自分の仕事を振り返り、「新しく導入したツールの使い方が分からず困っている人に、最初の設定を伴走してきた」経験が、何百回もくり返してきたものだと気づいたのです。Mさんはそれを「教えてあげる」の形に置き換え、ツール導入時のオンボーディング支援という小さなサービスにしました。
大切なのは、入口の選び方です。育休という限られた時間では、ゼロから学び直すより、すでに自分の中にある経験を商品の形に変えるほうが、最初の一人にたどり着くまでの距離がずっと短くなります。
進め方は、難しく考えなくて大丈夫です。今日、ノートを開いて、これまでの仕事で人から何度も頼まれたことを10個書き出してみてください。書き出せたら、その一つひとつを上の4つの形のどれに置けるか、ゆっくり並べてみます。
Mさんは復帰後3ヶ月目に知人の紹介で最初のモニターを引き受け、12ヶ月目には会社員を続けながら月8万円ほどの継続収入になりました。好きだった手芸は、今は収入と切り離して、純粋に楽しむ時間として続けています。あなたも、好きなことは「いつか育てる楽しみ」として残し、最初の商品は経験のほうから選んでみてください。

未経験の好きなことと、今の経験。どちらが正しいという話ではありません。ただ、育休という時間は有限です。その時間を学び直しに使うか、すでに持っているものを形にすることに使うか、決めた人から静かに前へ進んでいきます。あなたがこれまで何度も頼まれてきたことは何か。そこから一度、たどってみてくださいね。
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