講師業で起業する手順|「教える経験」を月収に変える4ステップ

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

講師として起業すると言うと、いきなり大きなホールで講演する姿を想像する方が多いのですが、実際の入り口はずっと小さなところにあります。

社内で新人や中途入社者に教えてきた経験。塾やスクールで個別に伝えてきた指導法。専門家として相談を受けてきた現場の知恵。そういった「すでに教えてきたもの」を、外でも売れる形に組み直すのが講師起業です。

このページでは、在職のまま動ける順番で、講師として起業する具体的な手順をまとめます。会場を借りる前に、肩書きを変える前に、まずやっておくべきことから順番に確認していきましょう。

ポイント 講師経験がビジネスになる理由

教えてきた経験はそのまま無形資産

講師

「すでに教えてきたこと」が出発点

講師起業の出発点は、外に出て新しいスキルを身につけることではありません。あなたが社内・教室・現場で「すでに教えてきたこと」を、外でも売れる形に組み直すこと。これが最短のルートです。新人研修を10年担当してきた人、塾で教科を教えてきた人、専門職として後輩を指導してきた人。みなさん、すでに「教える商品の原料」を手元に持っています。

拙著『会社を辞めずに朝晩30分からはじめる起業』に「100の階段カリキュラム」という考え方が出てきます。ノウハウを100段階に切り分け、最初の15段は無料、26〜35段は初級講座、36〜50段は中級講座と、レベル別に商品をつくる発想です。「教えること」を商品化するときに、これほど扱いやすい設計図はありません。

研修市場の伸びがそのまま追い風になる

講師業を取り巻く環境は、ここ数年でかなり変わりました。矢野経済研究所の調査によると、2024年度の企業向け研修サービス市場は前年度比4.6%増の5,858億円、2025年度はさらに増えて6,130億円が見込まれています。研修市場全体に占めるe-learningの割合も、2019年の12.9%から2024年には20.2%まで伸びました。オンラインで届けられる教材の需要が、確実に拡大しています。

つまり、講師として起業する人にとって、外向けの「箱」を借りなくても価値を届けられる時代になったということ。会場費・交通費を最初から背負わなくていい。在職のまま、夜の30分からでも始められる条件が、業界全体として整ってきています。

  • 社内向けの新人研修・中途オンボーディング教材
  • 業務マニュアルや手順書として残してきたもの
  • 後輩に何度も同じことを聞かれて答えてきた内容
  • クライアント向けの提案資料・ヒアリングシート
  • 専門資格の勉強会で配ったハンドアウト

これらは社内では「あって当たり前」でも、社外に出れば対価を払って学びたい人がいるノウハウです。「自分には特別な実績がない」と感じている方ほど、この棚卸しをやらずに見過ごしている傾向があります。

ポイント 講師として起業する4ステップ

在職のまま動ける順番で進める

講師

STEP1:教えてきた内容を「100段階」に分ける

最初にやるのは、頭の中にあるノウハウを段階に切り分ける作業です。「初心者がゼロから一人前になるまで」を100段階に分け、各段階で「読者が何を理解し、何ができるようになるか」を1行ずつ書き出します。これだけで、あなたが教えられる範囲が一気に見える化されます。

段階分けができれば、自然と商品の階段が見えてきます。1〜15段は無料公開(ブログ・SNS・PDF配布)、16〜25段は入門講座、26〜35段は初級講座、36〜50段は中級講座、それ以降は個別コンサルや継続伴走。「全部を1本のセミナーに詰め込む」発想を捨てて、レベル別に商品を分散させると、受講者は迷わず買えるようになります。

STEP2:無料15段で「お試し受講者」を集める

段階が切り分けられたら、最初の15段を無料で出します。記事、SNS投稿、無料PDF、20分のオンラインミニ講座。いきなり有料セミナーを開かず、無料公開の段階で「あなたに教わりたい」と感じてもらう接点を先につくるのが、後々の集客を楽にする鉄則です。

この段階で意識したいのが、拙著『起業神100則』にこんな言葉があります。「不安の原因は『漠然』にあり」。何を提供する人なのかが受講者に伝わらないと、無料でも見てもらえません。逆に「中途入社者が3ヶ月で成果を出すまでの教え方」「営業未経験者を1ヶ月で1件取れるようにする手順」のように具体的に絞り込まれていれば、ピンポイントで反応が返ってきます。

