記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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静岡で起業準備を始めたい。そう考える方が、ここ数年じわじわ増えています。東京と名古屋の中間で、新幹線通勤も視野に入る独特の立地。お茶や水産加工、プラモデルなど、ほかの政令市にはない地場産業。
一方で、地元のサプライチェーンに長く関わってきた方ほど、自分の経験を起業の商品にどう載せ替えればいいかで迷うようです。
静岡で起業の入口を作るときの順序をお伝えします。
静岡で起業準備を始める前に押さえる地域の構造

東京と名古屋の中間という強み
静岡市は東京駅から新幹線(ひかり)で約60分、名古屋駅まで約50分。出張ベースで両方の市場に足を運べる位置にあります。会社員時代の取引先が首都圏中心の方も、退職してから商圏を切り替えずに起業準備を続けやすい街です。商圏を2つ持てる立地は、政令市の中でも実は限られています。東京の単価感を維持しつつ生活コストを抑えられる点は、独立1年目の手元資金を守るうえで地味に効いてきます。
お茶・ものづくりの集積地
静岡県は茶の栽培面積・荒茶産出額がともに全国上位の産地です。農林水産省『令和7年産一番茶の摘採面積、生葉収穫量及び荒茶生産量』では、静岡県の一番茶の荒茶生産量は8120トンで、令和7年に初めて鹿児島県に首位を譲り全国2位となりました。プラモデル産業ではタミヤやバンダイホビーセンターなど10社以上のメーカーが市内に集積し、プラスチック模型の出荷額は全国シェアの約8割を占めています。地場のものづくりが残っている街は、起業の素材として「言葉で説明しなくても伝わる商品」を作りやすい環境です。
- 東京・名古屋への新幹線アクセス(両方への日帰り商圏)
- 茶業の全国2位ポジション・一番茶の荒茶生産量8120トン
- プラモデル産業の集積(出荷額全国シェア約8割)
- 清水港の水産加工・東名沿線の物流拠点
- 温暖な気候による屋外イベントのしやすさ
ただし「街の魅力=起業のしやすさ」ではありません。地場産業が強い街ほど、外からの新規参入は弾かれやすく、地元のしがらみで動きが鈍ることもあります。「静岡だから何かしらいける」と漠然と構えると、立ち上がりで失速します。地場の素材をどう使うかを決めずに動き出すと、地元商圏の値段感に引きずられて、結果として東京・名古屋の単価帯から遠ざかっていきます。
静岡市で使える創業支援制度の入口

静岡市は、産業競争力強化法に基づく創業支援等事業計画の認定を平成26年3月20日に経済産業大臣・総務大臣から受けています。市内で起業準備をする方が使える制度の入口は、いくつかの公的機関に分かれています。それぞれの役割を最初に把握しておくと、相談先で迷う時間が減ります。
B-nest(静岡市産学交流センター・中小企業支援センター)
「B-nest(ビネスト)」はペガサート6階・7階に入る公的機関です。中小企業診断士・産学連携コーディネーターが常駐し、創業希望者の窓口として機能しています。事業計画作成、資金計画、SNS活用などのテーマ別セミナーが定期開催され、起業準備の初期段階から経営課題の壁打ちに使えます。場所と運営体制が決まっているので、相談員が変わっても情報が引き継がれる仕組みです。
特定創業支援等事業の証明(登録免許税の軽減)
B-nest・しずおか焼津信用金庫・静岡商工会議所などで「経営・財務・人材育成・販路開拓」の4テーマについて1ヶ月以上・4回以上の支援を受けると、市が発行する証明書を取得できます。この証明があれば、株式会社設立時の登録免許税が15万円から7万5,000円に軽減され、信用保証協会の創業関連保証も事業開始6ヶ月前から利用できるようになります。日本政策金融公庫の新規開業支援資金の貸付利率引き下げ対象にもなる点が大きいです。
地域創生起業支援金(最大200万円)
静岡県内で社会的事業を新たに起業する方向けに、公益財団法人 静岡県産業振興財団が「地域創生起業支援金」を運営しています。補助率は対象経費の2分の1以内、上限額は200万円。地域課題の解決を目的とした事業が対象で、応募要件・採択枠は年度ごとに調整されます。お茶業界・水産加工業界の人手不足解決、地方の高齢化に対応するサービスなど、静岡らしい地域課題を絡めた事業計画と相性が良い制度です。
- B-nest:起業初期相談・事業計画策定セミナー・産学連携支援
- 特定創業支援等事業の証明:登録免許税15万円→7万5,000円
- 地域創生起業支援金:補助率1/2・上限200万円
- 日本政策金融公庫の新規開業支援資金(貸付利率の引き下げ対象)
- 静岡県創業者育成施設(インキュベートセンター・技術相談に隣接)
これらの制度は「自分が何を売るか」が決まってから初めて使える道具です。商品も顧客像も漠然のまま窓口に行っても、相談員に方向性まで決めてもらうことはできません。制度の存在は知っておく価値がありますが、使う順番は最後のほうにある、と覚えておいてください。
静岡の素材を起業に乗せる「商品の4つのカタチ」

