記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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あなたが長年かけて積み上げてきた実務の経験は、勤め先の外に出たとき、いくらの価値になると思いますか。LinkedIn(リンクトイン)は、仕事の経歴やスキルを軸につながる世界規模のSNSで、40〜50代の実務経験を顧問や相談の入口に変える受け皿として使えます。求人に応募する場という印象が強いかもしれませんが、勤めながら仕事上のつながりを整理する使い方もあります。
登録して経歴を書き、あとは誰かから声がかかるのを待つ使い方のまま数ヶ月が過ぎ、プロフィール画面を開いては閉じるだけになることがあります。これが、40代・50代の専門職がLinkedInで止まってしまうときの典型的な入口です。
この記事では、長く起業準備の相談を受けてきた現場で見えてきた「LinkedInを相談の入口に変える順番」を、向き不向きの見極めから、勤めながら相談を積み上げるケースまで、順を追ってお伝えします。
LinkedInを人脈の入口にする全体像

LinkedInは、マイクロソフト傘下のLinkedInが運営する、仕事の経歴やスキルを軸にしたビジネス特化型のSNSです。友人との近況を交わす一般的なSNSとは目的が違い、同じ業界の人・取引先・元同僚といった仕事上のつながりを可視化して保つことに向いています。基本的な機能は無料で使え、有料のプレミアムプランもありますが、起業準備の段階では無料の範囲で十分に始められます。
- 性格:
仕事の経歴・スキルでつながるビジネス特化型のSNS - 規模:
世界各地の仕事上のつながりに使われている大規模なサービス - 費用:
基本機能は無料で、有料プランもあるが準備段階は無料で十分な状態
LinkedInは求人だけでなく、同じ業界の人や元同僚と仕事上のつながりを保つためにも使えます。長く同じ業界で働いてきた人ほど、社内では当たり前でも社外では役立つ知見を持っていることがあります。
厚生労働省は兼業に関するガイドラインを令和4年7月に改定し、企業が会社の外での仕事を認めているか、条件付きの場合はその条件を公表することが望ましいとしています。ただし、これは個々の活動を許可する規定ではありません。まず勤め先の就業規則、守秘義務、競業避止や届出手続きを確認したうえで、無理のない範囲から自分の経歴と個人的なつながりを整え直すのが出発点になります。
LinkedInが向いている人・向いていない使い方

同じ経歴を持っていても、LinkedInで相談が届くようになる人と、登録したまま動きが止まる人にはっきり分かれます。その分岐点は肩書きの立派さよりも、経験を相手の言葉に翻訳できるか、そして継続的に手を動かせるかにあります。まずは向いている使い方から見ていきます。
- 特定の業界で長く実務を担い、社外でも役立つ判断軸を持っている人
- 個人として連絡してよい元同僚や知人との関係を、途切れさせず保っておきたい人
- 週に1度でも、専門分野の気づきを短い言葉で発信し続けられる人
逆に、成果が出にくいのは「登録して経歴を埋めたら終わり」という入り方です。経歴欄を役職と会社名で埋めただけのプロフィールは、読んだ相手が何を相談していいか分からず、つながっても会話が始まりません。これはLinkedInに限らず、掲載して待つだけで止まる人に共通する詰まり方です。
- 経歴を役職名だけで埋め、何を相談できる人か書いていない入り方
- つながり申請を送るだけで、相手に用件も自己紹介も添えない入り方
- 反応がすぐ来ないからと、数週間で更新をやめてしまう入り方
向いているかどうかは、経歴の華やかさで決まるわけではありません。地味でも一つの現場を長く見てきた人ほど、社外の誰かが探している答えを持っています。要は、それを見つけてもらえる形に置き直せるかどうかです。
「掲載して待つ」を抜け出す発信・人脈・相談の三層

拙著『起業神100則』では、在職中だからこそ作れるネットワークという考え方を紹介しています。LinkedInは、個人として連絡してよい元同僚や知人とのつながりを、一枚のプロフィール上で保つ場所になります。勤務先が管理する名刺、顧客台帳、CRMの情報を個人目的で持ち出したり登録したりしてはいけません。
具体的には、LinkedInの使い方を次の三つのレイヤーに分けて考えると、掲載して待つ状態から抜け出しやすくなります。
- 発信のレイヤー:
専門分野の気づきを短い投稿で出し、まだ知らない相手から見つけてもらう入口づくり - 人脈づくりのレイヤー:
個人として連絡してよい元同僚や知人との、相手の意思を尊重したつながり直し - 相談・受注の入口のレイヤー:
プロフィールの見出しと最初の数行を「何を相談できる人か」に書き換えた、声をかけやすい状態への整備
三つのレイヤーのうち、40〜50代の実務経験を伝えやすいのは真ん中の人脈づくりです。ただし、相手の連絡先や過去の関係を営業目的で使ってよいかは、勤務先の規程や個人情報の扱いを先に確認します。
発信だけを頑張ってフォロワーを追いかけるより、すでにある顔の見えるつながりを起こし直すほうが、勤めながらの準備には現実的です。三つを一度にやろうとする必要もありません。
まずは公開範囲と「プロフィール変更をネットワークに通知」の設定を確認し、見出し一行を「どんな経験を持つ人か」に整えてください。プロフィールは設定によりLinkedIn外の検索結果にも表示され、通知を切っても保存した変更はプロフィールを見た人に表示されます。勤務先の未公開情報や顧客名は書きません。
会社の外で使うときにやりがちな失敗と回避策