STEP3:初級・中級を有料化する(単発から継続へ)

無料公開で反応のあった人には、入門講座(5,000円〜1万円)→初級講座(2〜3万円)→中級講座・個別伴走(5〜10万円)と、段階的に有料商品を案内します。単発のセミナーで終わらせず、次の階段を用意しておくことが、講師業を継続させるカギになります。

講師の単価相場は、企業研修で10〜30万円、個人向けセミナーは2時間で3,000〜5,000円が一般的とされています。ただし、いきなり企業研修を狙うと門前払いに遭いやすいので、最初は個人向けの少人数講座から実績を積んでいくのが現実的です。

STEP4:教材・録画・サブスクで「収入の柱」を太くする

個別の講座が回り始めたら、毎回ライブで話す形だけではなく、録画教材・テキスト・サブスク型コミュニティへ展開します。拙著『1億円稼いでいる人は何をしているのか?』に「ストック思考とフロー思考」という考え方が出てきます。1回ごとに完結する講演(フロー)だけだと、登壇しない月は収入がゼロに戻る。教材・録画・サブスクという「貯まる側」(ストック)を仕込むと、休んでも入り続ける構造ができる

  • STEP1:ノウハウを100段階に切り分けて見える化
  • STEP2:1〜15段を無料公開してお試し受講者を集める
  • STEP3:入門→初級→中級と階段で有料化
  • STEP4:録画・教材・サブスクでストック型へ拡張

4ステップとも、会社を辞める前から進められます。むしろ、在職のまま実験できる期間に、無料公開と少人数講座のフェーズを終えておく。そうすれば、独立判断のタイミングで「すでに月数万円の収入が出ている状態」から動き出せます。

ポイント 経験タイプ別の起業ルート

どの経験から逆算するか

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ルート①:社内研修担当→中途入社者向け教材化

新人研修・中途入社者のオンボーディングを社内で担当してきた方は、その教材をそのまま外向けに組み替えるのが最短です。「中途入社者が3ヶ月で成果を出すまでに必要な90のチェックリスト」「人事担当者が新人配属前に渡しておくべきオンボーディング設計書」など、企業の人事・教育部門が買いたい形に商品名を変えると、研修導入につながりやすくなります。

ルート②:塾・スクール講師→保護者向けガイドへ広げる

塾講師さんや教科指導をしてきた方は、子どもへの直接指導だけでなく、保護者向けの「家庭でできる勉強法ガイド」「中学受験の塾選び講座」など、隣接する大人向け商品を持つと単価が上がります。子どもの数が減っても、保護者の悩みは消えません。

ルート③:専門職(士業・医療・IT等)→業界向けノウハウ販売

士業・医療・IT・建築など、専門職の方は「自分の業務」を売るより「同業の若手向け教材」を売るほうが、競合が少ない場合があります。たとえば、税理士なら「開業3年目までの実務テンプレート」、看護師なら「訪問看護に転換するときの患者対応マニュアル」のように、同じ職業の後発組が欲しがる教材です。

ルート④:趣味・特技で教えてきた人→継続レッスン化

料理・写真・ダンス・楽器・手芸など、趣味で人に教えてきた方は、すでに「教える経験」を持っています。ここから一段上げる発想は、単発レッスンを「30日プログラム」「半年で発表会まで」のように、ゴールから逆算した継続商品にすること。月会費5,000〜10,000円のサブスク型に切り替えると、収入が安定します。

  • 社内研修担当:人事・教育部門向けの研修パッケージへ
  • 塾・スクール講師:保護者向けガイド・勉強法本へ
  • 専門職:同業の後発組向けノウハウ教材へ
  • 趣味・特技:単発から継続プログラムへ
体験談:会場費を払い続けて気づいた「順番違い」

起業18フォーラム会員の森田さん(仮名・40代後半・IT系上場企業の人材開発部)は、社内で新人研修と中途入社者向けオンボーディングを10年担当してきた方です。最初は自己流で動いていました。会場を借りて「ITエンジニア向け中途入社オンボーディング講座」を開催したものの、集客方法がわからず3回連続で参加者3人以下、会場費とパンフ代で計18万円の赤字