拙著『起業がうまくいった人は一年目に何をしたか?』に、「商品には4つのカタチがある」という考え方が出てきます。①モノを渡す/②やってあげる(代行)/③教えてあげる(教育)/④場・機会を提供する。同じ「お茶」「プラモデル」「駿河漆器」という素材でも、どの形に乗せるかで利益率も商圏も変わってきます。
①モノを渡す:競争密度が一番高い領域
静岡で起業を考えるとき、最初に思い浮かぶのが「お茶を売る」「プラモを売る」のモノ販売です。けれどモノ販売は地場の老舗や量販店との価格競争になりやすく、初期在庫の負担も大きい領域です。「自分のほうが詳しい」自負があっても、楽天やAmazonの上位陳列は資本力で決まる世界。モノで勝負する場合は、量販店が扱えない超ニッチな品種・限定ロットに絞り込む覚悟が必要です。
②やってあげる:地元事業者の手間仕事を引き取る
お茶業界・水産加工業界・プラモメーカーなど、地場には人手不足の中小事業者がたくさんあります。EC運営代行、商品撮影、SNS運用、配送業務委託、ふるさと納税対応の事務代行など、地元事業者の手間仕事を引き取るタイプの起業は競争が薄い領域です。地元の商習慣を会社員時代に体感している方ほど、初対面の事業者にも「言葉が通じる」状態で入っていけます。
③教えてあげる:体験ニーズと相性が良い
静岡には「お茶を急須で淹れる文化」「プラモデル組み立ての技術」「駿河竹千筋細工の工芸技術」など、教える素材がたくさんあります。観光庁の地方観光統計でも、地方都市の体験型観光は近年伸び続けている領域です。地元の高齢職人さんとペアを組んで「教える側」に回るアプローチは、シニア起業の組み立て方とも相性が良く、最初の収益までの距離が短くなります。
④場・機会を提供する:オンラインも含めた場づくり
静岡駅近くの空きビル、清水港周辺の倉庫、駿府城公園の周辺施設などのリアルな場と、ZoomやYouTubeなどのオンラインの場を組み合わせて、地元の素材と人をつなぐ仕事です。お茶・プラモ・駿河漆器など、それぞれの愛好家コミュニティを「場」で束ねる動きは、静岡だからこそ作りやすい起業形態です。リアルとオンラインを行き来できる立地条件は、強みの1つです。
- お茶のオンライン茶会・急須の使い方教室(教える×場)
- 地元プラモメーカー向けの組み立て代行・撮影代行(やってあげる)
- 静岡市民向けの駿河竹千筋細工ワークショップ(教える)
- 清水港観光の地元ガイド・コンシェルジュ(場・機会)
- 地元飲食店向けのSNS運用代行・お茶メニュー開発(やってあげる)
- 東京・名古屋の企業向け静岡視察ツアー設計(場・機会)
静岡で起業の道筋を作るとき、最初に決めるのは「何を売るか」ではなく「4つのうちどの形で売るか」です。素材の選定はその後で十分間に合います。形を決めずに素材だけ抱えて動くと、結果として「モノ販売」に流れ着いて、地場の老舗と価格を並べる羽目になりやすいのです。
静岡ゆかりの会員さんの体験談

起業18フォーラムには、静岡県在住の会員さんも何名かいます。なかでも、自己流の失敗から学び直したケースを紹介します。
Iさん(仮名・50代男性)は、静岡市葵区で23年お茶問屋の営業をしてきた方です。退職前に個人でお茶のネット通販を始めたものの、楽天モールでは大手量販店と価格が並び、初年度に120万円分の在庫を抱えました。「お茶のことなら誰よりも詳しい」自負があったぶん、価格勝負の領域でつまずいたショックは大きく、半年ほど動きが止まったそうです。
その後、起業18フォーラムに参加し、勉強会で「商品の4つのカタチ」を学び直しました。「モノを売る」から「教える×場」へ商品設計を切り替え、オンライン茶会と急須の使い方教室の組み合わせに方向性を変えています。月収はゼロから始まり、6万円、13万円と段階的に上がり、現在は会社員のまま月収15万円のペースで継続中です。在庫を抱える形ではなく、参加費と教材費の組み合わせで成立する設計に変わった点が大きかったとご本人が話していました。
- 失敗:楽天モールでお茶通販を自己流で開始・在庫120万円
- 転機:起業18フォーラム参加・勉強会で「商品の4つのカタチ」を学び直し
- 修正:「モノ販売」から「オンライン茶会+急須教室」(教える×場)へ転換
- 結果:月収ゼロ→6万円→13万円→15万円・会社員継続中
同じ素材でも乗せ方を変えれば、商圏も粗利も変わります。Iさんが大手量販店と価格を並べていた間と、教える側に回ってからの利益率は、ざっくり10倍ほど違ってきました。素材は変えていません。お茶は、ずっとお茶のままです。
静岡で動き出すための順番

最後に、静岡で起業準備を始める方の動き方をまとめます。地元の支援制度や補助金は強力ですが、それらは「方向性が決まったあとに使う道具」です。順番を間違えると、相談員に渡す材料がない状態で時間ばかりが過ぎていきます。
最初のステップは、起業18フォーラムの動画やセミナーで全体像をつかむことです。商品の4つのカタチ、知識・人脈・資金のバランス、売上ステージごとの動き方など、ベース部分の言語が揃ってから初めて、自分の素材が静岡という街でどう乗るかが見えてきます。動画・セミナーで土台を作り、自分の方向性が定まってからB-nestや特定創業支援等事業の証明を取りに行く順序をお勧めします。勉強会で「自分の商品はどの形か」を言語化できると、相談員との会話の解像度が一段上がります。

静岡という街は、地場の素材と外への商圏を両方持てる稀有な場所です。地元の風景に頼りすぎても、外の市場ばかり追いかけても、どちらも片足で立つことになります。両足で立てる起業形態を、自分の経験と素材から組み立ててください。
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