記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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● 質問
春の異動で営業企画から総務系の部署に移ってから、仕事が急に暇になりました。定時までやることが見つからない日もあり、40代でこの状態は正直つらいです。
この空いた時間を起業準備に使ってもいいのでしょうか?

● 回答
「仕事 暇 つらい」。検索窓にそう打ち込む日が続いているなら、先にひとつだけお伝えします。仕事が減ったのは、あなたの価値が下がったからではありません。配置と業務量の問題です。
そのうえで本題に入ります。起業準備に充ててよいのは定時後と週末の自分の時間だけで、就業時間中の空きは対象外と考えるのが原則です。
この線引きさえ守れるなら、今の状態はむしろ追い風になります。良い面と危ない面を分けて見ていきます。
暇になった時間は起業準備の元手になる
まず良い面からです。閑職と呼ばれる状態には、残業続きの人が喉から手が出るほど欲しいものが揃っています。体力が残ったままの夕方と、頭が回る状態で迎えられる夜です。
外の働き方に目を向ける人が増えている、という事実もあります。総務省の労働力調査(詳細集計)2025年平均では、今の仕事のほかに別の仕事もしたい人を含む転職等希望者が1023万人にのぼりました。もっと働く時間を増やしたいという追加就労希望就業者も198万人と、前年より8万人増えています。
つまり多くの人は「動きたいのに時間が取れない」側にいます。時間が先に手に入っているのは少数派で、それ自体が元手です。腐らせるか育てるかは、ここからの設計で決まります。
就業時間中の準備が危ない理由
次に、目をそらしてはいけない面です。就業時間は、給与の対価として職務に専念する時間にあたります。多くの会社の就業規則には服務規律としてこの義務が明記されていて、仕事が暇かどうかは関係ありません。
- 会社の時間で進めない:
就業時間中の調べものや資料づくりは職務専念義務に反するおそれ - 会社の道具を使わない:
貸与パソコン・社用メール・社内データの私的利用は懲戒の根拠になり得る行為 - 社内で売り込まない:
同僚や取引先への営業活動は利益相反とみなされやすい行動
覚え方は「時間・道具・人間関係」の3つです。準備に使う道具と連絡先は、私物のパソコンと個人のアカウントに最初から分けておいてください。あとから分けようとすると、手間も危険も大きくなります。
定時後の1時間を「枠」で固定する
では、外の時間をどう使うかです。鍵は量ではなく、置き場所にあります。
拙著『会社を辞めずに朝晩30分からはじめる起業』でもこの点を取り上げていて、「毎日3時間やろう」と意気込むより、朝晩30分の小さな枠を毎日守るほうが続く、と書きました。準備を意志の力ではなく、時間割で動かす発想です。
時間が余っている人ほど、この枠決めが効きます。私が見てきた範囲でも、準備が続いた会員さんの多くは、曜日と時間帯を先に固定していました。選べる時間が広いままだと、人は今日の分を明日に回し続けてしまいます。
- 枠を固定する:
平日は定時後の1時間、週末は土曜午前の2時間など同じ時間帯で継続 - 中身を先に決める:
今週進める作業を3つまでに絞ったメモを週末に準備 - 外に出る日を作る:
週に1日は人に会う活動や見学に配分
異動を再起動の合図に変えた西岡さんの場合
起業18フォーラム会員の西岡さん(仮名・40代)は、春の組織替えで希望していない管理部門に移り、仕事量が一気に減りました。異動通知を受け取った日、「この会社に時間の使い方まで握られている」と感じ、数年前に止めていた起業準備を再開する決心がついたと話しています。
ただ、最初の数週間は社内の空き時間にこっそり調べものを進めていました。起業18フォーラムに入り、他の会員さんが時間と道具をきっちり分けて動いているのを見て、自分の進め方の危うさに気づいたそうです。就業規則を確かめ、会社では一切やらないと決めたうえで、定時後の1時間と土曜の午前だけに準備を寄せました。
西岡さんの本業は業務フローの整理です。その経験を生かし、小さな会社の事務まわりを整える単発相談から始めました。やがて相談先の求めで3ヶ月の継続契約に切り替えると、期末を迎えた契約のほとんどで更新が選ばれる状態が続いています。
社内で持て余していた時間は、外に持ち出した途端、商品を磨く時間に変わりました。配置は会社が決めます。けれど、定時後の使い道までは決められません。
手始めに、定時後に開かれている地元の創業イベントやコワーキングスペースの催しへ、見学のつもりで足を運んでみてください。動き出した人の顔ぶれを見るだけで、夜の1時間の中身が変わります。
社内失業という言葉に飲み込まれる必要はありません。会社が空けてしまった時間をどう扱うかは、線引きと枠の2つでほぼ決まります。

定時後すぐに走り出すのも、しばらく外を眺めてから決めるのも、どちらも間違いではありません。大切なのは、浮いた時間の使い道を会社ではなく自分で選んだという感覚です。
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