転機は起業18フォーラムに参加し、勉強会で「100の階段」と「ストック思考」を学んだことでした。森田さんは社内で蓄積した教材を90個のチェック項目に切り分け、最初の15項目を無料note記事として公開。読んだ人事担当者から問い合わせが入り、3社の中小企業向け研修導入につながりました。14ヶ月目で月収15万円・継続中。本業はそのまま続けている状態です。

ポイント 講師起業で陥る失敗パターン

先に避けておきたい4つの罠

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罠①:いきなり会場を借りて単発講演から始める

講師起業の最大の落とし穴は、準備運動なしで「会場×単発講演」から始めることです。会場費・パンフ代・交通費を先に支払い、集客の見込みもないまま当日を迎える。前述の森田さんのように、最初の数回で20万円近い赤字が出ます。

解決策はシンプルで、無料公開とオンライン少人数講座で先に手応えを掴んでから、会場開催に進むこと。記事・SNS投稿・無料PDFで反応のあった人を集めれば、Zoomの少人数講座(5〜10人)から無理なく始められます。

罠②:100点の教材を作ろうとして止まる

真面目な人ほど、「教材として完璧になってから出そう」と思いがちです。しかし、教材は20点で出してから受講者の反応で磨くものです。最初から完璧を目指すと、半年経っても1本も世に出ない、という事態に陥ります。

20点でも誰かの役に立つ。役に立つから「ここがわかりにくかった」「もっとここを詳しく」とフィードバックが返る。そのフィードバックが教材を100点に近づけていきます。受講者の声を取り込まずに完成した教材より、取り込みながら育てた教材のほうが、結果的に売れます。

  • 会場を借りて単発講演から始める順番違い
  • 100点の教材を完成させようとして止まる完璧主義
  • 「教えること」と「集客」を別々に考える分離思考
  • 単発単価ばかり追ってフローのまま消耗する設計
罠③:「教えること」と「集客」を別々に考える

講師業で続かない方の多くは、「教える内容を磨けば自然に受講者が集まる」と信じている傾向があります。実際には、教える内容と集客は同じ商品設計の表裏です。誰のどんな悩みを解決するか、その人がどこでこの講座を見つけるか、を最初から一緒に設計しないと、いい教材を持っていても受講者にたどり着きません。

罠④:単発単価ばかり追ってフローのまま消耗する

個別講演や単発研修は、登壇するたびに単価が手に入る分、休んだ月は収入がゼロに戻ります。5〜10年講師を続けて疲弊する人の多くが、ストック型の収入源を仕込まなかったケースです。録画教材・サブスクコミュニティ・テキスト販売など、毎月入り続ける収入の柱を途中から組み込むことを、最初の設計時から想定しておく必要があります。

  • 無料公開とZoom少人数からスタート
  • 20点で出して受講者の声で磨く
  • 教える内容と集客の動線をセットで設計
  • 立ち上げ初期からストック型の商品を視野に入れる

ここで挙げた4つは、起業18フォーラムの講師系会員さんが実際にぶつかってきた典型例です。罠そのものを完全に避けるのは難しくても、「自分が今どの罠に近いか」を知っておくだけで、回復までの時間が大幅に短くなります。

ポイント 「教える経験」を月収にする最後の一歩

在職のままできる具体行動

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ここまでお読みいただいた講師さんは、もう「会場を借りる前にやることがある」のがわかっています。今夜できる具体行動は、ノートを開いて、自分が今までに何度も人に説明してきた話を10個書き出すこと。それが、あなたの100段階の最初の素材です。

10個書き出してみると、自分でも忘れていた「実は何度も同じことを聞かれていた」テーマが浮かび上がります。職場で当たり前のように答えていたあれこれが、外で対価を払って学びたい人のいるノウハウだった、という発見につながります。

起業準備中に「ストック型」の収入源を1本作るには何から始めますか?
● 質問 起業準備中に、自分が動かなくても入り続ける「ストック型」の収入源を1本作りたいと考えています。何から

講師業は、登壇する華やかさより、自分の経験を整理して人に渡せる形に変える地道さで決まります。あなたが社内で何百回と繰り返してきた説明は、もう「教える商品」になる準備ができています。あとは順番を間違えずに出していくだけです。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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