鳥取市で起業するには何から始める? 人口最少県の商圏の見方と使える窓口

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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鳥取県の推計人口は519,148人(令和8年4月1日現在・鳥取県)で、戦後はじめて52万人を割った、日本でいちばん人の少ない県です。それでも県庁所在地の鳥取市には82,251世帯が暮らし、鳥取市の創業支援等事業計画にもとづく特定創業支援等事業を修了すれば、会社設立の登録免許税が軽くなる証明書も用意されています。

とはいえ、このページで本当に確かめたいのは制度の名前ではなく、「この人口で自分の商売は成り立つのか」のほうだろうと思います。

鳥取市の商圏には、客の母数が少ないことと、同じ看板を出している人も少ないことが同居しています。この二つを別々に数えるところから、鳥取での起業の話は動き出します。

ポイント 鳥取市はどれくらいの規模の商圏か

人口175,707人と事業所数で見る鳥取市の規模

鳥取市

鳥取市の住民登録人口は175,707人、世帯数は82,251世帯です(令和8年6月30日現在・鳥取市)。県庁所在地としては小ぶりな部類ですが、鳥取県全体の推計人口が519,148人ですから、県民のおよそ3人に1人が鳥取市に住んでいる計算になります。

事業所の側も見ておきます。鳥取県の民営事業所数は24,242か所、従業者数は230,055人です(総務省統計局「令和3年経済センサス-活動調査」)。同じ調査の速報集計では、鳥取市の企業等数は5,818企業で県内全体の34.9%を占め、県内の市町村では最も多くなっています。

この偏りは、二通りに読めます。ひとつは「県内の需要も供給も鳥取市に集まっている」という読み方。もうひとつは「鳥取市で通用した形は、県東部の町でもそのまま通じやすい」という読み方です。

後者は、人口の多い街では成り立ちにくい発想です。都市部なら隣の区に移っただけで客層も競合も入れ替わります。鳥取市で商圏を数えるときは、市の内側だけで止めず、岩美町・若桜町・智頭町・八頭町を含む県東部の人口まで足して母数を出してみてください。

ポイント 「人が少ない=商売にならない」が半分しか当たらない理由

客の母数の少なさと同業の少なさは表と裏の関係

鳥取市

「人口が少ないから商売にならない」。鳥取での起業を考えるとき、最初に浮かぶのはこの一文だろうと思います。この見方は、半分は当たっています。

当たっているのは、単純な母数の話です。175,707人という人口は、政令市の一つの区とそれほど変わりません。毎日たくさんの新規客が通りかかる前提の商売、たとえば通行量に頼る立地型の店舗は、都市部と同じ来店数の計算では回らないでしょう。

外れているのは、供給側を数え忘れている点です。先ほどの24,242か所という事業所数は、裏返せば「同じ看板を出している人の数も、それだけ限られている」ことを表しています。

支援の現場で見てきた範囲でも、地方都市で最初に手応えをつかむのは、都市部の人気業種をそのまま持ち込んだ方ではありませんでした。「その困りごとを、この地域で引き受けている人がまだいない」という空白を先に見つけた方です。空白は人口の多さからではなく、供給の薄さから生まれます。

母数ではなく引き受け手の数を数える

やり方は難しくありません。自分がやろうとしていることを検索窓に「鳥取市」と並べて打ち込み、出てくる事業者を数えるだけです。3件しか出てこないなら、その分野で4人目になるのと、都市部で300人目になるのとでは、名前を覚えてもらうまでの距離がまるで違います。

  • 通行量に頼る立地型:
    毎日の新規客を前提にした業態。都市部と同じ来店数を当て込んだ収支計画
  • 薄利多売型:
    単価を下げて件数で埋める形。母数の少なさがそのまま売上の天井
  • 流行の追いかけ型:
    都市部で当たった業種をそのまま持ち込む形。需要が育つ前に体力が尽きるリスク

