記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:
● 質問
「フォントAC」というサイトがありますが、そこのサイトには、
商用利用もOKなので、チラシやポスター、WEBサイトなどの広告、ポストカードや年賀状などにもご利用いただけます。クレジット表記や許可も必要ありません。
フォントAC トップページ より引用
と書いてあります。現在、ネットショップの商品として、オリジナルのマグカップ等の製作を考えているのですが、これらのフォントを使っても良いのでしょうか?

● 回答
結論から言うと、フォントACのフォントを、販売用のマグカップ・Tシャツ・ステッカーなどの商品デザインに使うのは避けてください。フォントAC公式ページでは、利用できない例として「商品化利用・販売用製品に利用すること」が明記されています。広告、チラシ、WEBサイト、ポストカードなどに使える「商用利用OK」と、販売する商品のデザインとして使う「商品化利用」は、同じではありません。ここを混同すると、思わぬ規約違反につながります。
フォントAC公式の禁止条項
×利用“不可能”なご使用方法例
【禁止】商品化利用 ・販売用製品に利用すること
例)カレンダー、ジグソーパズル、アプリなどフォントAC「フォントACについて」 より引用
公式ページでは、カレンダー、ジグソーパズル、アプリなどが例示されています。マグカップ、Tシャツ、トートバッグ、ステッカーなども、販売用の商品として作る場合は「商品化利用」にあたる可能性が高いため、フォントACのフォントは使わない判断が安全です。
一方で、同じACワークス株式会社が関係するイラストAC・写真AC・シルエットACなどでは、商品化ライセンスを購入することで、Tシャツやマグカップなどの商品化に使えるケースがあります。ただし、フォントACとは扱いが異なります。AC公式ヘルプでも、商品化ライセンスは素材ごとの購入手続きが必要で、1点につき税込3,300円と案内されています。
AC系サイトの商品化可否マトリクス
| サイト | 広告・チラシ | 商品化(マグカップ等) | 商品化ライセンス |
|---|---|---|---|
| フォントAC | ○ 可 | × 不可と考えるのが安全 | 確認できる商品化ライセンス制度なし |
| イラストAC | ○ 可 | △ 商品化ライセンス購入で可 | 対象素材あり |
| 写真AC | ○ 可 | △ 商品化ライセンス購入で可 | 対象素材あり |
| シルエットAC | ○ 可 | △ 商品化ライセンス購入で可 | 対象素材あり |
イラストAC・写真AC・シルエットACでは、商品化ライセンスを購入することで、Tシャツやマグカップなどへの商品化利用が可能になると公式ブログでも説明されています。ただし、すべての素材が自由に使えるわけではありません。素材ページの表示、商品化ライセンスの購入可否、利用規約を必ず確認してください。
なぜ「商用利用OK」なのに「商品化NG」なのか
ここがいちばん混乱しやすいところです。
「商用利用OK」と聞くと、ネットショップの商品にも使えると思いがちです。しかし、素材サイトでは「商用利用」と「商品化利用」を分けていることがあります。
商用利用とは、たとえば会社のチラシ、WEBサイト、広告バナー、名刺、パンフレットなどに使うことです。これらは、素材が宣伝や説明の一部として使われます。
一方、商品化利用とは、素材やフォントを使ったデザインそのものを、マグカップ、Tシャツ、カレンダー、ステッカーなどの商品として販売することです。つまり、素材が商品の価値そのものに近い位置に来ます。
たとえるなら、商用利用は「お店の看板に文字を使う」こと。商品化利用は「その文字入りの看板そのものを売る」ことに近いです。同じ文字を使っていても、役割がまったく違います。
フォントACでは、広告やWEBサイトなどの使用は認められていても、販売用製品に使う商品化利用は禁止されています。この切り分けを理解しておくことが大切です。
フォントの権利は「著作権」だけで判断しない
フォントまわりでよくある誤解が、「書体には著作権がないと聞いたので、自由に使ってよいのでは?」というものです。
たしかに、日本ではタイプフェイスそのものについて、著作権で保護される範囲が限定的に考えられることがあります。ただし、実務上はそれだけで判断してはいけません。フォントファイルはソフトウェアやデータとして提供されており、利用者は配布元の利用規約やライセンス契約に従う必要があります。
つまり、著作権の話と、利用規約の話は別です。たとえるなら、道路は公共のものでも、レンタカーを借りたらレンタカー会社の契約条件に従う必要がある、というイメージです。
フォントACの場合も、「商用利用OK」という大きな表示だけで判断せず、商品化利用の禁止条項まで確認する必要があります。
起業18フォーラムが見てきた「素材ライセンス」トラブル3パターン
当フォーラムでは、これまで多くの起業準備中の方から、素材・著作権まわりの相談を受けてきました。実際に起きやすいトラブルを3つ整理します。
- パターン①「無料=何に使ってもOK」と勘違い:「商用OK」と書かれていても、商品化は別ライセンスというサイトがあります。フォントACは、この違いを理解しておきたい典型例です。
