起業の失敗が怖い人へ|辞める前に決めておく3つの撤退ライン

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

起業に興味はあるけれど、失敗したら家族の生活まで巻き込んでしまう。そう考えると、どうしても最初の一歩が踏み出せない。そんな声を、これまで何度も聞いてきました。失敗が怖いという気持ちは弱さではなく、守るものがある人ほど自然に出てくる感覚です。今日は、その怖さそのものを小さくする具体的な方法をお話しします。

ポイント 「失敗が怖い」の正体は、確率の高さではない

失敗の怖さの正体は確率ではなく漠然とした想像

心理

失敗が怖いと感じるとき、頭の中で何が起きているでしょうか。多くの場合、「失敗」という言葉が漠然としたまま、最悪の場面だけがふくらんでいます。会社を辞めて、貯金を使い果たして、家族に迷惑をかけて、という想像です。

ところが、その想像のどこにも具体的な数字がありません。怖さの多くは、起きるかどうかわからないことを、起きた前提で考えてしまうことから生まれます。確率が高いから怖いのではなく、輪郭がないから怖いのです。

輪郭をつけてしまえば、怖さは扱えるサイズに変わります。まずは「失敗とは具体的に何がどうなることか」を、想像から事実に引き戻すところから始めましょう。

ポイント 起業の失敗は「全部を失うこと」ではない

創業5年後も8割が継続するという失敗の実態

フリーランス

「失敗イコール全財産を失う」というイメージは、実態とずれています。中小企業庁の2023年版中小企業白書によれば、創業後5年を経過した日本企業の生存率は80.7%でした。ただし同白書は、データベースの性質上、実際より高めに算出されている可能性にも触れています。1年で半数が消えるような世界ではありません。

会社を辞めずに起業準備を進める場合、たとえ事業がうまくいかなくても、失われるのは準備に使ったお金と時間だけです。給料という生活の土台は、そのまま残ります。

在職のまま小さく試すなら、ここはもっとはっきり言えます。どれだけ試行錯誤に失敗しても、生活の土台そのものは崩れません。

それでも怖さがゼロにならないのは、数字の話と、自分の生活の話がつながっていないからです。本当に必要なのは、「失敗しても、ここまでは絶対に守られる」という線を、自分の手で引いておくことです。

ポイント 辞める前に決めておく3つの撤退ライン

予算・期間・出口を始める前に決める撤退設計

便利屋

拙著『会社を辞めずに朝晩30分からはじめる起業』に、始める前に「予算・期間・出口」の3つを仮決めしておく、という考え方が出てきます。撤退ラインとは、この3つを数字と言葉にしておくことです。

予算ライン:使ってよいお金の上限

起業準備に使ってよいお金の総額を、先に決めます。生活費や教育費とは別の財布から、無理のない範囲で区切ります。日本政策金融公庫の2024年度新規開業実態調査では、開業費用が「250万円未満」の人が20.1%を占めています。小さく始めるなら、数万円から十数万円でも十分に検証できます。

期間ライン:見直すまでの時間

「いつまでにどうなっていたら続ける」という時間の区切りを決めます。漠然と「しばらく」ではなく、たとえば1年後の春に状況を見て判断する、というように日付で決めます。期間が決まっていれば、うまくいかない時期も「まだ途中」と落ち着いて見られます。

出口ライン:やめる・続けるの判断基準

期間ラインまで来たとき、何を見て判断するかを先に決めます。最初の1人のお客様に出会えたか、小さな手応えがあったか。基準が事実で決まっていれば、感情に流されずに判断できます。

  • 予算:起業準備に使ってよい上限額(生活費とは別の財布)
  • 期間:状況を見直す日付(「1年後の春に判断」など)
  • 出口:続ける・やめるを決める具体的な事実(最初の顧客の有無など)

この3つを紙に書いた瞬間、「最悪でもここまで」が見えます。怖さの輪郭が決まり、扱えるサイズに変わります。

ポイント 曖昧な基準を数値に変えた会員さんの話

曖昧な基準を数値に置き換えた会員さんの例

女性

起業18フォーラム会員のTさん(仮名・47歳・電機メーカーの営業)は、最初、自己流で「1年やってダメなら諦める」という基準で起業準備を始めました。ところが、この基準では何も決まりませんでした。「ダメ」が何を指すのか曖昧で、毎月、続けるか迷うだけで時間が過ぎていったのです。

転機は、起業18フォーラムの勉強会で予算・期間・出口を数値に置き換えたことでした。予算は準備費15万円まで、期間は翌年3月まで、出口は「継続して買ってくれるお客様が2人いるか」。基準がはっきりすると、迷う時間が消え、行動に向かう時間が増えていきました。

  • 「うまくいったら」「ダメだったら」を言葉のまま放置する
  • 退職・開業届・固定費を、検証より先に大きくしてしまう
  • 判断する日付を決めず、気分で続けたりやめたりする

Tさんはその後、社内で頼られてきた仕事を棚卸しし、製造業の営業向けに提案資料を整える小さな仕事から始めました。在職のまま、18ヶ月目には月15万円ほどの収入が続くようになっています。「うまくいったら」「ダメだったら」という曖昧な決意を、数字と日付に置き換えてください。それだけで、迷う時間が行動の時間に変わります。

ポイント まず今週、紙に1枚書き出す

予算と期間と出口を紙に書き出す今週の一歩

point

怖さを小さくする方法は、勇気を出すことではありません。守られる範囲を、先に自分で決めておくことです。今週のうちに紙を1枚用意して、予算・期間・出口の3つの欄をつくり、思いつく数字を書き込んでみてください。

書いてみると、思っていたより小さな金額で試せること、生活の土台は崩れないことが見えてきます。完成度は気にせず、20点の下書きのつもりで書いてください。書き直しながら精度を上げていけば十分です。

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失敗が怖いままでも、撤退ラインが決まっていれば、人は動けます。怖さと一緒に、それでも一歩を踏み出していきましょう。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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