ポイント 鳥取市と鳥取県で使える創業支援の入口

鳥取市の特定創業支援等事業と相談窓口の位置づけ

鳥取市

鳥取市は、鳥取県東部の岩美町・若桜町・智頭町・八頭町および民間の支援機関と連携して創業支援等事業計画をつくり、産業競争力強化法にもとづく国の認定を受けています。この計画のなかで、経営・財務・人材育成・販路開拓の知識を続けて学ぶ支援が「特定創業支援等事業」と位置づけられています。

修了して市から証明書を受け取ると、会社を設立するときの登録免許税が軽減されるなどの措置につながります。実務を担っているのは鳥取商工会議所で、これから創業する方や創業して間もない方に向けた「とっとり創業塾」を開いています。

相談無料の窓口は県の側にもある

もうひとつの入口が、鳥取県よろず支援拠点です。相談は無料の予約制で、東部のサテライトオフィスは鳥取市本町のビジネスサポートオフィスとっとりに置かれています。創業前の漠然とした段階でも、販路の悩みでも使えます。

  • 特定創業支援等事業(鳥取市):
    経営・財務・人材育成・販路開拓を続けて学ぶ支援。修了証明書による会社設立時の登録免許税の軽減
  • とっとり創業塾(鳥取商工会議所):
    事業アイデアの整理からマーケティング・財務の基礎まで扱う講座。創業して間もない方も対象
  • 鳥取県よろず支援拠点:
    無料・予約制の経営相談。東部サテライトオフィスは鳥取市本町のビジネスサポートオフィスとっとり内

ただし、この一覧を上から順に回れば話が進むかというと、そうでもありません。補助金も証明書も、何を売るかの方向が決まったあとではじめて効いてきます。方向が白紙のまま窓口に座ると、持ち帰れるのは制度の説明だけになります。

ポイント 鳥取に戻った米原さんが受注を積み上げるまで

Uターン後の米原さんが県内外に取引先を広げた道筋

鳥取市

起業18フォーラムの会員さんに、鳥取市に戻って準備を進めた米原さん(仮名・48歳・男性)がいます。関西のメーカーで生産管理を20年務め、46歳のときに親の体調をきっかけに鳥取市へ戻り、地元の企業に転職した方です。

暮らし直して半年ほどで、米原さんは自分の提案の仕方が地元で空回りしていることに気づきました。関西で通っていた「まず全体の仕組みを整えましょう」という切り出し方が、鳥取の取引先には届きませんでした。代わりに何度も耳にしたのが、「うちの手順書、誰も作れる人がいない」という声です。

それでも最初の半年は、なんでも引き受ける形で始めました。名刺サイズのチラシを配り、パソコンの設定から書類の整理まで請け負っていた時期です。単価は1件3,000円台で、忙しいわりに手元には残りませんでした。

絞り込みの決め手は勉強会で聞いた他の会員の進め方

起業18フォーラムの勉強会に通い始めて三度目の回で、米原さんは県外の仕事をオンラインで受けている会員の話を聞きました。受ける仕事を二つに限って、それ以外は最初から断っているという進め方です。これを自分の状況に置き換え、「生産現場の手順書づくり」と「在庫管理表の整備」だけを残しました。

絞ってからは、依頼の中身が変わりました。地元で「手順書ならあの人」と名前で呼ばれるようになり、8ヶ月目に市内と県東部あわせて月5件、2年目の春には継続契約を含めて月9件を受けるようになりました。そのうち2件は、県外の会社からオンラインで受けている仕事です。

鳥取に戻ったこと自体が事業をつくったわけではありません。戻って暮らしたから「引き受け手がいない仕事」が見え、その見え方を人に説明できる形に変えたのが起業18フォーラムの勉強会だった、という順番です。

ポイント 鳥取で成り立ちやすい仕事の形

地元密着・県外オンライン・二枚看板という選び方

鳥取市

鳥取市で会社の外に収入をつくる形を、支援の現場で見てきた範囲で並べてみます。どれが正解ということはなく、手持ちの経験と生活の都合で選ぶものです。

  • 地元一手引き受け型:
    市内と県東部の困りごとを一つの分野で引き受ける形。名前を覚えてもらうまでの距離の短さ
  • 県外オンライン型:
    住む場所は鳥取のまま、商圏を地理から切り離して県外へ売る形。移動費と家賃の軽さがそのまま利益率
  • 二枚看板型:
    地元の継続案件と県外のオンライン案件を並べ、季節と景気の波をならす形。米原さんが今いる位置

