買い物代行で起業は成り立つ? 単発で終わらせず事業にする手順

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

● 質問

特別なスキルや資格がないので、買い物を代行するサービスで起業できないかと考えています。高齢の方や忙しい方、小さなお子さんがいるご家庭など、買い物に不自由している方の手助けをしたいのですが、こうした買い物代行はビジネスとして成り立つのでしょうか?

起業前質問集

● 回答

買い物代行は、単発の御用聞きで終えると時間の切り売りになって頭打ちになり、決まった数家庭との関係に育てて初めて事業として成り立ちます。特別なスキルがなくても始められる仕事ですが、始めやすさと続けやすさは別物です。まずは、なぜ「ただ買い物を代わるだけ」では厳しいのかを整理してみましょう。

買い物に不自由している方は、想像以上にたくさんいらっしゃいます。内閣府「高齢社会白書(2024年版)」によると、65歳以上の人口は3,623万人、高齢化率は29.3%に達しました。さらに農林水産省の推計では、店舗まで距離があって買い物が難しい、いわゆる買い物難民は全国で約904万人(2020年時点)とされています。

困っている方がこれだけいる以上、買い物代行に需要そのものはあります。問題は、その需要をどう「続く収入」に変えるかです。

高齢者

「ただ買い物を代わるだけ」が成り立ちにくい理由

かつては、スーパーやドラッグストアが近くにない地域で、買い物代行は地域の困りごとを解決する手段として注目されていました。ところが今は、その前提が大きく変わっています。

  • Amazonや楽天などのネット通販で、生活必需品は自宅にいながら届く時代になった
  • ネットスーパーや生協の宅配が広がり、定期配送が当たり前になった
  • 1件あたり数百円という料金では、移動時間を入れると時給換算が大きく下がる

「買い物を代わりにするだけ」のサービスは、ご家族やネット通販・宅配サービスといった無料に近い競合と、価格で比べられてしまいます。買い物代行で消えていく方の多くは、1件700円といった単発の御用聞きを追いかけ、移動と待ち時間で体力をすり減らして頭打ちになります。需要がないのではなく、収益の組み立て方でつまずいているのです。

買い物代行を「事業」に変える発想

では、どうすれば成り立つのでしょうか。鍵は、買い物代行を「作業の代行」ではなく「外出が難しい、時間が足りないという不便そのものの肩代わり」ととらえ直すことです。

拙著『会社で働きながら6カ月で起業する』では、起業準備を「知(商品・知識)」「人(信頼関係)」「金(資金)」という3種のチカラで考えます。買い物代行でいちばん効いてくるのは、二つ目の〈人のチカラ〉です。

買い物代行は、近所の数家庭から「この人になら家の鍵やお金を預けられる」と思ってもらえる信頼関係が、そのまま事業の生命線になります。だからこそ、不特定多数を相手にした単発受注ではなく、特定の少数世帯と深くつながる形に組み替えると、無理なく続けられます。

  • 不特定多数の単発受注ではなく、3〜5世帯と「週1回・曜日固定」の月決め契約を結ぶ
  • 買い物に加え、電球交換・ゴミ出し・庭の水やりなど軽い家事までまとめて引き受ける
  • 離れて暮らすご家族に「今日の様子」を短く報告し、見守りの安心もセットで届ける
  • 料金は1件いくらではなく月額(例:週1回で月1万円台)で設定し、収入を読めるようにする

最初の集客はネット広告ではなく、ポスティングや町内会、民生委員、地域包括支援センターへの挨拶から始めてください。高齢のお客様はネット検索より「近所の口コミ」で人を選びます。一軒のお宅に丁寧に向き合えば、その方が次のお客様を紹介してくださいます。

会員Sさん(50代後半・在職中スタート)の軌道

起業18フォーラムの会員Sさん(50代後半・スーパーのパート勤務を続けながら準備)は、まさに質問者様と同じく「特別なスキルがない」ところからのスタートでした。最初は手作りのチラシを配り、買い物代行を1件700円で受けていたそうです。

ところが依頼先がその都度バラバラで、移動だけで半日が消えてしまう。時給に換算すると500円台まで落ち込み、体力的にも続かないと感じておられました。

転機は、勉強会で「単発を追わず、決まった数家庭と関係をつくる」という助言を受けたことでした。Sさんは思い切って受注の形を変え、近所の3世帯と「週1回・買い物と簡単な見守りをセットにした月決め契約」を結び直します。

単発のときは毎週ゼロから依頼を探していたのが、契約世帯ができてからは予定が固定され、紹介でお客様が増えていきました。14か月目には契約は8世帯まで増え、月収は13万6千円。土日を中心に動くスタイルで、今もスーパーの仕事と両立されています。

Sさんは規模をむやみに広げず、「顔の見える範囲で長く続ける」ことを選ばれました。お客様の数を追うより、一人のお客様と長くつながるほうが、収入も気持ちも安定するという実感があったそうです。

今すぐ収入が必要なら、フードデリバリーという選択肢

もし「準備に時間をかけず、今すぐ少しでも収入を得たい」ということであれば、同じく“届ける”仕事であるフードデリバリーに登録する道もあります。

フードデリバリー

Uber Eats・出前館・Woltなどは、アプリ経由で依頼が届き、報酬もシステムで管理されます。自分で集客する必要がなく、初期費用もほとんどかかりません。買い物代行を自分の事業として育てることと、プラットフォームに登録して働くことは、性質がまったく違います。どちらが良い悪いではなく、目的に合わせて使い分ければそれでいいのです。

  • フードデリバリー:すぐ始められて集客不要。ただし報酬は配達ごとの単発で、自分の顧客は積み上がらない
  • 買い物代行の事業化:軌道に乗るまで時間はかかる。そのぶん契約世帯という顧客基盤が自分に残る
  • おすすめの順序:まずフードデリバリーで“届ける勘”をつかみ、並行して買い物代行の定期契約を一軒ずつ増やす

いきなり買い物代行一本で生活費をまかなおうとせず、フードデリバリーと定期契約づくりの二段構えで収入の柱を分けてください。会社を辞めずに小さく試したい方には、これがいちばん無理のない進め方です。

便利屋として独立・起業したい人が最初に読む準備ガイド
便利屋として起業したい。でも何から始めればいいのか、資格は要るのか、本当に稼げるのか。 検索すると「無資格でO

買い物代行は、特別なスキルがなくても、目の前のお客様に丁寧に向き合う気持ちさえあれば始められる仕事です。大切なのは、単発の作業を追いかけないこと。

週に1回でも決まった世帯とつながり、その方の暮らしごと支える存在になっていく。その積み重ねが、半年後・1年後の安定した収入に変わっていきます。まずは身近な一軒に「週に1回お手伝いさせてください」と声をかけるところから、始めてみてください。


さらに詳しく知るには、以下より検索してみてください!
記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

起業アイデア診断
【起業セミナー】会社員のまま始める起業準備・6ヵ月で起業する!

【動画セミナー】あなたのタイミングで学べる動画版もあります!

ポイント この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます!