記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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二重カルデラの島影、地熱の蒸気が立ちのぼる「ひんぎゃ」、満天の星。青ヶ島の写真や映像を見て、いつかこの島で暮らしながら自分の仕事を持ちたいと感じた方は少なくないと思います。今の働き方に少し疲れて、もっと小さく、もっと自分らしい場所で生きていきたい。そう考えたとき、青ヶ島という選択肢は強い磁力を持っています。
ただ、憧れと現実のあいだには距離があります。青ヶ島は人口161人(2024年10月現在)。日本でいちばん人口の少ない自治体です。空き家はほとんどなく、住む場所の確保からして簡単ではありません。この記事は移住をあおるためのものではなく、青ヶ島での起業を考える方が、足元を見ながら準備を進めるための整理です。
青ヶ島で起業を考える前に、現実から組み立てる

青ヶ島は伊豆諸島の最南端にある二重カルデラの島で、面積は約6平方キロメートルしかありません。人口は161人(2024年10月現在)で、これは日本でいちばん人口の少ない自治体です。小さな島だからこそ、起業を考えるなら最初に現実を正しく知っておくことが、遠回りを防ぐ近道になります。総務省統計局の国勢調査をたどると、青ヶ島のような小さな離島は長い年月をかけて人口が減ってきたことがわかります。
青ヶ島で起業を考える前に知っておきたい現実

まずアクセスです。青ヶ島へは八丈島を経由します。八丈島からはヘリコプター「東京愛らんどシャトル」で約20分、または定期連絡船「くろしお丸」で約3時間です。
くろしお丸は週4〜5日の運航で、海況によって就航率は50〜60%にとどまります。予定どおりに島へ渡れない日がある、という前提で計画を立てる必要があります。
次に住まいです。青ヶ島は空き家がほとんどなく、村営住宅も空きが少ない状態が続いています。「島が気に入ったから、すぐに移り住もう」と考えても、住む場所がないという壁にぶつかりやすいのが現実です。産業は農業と漁業が中心で、特産は地熱の蒸気で海水を煮詰める「ひんぎゃの塩」や焼酎「青酎」。商店は島に1軒のみです。
青ヶ島の移住・暮らしを支える情報

厳しい面ばかりではありません。青ヶ島には移住や暮らしを後押しする仕組みがいくつかあります。知っておきたい情報として整理しておきます。
- 空き家を改修するときの費用の一部を助成する制度がある
- 子育て世帯向けの児童手当などの支援がある
- 地域おこし協力隊として島に関わりながら暮らす道がある
- 2020年3月に光回線が開通し、ネット環境が整っている
2020年3月の光回線開通は、青ヶ島での働き方を大きく広げた出来事です。島にいながら島外の仕事を続けたり、情報発信をしたりすることが、技術的には可能になりました。最近はシェアハウスもでき、移住者の受け入れは少しずつ進んでいます。こうした制度や環境の最新の状況は、青ヶ島村の移住相談の窓口で確認できます。
青ヶ島で会社員が現実に考えられる起業

では、青ヶ島で会社員が現実に取れる起業の形を考えてみます。大きく分けて、島の資源を活かす方向と、場所に縛られない仕事を続ける方向の2つがあります。
島の資源を活かす方向
青ヶ島には、ひんぎゃの塩や青酎といった、ここでしか生まれない価値があります。こうした特産品の魅力を島の外へ伝える、宿や体験を小さく整える、星空や火山地形を案内する。島の資源と来訪者をつなぐ役割には、まだ余白があります。
場所に縛られない仕事を続ける方向
光回線が通ったことで、文章を書く、デザインをする、オンラインで相談に乗るといった仕事は、島にいても続けられます。
実際に青ヶ島では、青ヶ島で生まれ育った佐々木加絵さんが「青ヶ島ちゃんねる」というYouTubeチャンネルを運営し、島の暮らしを発信しています。佐々木さんは15歳で進学を機に島を離れ、約20年間東京で暮らしたのち、2019年に青ヶ島へ戻りました。動画の発信に加えて、グラフィックデザインの仕事や実家の民泊の手伝いも行っていると各メディアで紹介されており、一つの仕事に絞らず島でできることを組み合わせていく働き方の一例といえます。
ただ、ここで強くお伝えしたいのは、いきなり移住するのではなく、東京と青ヶ島の二拠点で関係人口として関わり始める形が、最も現実的だということです。住まいの確保が難しい青ヶ島では、すぐに生活基盤を移そうとすると準備が破綻しやすくなります。まず外に拠点を残したまま島に通い、関係を育てながらお試し移住で暮らしを確かめる。この段階を踏むことが、遠回りのようでいて確実な進み方です。
起業準備で陥りやすいパターン

人口の極端に少ない島で起業準備をする人には、よく似たつまずき方が見られます。特定の誰かの話ではなく、起こりやすいパターンとして共有します。
多くの場合、憧れが先に立って、起業の方向性が固まらないまま移住を決めてしまいます。島に着いてから「何で食べていくか」を考え始めると、住まい探しと生活の立ち上げに追われ、肝心の事業設計が止まってしまいます。そして自己流で動いた結果、うまくいかずに島を離れる。これが典型的な流れです。
青ヶ島のように人口の少ない島では、起業準備に動く方は30代から50代までと幅があり、収入は月10万円に届くかどうかから始まることが多く、月20万円規模はその先の目標として考えるのが現実的です。
うまく軌道に乗る人は順序が逆です。先に島の外で起業の基礎と全体像を学び、自分の方向性を固める。固まった構想を持って島に通い、関係をつくりながら少しずつ持ち込んでいきます。移住の判断より先に、外で起業の土台をつくることを準備の出発点に置いてください。
青ヶ島起業の進め方

最後に、青ヶ島での起業を考える方に向けて、進め方の順序を整理します。
- まず起業18フォーラムの動画・セミナーで起業の基礎と全体像を学び、方向性を固める
- 方向性が固まったら、青ヶ島村の移住相談や支援制度を確認する
- 関係人口・二拠点の関わりから段階的に始める
- いきなり移住せず、お試し移住も選択肢に入れる
順番を守ることが大切です。起業の方向性が固まる前に移住の段取りを進めないでください。土台が定まっていれば、住まいの制約も支援制度も、現実的に検討できる材料に変わります。
拙著『起業がうまくいった人は一年目に何をしたか?』に、案ずるより産むがやすし、まずは小さく試してみればよい、という言葉が出てきます。起業は続けるかやめるかを選び続けるだけのものです。青ヶ島という大きな決断も、いきなり全部を背負うのではなく、通う、関わる、試すという小さな一歩に分けてしまえば、思っているより踏み出しやすくなります。

青ヶ島は、人口161人(2024年10月現在)という数字が示すとおり、暮らしのハードルが高い島です。それでも、外で起業の土台をつくり、関係人口として通いながら少しずつ近づいていけば、憧れを現実的な計画に変えていくことはできます。あせらず、順番を守って、一歩ずつ進めていきましょう。
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