- パターン②「少量なら大丈夫」と勘違い:販売数が少なくても、販売用の商品であれば商品化利用にあたる可能性があります。1個だけの試験販売でも、規約上は確認が必要です。
- パターン③「アウトライン化すれば大丈夫」と勘違い:フォントを画像化・アウトライン化しても、利用規約上の禁止用途まで消えるわけではありません。フォントファイルを直接配布していなくても、商品化利用が禁止されていれば注意が必要です。
商品化を考える前に、必ず素材サイトの規約原文を確認し、商品化ライセンスの対象素材かどうか、購入金額、適用範囲を整理してください。規約違反は、後から「知らなかった」では済まないことがあります。
商品化対応の素材を集める実務ポイント
- 商品化に使いやすいフォント:Google Fonts、Adobe Fonts、各社の商用フォント。ただし、フォントごとのライセンス確認は必須。
- 有償画像素材:PIXTA、Adobe Stock、Shutterstockなど。商品化・グッズ化には拡張ライセンスが必要な場合があります。
- AC系素材を使う場合:イラストAC・写真AC・シルエットACなどは、商品化ライセンスの対象素材かどうかを確認し、必要に応じて購入する。
- オリジナル制作:デザイナーに依頼する場合は、著作権譲渡または商品化利用の許諾範囲を契約書や発注メッセージに明記する。
Adobe Fontsについては、公式ヘルプで、Tシャツや製品パッケージなど商用販売向けの商品デザインに使用できると説明されています。ただし、個々の文字・字形そのものを主役にした商品や、購入者が文字を編集して使えるテンプレート商品のような用途には制限があります。
Google Fontsについては、公式FAQで商用製品への利用が可能と説明されています。ただし、フォントごとにSIL Open Font License、Apache License、Ubuntu Font Licenseなどライセンスが異なるため、各フォントのLicense項目を確認してください。
拙著『起業神100則』第7章では「3つのチェック・7つの口ぐせ」というフレームを取り上げています。「契約はちゃんと確認したか」「規約の例外条項は読んだか」「事後トラブル時の連絡先は把握したか」の3チェックは、素材ライセンス管理にもそのまま活きます。
よくある質問(FAQ)

Q. 既にフォントACを使ったマグカップを販売してしまいました。どうすればよいですか?
まず、該当商品の販売を停止してください。そのうえで、フォントAC運営に問い合わせ、使用状況を説明するのが安全です。販売済み商品の扱いや在庫の処分方法は、運営側の判断や個別事情によって変わります。今後同じ商品を販売する場合は、Google Fonts、Adobe Fonts、商用フォント、または商品化利用が明確に認められている素材に差し替えてください。
Q. 商品化ライセンスの相場はいくらですか?
AC公式ヘルプでは、商品化ライセンスは1点につき税込3,300円と案内されています。ただし、料金や条件は変更される可能性があります。購入前に必ず最新の公式ページを確認してください。
Adobe StockやShutterstockなどの有償素材サイトでは、通常ライセンスとは別に拡張ライセンスが必要になる場合があります。価格や利用範囲は素材サイト、販売数量、用途によって異なるため、各サイトの最新規約で確認してください。
Q. 個人利用と商用利用の境界はどこですか?
素材サイトごとに定義が異なります。一般的には、「金銭の授受があるか」「不特定多数に提供するか」「事業活動や宣伝活動の一部か」が判断材料になります。家族用のマグカップ1個なら個人利用に近いですが、ネットショップで販売する場合や、SNSで集客につなげるノベルティとして配る場合は、商用または商品化として確認するのが安全です。
Q. 結婚式の手作り引出物(少量・無償配布)はどう扱われますか?
少量・無償であっても、受け取る人に渡る制作物である以上、素材サイトの規約確認は必要です。特に、フォントやイラストがデザインの中心になる場合は注意してください。迷う場合は、商用フォント、商品化対応素材、またはオリジナル制作物を使うほうが安全です。
Q. 商品化対応の無料フォントはありますか?
はい、あります。たとえばGoogle Fontsに収録されているフォントは、商用製品への利用も可能と公式FAQで説明されています。Noto Sans Japanese、Noto Serif Japanese、M PLUSなどは候補になります。ただし、フォントごとにライセンスが異なるため、各フォントの「License」項目を必ず確認してください。
素材ライセンスは、起業準備の中では地味な作業です。けれど、ここを曖昧にしたまま商品を売り始めると、あとから販売停止や作り直しになることがあります。フォントや素材は、デザインの調味料のようなものです。少し入れるだけで商品はぐっと魅力的になりますが、使い方を間違えると、せっかくの料理全体を作り直すことになります。
ネットショップの商品化で大切なのは、「商用利用OK」という言葉だけで安心しないことです。販売する商品に使うなら、「商品化利用が認められているか」まで確認する。このひと手間が、後々のリスクを大きく減らしてくれます。
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