会社に知られずに起業準備したいです。隠す前提でよいのでしょうか?

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

● 質問

40代の会社員です。会社の外の活動から起業準備を始めたいのですが、就業規則が厳しい会社なので、できれば会社にばれないようにこっそり進めたいと考えています。

この発想で進めて大丈夫でしょうか?

起業前質問集

● 回答

「ばれない」発想で始めると、いつかバレた時に説明できない構造になります。「説明できる」発想に切り替えるところから始めるのが、半年後に困らない動き方です。ばれない前提で進めた起業準備は、必ずどこかで会社・家族・取引先のいずれかと衝突するからです。

厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(2018年策定・2022年改定)では、会社の外で収入を得る場合の労働時間通算・健康管理・秘密保持・競業避止などの取り扱いが整理されており、勤務先への申告と運用ルールが社会的に求められる方向に動いています。「ばれない」前提の活動は、こうした制度的な流れと逆行する設計になります。

拙著『朝晩30分 好きなことで起業する』で取り上げているのですが、起業準備で価値を生むのは資格でも肩書きでもなく、本業で当たり前にやってきた段取りや気配りそのものです。本業から切り離せない部分なので、ばれない発想で隠そうとすると、自分の強みも一緒に隠すことになり、商品の核が薄まります。

「説明できる」発想に切り替えるための3つの観点は次の通りです。

  • 勤務時間外の活動として明確に区切る:
    平日朝1時間と土曜半日など、本業時間と物理的に重ならない枠を最初に決める
  • 勤務先と競合しない領域を選ぶ:
    本業の取引先・直接の競合・社内機密が絡む領域は避け、別業界・別職種向けに商品を設計する
  • 1枚説明書を作っておく:
    何をする活動か・誰に売るか・勤務先と競合しない理由を、紙1枚で上司に説明できる状態にする

会員さんの北野さん(仮名・42歳・既婚・小学生の子1人・食品メーカーの商品開発担当)は、最初の1年を「ばれないように」匿名のブログで食品開発の知見を発信してきました。匿名で書いていたため読者は伸びず、月の問い合わせはゼロ件のまま停滞していたそうです。

起業18フォーラムで「ばれない発想は隠す時間と発信できない制約の二重コストがかかる」という指摘を受け、就業規則の社外活動条項を読み返したうえで、上司に届出をして実名活動に切り替えたとのことです。

北野さんの場合、就業規則を確認すると社外活動は届出制で禁止ではなく、上司は予想以上に肯定的でした。中堅食品メーカー商品開発担当者向けの月1回オンライン勉強会(参加費5,000円)を実名で開始し、準備14ヶ月目で月4万円、23ヶ月目には月13万円の継続収入になりました。

北野さんが振り返って言うのは、ばれない発想で匿名にしていた1年は読者0の壁を超えられなかったが、実名で動き出した瞬間に同業者からの紹介が回り始めた、ということでした。隠す時間とエネルギーを、商品の質と実名による信頼の積み上げに振り替えてみてください。

説明できる活動は、最初は社内で誰にも気づかれないほど小さく始めて構いません。月1件の有料相談・月2回の社外勉強会など、本業に支障の出ない範囲で始めてください。

本業の評価を下げないことが、長く続ける活動の前提条件です。在職を続けながらの起業準備は、最初の半年〜1年で本業の信頼を失うと、会社の外の活動自体が難しくなります。会社員時代の信頼は、起業後にも資産として持ち越せる目に見えない財産です。

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「ばれない」と「説明できる」は、半年後の自分の選択肢の数を大きく変えます。今夜のうちに、自分の活動を1枚の紙に書き出して「明日上司に説明できるか」で点検してみてください。

隠す前提を外すと、起業準備は小さくても前に進みやすくなります。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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