相談の入口として使い始めた人が、最初につまずきやすい失敗はだいたい三つに絞られます。先に知っておけば、遠回りをかなり減らせます。
- 経歴の羅列で終わる:
肩書きと担当業務を並べるだけで、相手が持ち帰れる情報がない状態 - 定型のつながり申請だけを送る:
一言も添えずに数だけ送り、誰の記憶にも残らない申請 - 会社の看板と混同する:
勤め先の立場で語り、非公開の案件、顧客名、社内資料やノウハウを個人の実績として出す情報公開
なぜこの三つが起きるかというと、多くの人がLinkedInを「経歴を提出する場所」と捉えているからです。提出書類のつもりで書くと、どうしても実績の一覧になり、読んだ相手は相談の糸口をつかめません。履歴書を貼るのではなく、相手が「この人になら聞けそうだ」と感じる一行を先に置くほうが、つながりは動き始めます。
回避策はむずかしくありません。三つとも「相手の側から見て、自分に何を頼めるか」を一行で言い切ることに集約されます。
個人として連絡してよい知人を一人だけ選び、相手との接点が分かる短い言葉を添えて一度だけ申請してみてください。反応がなければ繰り返し送らず、相手の意思を尊重します。
勤めながら相談を積み上げるケース

日向さん(40代後半・設備保全の技術職)は、独学でLinkedInに登録した当初、半年ほど動きが止まっていました。経歴欄には役職と担当した設備の名前を並べたものの、そこから先に何をしていいか分からず、たまにつながり申請を送っては反応がないまま画面を閉じる日々だったそうです。掲載して待つだけの状態から抜け出せずにいました。
呼ばれ方が変わったのは、まだ勤めていたころ、社外の勉強会で知り合った人から、一般的な設備保全の考え方を「個人的に教えてほしい」と持ちかけられたときでした。勤務先の顧客や取引先ではなく、私的な場で知り合った相手です。ただ、そのときは何をどう引き受ければいいのか整理がつかず、いったん保留にしたと言います。
転機を形にできたのは、勉強会で「在職中だからこそ作れるネットワーク」の考え方に触れ、私的に知り合った人との関係を整理する順番を知ってからでした。勤務先が管理する名刺、CRM、顧客・過去取引の情報は使わず、個人として連絡してよい相手だけに絞りました。
日向さんは勤め先の許可範囲と守秘義務を確認し、プロフィールの見出しを「工場設備の保全に詳しい技術者」から「設備保全の経験を持つ技術者」に書き換えました。そのうえで、個人として連絡してよい知人へ一言添えてつながり直していきました。
やり方を変えてからは、届く声の質が変わっていきました。つながり直した相手から始まった相談は、この1年で延べ40人を超え、そのうち継続して設備の相談が来る相談者が3人まで増えました。金額の大きさよりも、名前で相談が届く関係が少しずつ増えていることを、日向さんは手応えとして話してくれました。
いまは、月に数件の相談に返信しながら、勉強会で学んだ順番を自分のペースで回しています。本業で見てきた現場の景色が、そのまま相談される専門性に変わっていく流れが定着しました。

よくある質問

Q.勤めながらLinkedInを使うと、会社に知られてしまいますか?
会社に知られないとは言い切れません。LinkedInのプロフィールは原則としてログインした会員から見え、設定によっては検索エンジンにも表示されます。変更通知を切っても、プロフィールを見た人には編集内容が表示されます。収入の有無にかかわらず、勤務先名の表示、発信内容、顧客への接触が規程や守秘義務に触れることがあるため、公開範囲と勤め先のルールを先に確認してください。
Q.フォロワーも実績もありません。それでも始められますか?
フォロワー数だけで決まるわけではありません。まずは個人として連絡してよい元同僚や知人とのつながりを整える方法があります。勤務先の名刺や顧客情報を個人の営業に流用せず、相手がつながるかどうかを選べる形にしてください。
Q.投稿は何を、どのくらいの頻度で書けばいいですか?
本業で「そんなの当たり前」と思っていることが、社外の人に役立つ場合があります。ただし、設備の弱点、契約条件、社内の失敗例など、勤務先や顧客を特定できる非公開情報は書けません。一般化できる知識だけを、無理のない頻度で発信してください。
Q.LinkedInと、XやFacebookはどう使い分ければいいですか?
XやFacebookは近況や関心事を広く交わす場で、LinkedInは仕事の経歴とスキルでつながる場という違いがあります。B2B、つまり企業や事業者を相手にした相談や顧問を考えるなら、相手も仕事の顔で見にくるLinkedInが向いています。まずは一つに絞って形にし、慣れてから他のSNSと役割を分けるほうが、勤めながらでも続けやすいです。
名刺交換を人脈のストック資産に変える順番

LinkedInで積み上げてきた実務経験を相談の入口に変えるときは、公開範囲、勤め先の規程、相手の意思を守りながら動かします。順番は次の三つに整理できます。
- プロフィールの見出し一行を「何を相談できる人か」へ書き換え
- 個人として連絡してよい知人との、接点を一言添えたつながり直し
- 機密を含まない専門分野の気づきの、無理のない頻度での継続発信
つながり直すなら、まずは個人として連絡してよい元同僚や知人を一人選び、以前の接点が分かる一言を添えてLinkedInで申請してください。現在の顧客や取引先への営業は、勤務先の承認なしに行わないことが大切です。
そうやって顔の見える相手から動かしていくと、待つだけだった数ヶ月が、相談の届く時間に変わっていきます。
LinkedInで動き出す入口は、新しい肩書きを手に入れることではなく、名刺交換で終わっていた関係を相談の届く人脈に組み替える順番です。
「自分には、会社の外で通用するものなんて何もない」と感じている方ほど、勤めながら積み上げてきた経験と、名刺の束に眠る人のつながりという資産を見落としているものです。その資産は、今日プロフィールの一行を書き換えるところから、少しずつ動き始めます。
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