どの形を選んでも、鳥取のような土地では効いてくる場所が同じになります。拙著『朝晩30分 好きなことで起業する』では、起業は「商品×発信×信用」の掛け算で成り立ち、そのそれぞれにどれだけのお金と人をかけるかで事業規模が決まる、と紹介しています。

都市部では、この式の「発信」に一番お金がかかります。広告を出さないと見つけてもらえないからです。人口175,707人の鳥取市では、一件の仕事をていねいに終えたことが次の紹介に直結しやすく、「信用」が「発信」の代わりを務めてくれます。

発信にかける費用が少なくて済む土地

これは、元手が乏しい状態から始める方には大きい違いになります。ただし信用は、回るのが速いぶん崩れるのも速い、という性質を持っています。請けた仕事の期日と品質は、都市部よりむしろ厳しく見られると考えておいたほうが安全です。

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ポイント よくある質問

鳥取市で起業するときによく出る4つの疑問

起業前質問集

Q.鳥取市で起業するとき、最初に出す届け出は何ですか?

個人で始めるなら、税務署への開業届が入口です。提出そのものに費用はかかりません。会社をつくる場合は登記が必要になりますが、鳥取市の特定創業支援等事業による支援を受け、市から証明書の交付を受けた対象者は、鳥取市内で会社を設立するときに登録免許税の軽減を受けられます。

対象は、事業を営んでいない個人または創業後5年未満の個人です。会社の発起人かつ代表者になる必要があり、既存会社の組織変更は対象外です。

Q.特定創業支援等事業の証明書をもらうと何が変わりますか?

会社を設立するときの登録免許税が軽くなるほか、創業関連保証の特例や日本政策金融公庫の融資制度で有利に扱われる場合があります。条件は年度で見直されるため、申し込む前に鳥取市の窓口で最新の内容を確かめてください。

Q.人口が減っている土地で始めて、数年後も続けられますか?

人口の減り方そのものより、同じ分野の引き受け手が何人いるかで決まります。人が減っていく地域では廃業や引退で供給側も減るため、需要が残ったまま担い手が消える分野が出てきます。そこに入れるかどうかが分かれ目です。

Q.鳥取市と鳥取県、どちらの窓口に相談すればいいですか?

創業前の漠然とした相談なら、無料で予約制の鳥取県よろず支援拠点が入りやすいでしょう。会社設立や証明書といった手続きの話が具体化してきたら、鳥取市と鳥取商工会議所の側に移ると話が早く進みます。

ポイント 鳥取で最初の一歩を踏み出す順番

起業18フォーラムで方向を決めてから窓口へ行く順番

point

鳥取で動き出す順番は、そう複雑ではありません。はじめに起業18フォーラムの動画や勉強会で「自分は何で食べていくのか」を言葉にします。そのうえで、できあがった言葉を持って鳥取市や鳥取県の窓口へ行きます。証明書や補助金が効いてくるのは、そのあとです。

逆の順番でも進まないわけではありませんが、遠回りになります。方向が決まっていない状態で制度の一覧を集めても、どれが自分の話なのか判断できないからです。

まずは鳥取県よろず支援拠点か鳥取商工会議所のどちらかに、見学のつもりで足を運んでみてください。相談したい中身が固まっていなくても構いません。建物に入って担当の方の顔を見て帰るだけでも、次に何を聞けばいいのかがはっきりします。

鳥取で起業する話は、どうしても「人口が少ないから不利」という前提から始まりがちです。けれど数えるべきは客の数だけではなく、その仕事を引き受けている人の数でもあります。両方を数えたとき、はじめて自分の入る余地が見えてきます。1年後、「あのとき鳥取で先に手を挙げておいてよかった」と振り返る日が来ることを願っています。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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