会社員が起業準備しても健康保険はそのまま? 社会保険の正しい理解

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

「起業を考えているのに、健康保険のことを考えると怖くて踏み出せない。」そういう相談を、26年間でずいぶんたくさん受けてきました。気持ちはよくわかります。

でも、ほとんどのケースで、この不安は「会社を辞めることと起業準備を、頭の中でごちゃまぜにしている」ことから生まれています。今日は、その混乱をスッキリ整理します。

ポイント 会社員の社会保険とはどんな仕組みか

会社が保険料の半分を負担している仕組み

インボイス

会社員として働いていると、給与明細に「健康保険料」「厚生年金保険料」という項目が毎月引かれています。これが社会保険料です。多くの人は、この金額が「全部自分が払っている」と思っています。ところが実際は違います。

会社員の社会保険料は、本人と会社が2分の1ずつ負担する「労使折半」という仕組みになっています。たとえば月収35万円の会社員の場合、社会保険料の合計(健康保険+厚生年金)のうち、本人が給与から引かれているのは半分だけ。残りの半分は、あなたが知らないところで会社が静かに払っています。

この仕組みを理解していないと、「起業したら保険料が増える」という漠然とした恐怖につながります。正確には「退職したら会社負担分がなくなる」という話なのです。そこをきちんと分けて考えましょう。

ポイント 「会社員のまま起業準備」なら健康保険は一切変わらない

在職中の起業準備は社会保険に影響しない

カウンセラー起業

ここが最大のポイントです。会社員を続けながら起業準備を進める場合、社会保険は何も変わりません。健康保険証は今まで通り使えます。厚生年金の加入も継続されます。保険料の会社負担もそのまま続きます。

「会社員のまま起業準備をする」ことと「退職して起業する」ことは、社会保険の観点から見ると、まったく別のことです。

起業準備を始めたとたんに健康保険料が上がるわけでも、会社にバレるわけでも、制度上の変化が起きるわけでもありません。月末に給与から引かれる保険料は、起業準備を始める前と1円も変わらないのです。これは、「会社員のまま起業する」という方針の最大のメリットのひとつです。

在職中の起業準備で健康保険が変わらない理由

  • 雇用関係が続いているかぎり、厚生年金・健康保険の加入資格は維持される
  • 起業準備活動は、会社の社会保険加入には影響しない
  • 会社が引き続き保険料の半額を負担してくれる

ポイント では退職後の健康保険はどうなるのか

退職後の健康保険選択肢は2つ

インボイス

会社を辞めた場合、健康保険は自分で選んで加入しなければなりません。選択肢は大きく2つあります。

① 健康保険の任意継続

退職後も、在職中に入っていた健康保険をそのまま継続する制度です。退職後2年間まで利用できます。ただし、これまで会社が負担していた保険料の半額も自分で払うことになるため、実質的に保険料が2倍になります。

② 国民健康保険に切り替え

市区町村の国民健康保険に加入する方法です。保険料は前年の所得をもとに計算されます。退職直後は前年収入が高い場合、保険料が高額になることがあります。収入が下がると翌年以降に保険料が下がります。

退職後の健康保険で注意すること

  • 任意継続は保険料が在職中の約2倍になる(会社負担分がなくなるため)
  • 国民健康保険は前年所得が高いほど1年目の負担が大きい(推計)
  • 厚生年金から国民年金への切り替えも同時に必要になる
  • どちらが得かは年収・家族構成・翌年の収入見込みによって異なる

ポイント 「辞める前」と「辞めた後」の社会保険コスト差

年収500万円なら年間数十万円の差が生まれる(推計)

帳合い

会社員が退職して個人事業主になった場合、社会保険コストはどれくらい増えるでしょうか。年収500万円を例に、ごく大まかに比較してみます(推計)。

年収500万円の場合の社会保険料比較(推計)

  • 【会社員のまま】健康保険+厚生年金の本人負担:年間約70〜75万円
  • 【退職後・任意継続】同じ保険料を全額自己負担:年間約140〜150万円
  • 【退職後・国民健康保険+国民年金】年間約60〜80万円(前年所得・都道府県によって変動)

退職後の実際の保険料は所得・居住地・家族構成によって大きく変わります。「退職前に必ず社会保険労務士や年金事務所に相談する」ことをお勧めします。いずれにせよ、会社員のまま起業準備を進めているかぎり、この問題はまるごと先送りできます。

26年間で起業支援をしてきた経験から言えば、「社会保険コストをリアルに試算してから脱サラを決めた人」と「なんとなく辞めた人」では、辞めた後の精神的な安定感がまるで違います。退職後の保険料シミュレーションは、準備段階でぜひ一度やってほしい作業です。

ポイント 会社員のまま起業準備する、それが健康保険という面でも最強の戦略

「今すぐ辞めない」選択が家計を守る

健康保険の不安から起業準備を先送りにする必要はありません。会社員として働き続けながら起業準備を進めるかぎり、今日と同じ健康保険証が使えます。会社負担の半額分も守られます。

退職はいつでもできます。でも「辞めてから準備する」より「準備が整ってから辞める」ほうが、健康保険の面でも、精神面でも、はるかに安定しています。

まずは「会社員のまま」で一歩目を踏み出す。それが、26年の支援経験が教えてくれた、最もリスクが低く、最も続けやすい起業準備の形です。一緒に考えていきましょう。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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