記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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「塾を起業したい」と考えたとき、多くの人が最初に思うのが「資格は必要か」「どこに教室を借りるか」「生徒は集まるのか」という問いです。でも、その順番が少し違う。塾の起業で最初に決めるべきは「どんな塾にするか」ではなく、「自分の経験が誰の役に立つか」です。
26年間で60,000人以上の起業準備を支援してきた現場で、教育経験を活かして独立した人たちに共通していたのは、特定の「誰か」に刺さる強みを持っていたことでした。
この記事では、塾起業を在職中から動き出すための手順を、塾業界特有の視点でまとめます。
教育経験がそのままビジネスになる理由

「教えるのが好き」は起業の入口ではない
塾業界の市場規模は2023年時点で約5,812億円。10年前と比べると44%以上も増えています。少子化で子どもの数は減っているのに、市場が拡大し続けている理由は一つです。「子ども1人あたりにかける教育費が増えている」から。これは、ニーズが「量」から「質」に変わっていることを意味します。
親御さんが求めているのは「とにかく塾に通わせる」ではなく、「この子に合った指導をしてくれる場所」になっています。大手塾が対応しきれていない「個別のニーズ」こそ、個人塾起業の本命フィールドです。
あなたが塾講師として積み上げてきた経験の中には、数値化できない「得意な生徒の層」があるはず。成績下位から伸ばすのが得意か、難関校受験のサポートが得意か、勉強嫌いな子のやる気を引き出すのが得意か。その違いが、競合大手と差別化できる「小さな違いの掛け合わせ」になります。
- 成績下位層の底上げが得意 → 「苦手克服専門塾」というポジション
- 難関中学・高校受験の指導実績あり → 「受験特化の少人数塾」
- 勉強嫌いな子のモチベーション管理が得意 → 「自己肯定感を育てる学習支援」
- 英語・理数系などの特定科目に自信あり → 「○○科目専門塾」
塾起業の準備ステップ

ステップ1:「誰に」「何を」を言葉にする
塾起業の準備で最初にやることは、物件探しでも備品の調達でもありません。「自分が一番役に立てる生徒は誰か」を言葉にする作業です。これが曖昧なまま開業しても、集客が機能しません。
「中学2年生で数学が苦手な子」のように、具体的な一人を思い浮かべて起業を設計すると、メッセージが刺さります。「どんな子でも教えます」は、逆に誰にも刺さらない。
ステップ2:ゼロコストで自分の指導を検証する
在職中にできることがあります。まず、知人や元保護者の子ども向けに「お試し個別指導」を行い、自分の強みが本当に求められているかを確認すること。月に数名から始め、感想と結果をフィードバックとして集める。この段階では収益よりも「自分の指導で結果が出た」という事実を積み上げることが目的です。その小さな実績が、最初の信用になります。
ステップ3:固定費なしで収益の見通しを立てる
個人塾は生徒数が直接売上に連動するシンプルな構造です。月謝15,000円 × 20名 = 月30万円。まずは10名規模から始められる環境を先に整えること。「生徒が安定するまでは教室を借りない」と決めておくと、固定費の罠にはまりません。自宅の一室や地域のコミュニティスペースを活用するのが初動の正解です。
ステップ4:必要な手続きを事前に把握する
塾の開業に特別な許認可は原則不要です。ただし、継続的な指導契約を結ぶ場合は特定商取引法の「継続的役務提供」に該当するケースがあり、契約内容の書面交付や解約ルールの整備が必要になります。また、自治体によって独自の規制がある場合もあるため、開業予定地の条件は事前に確認しておくと安心です。
経験別・塾起業のアイデア

学校の先生・塾講師経験がある場合
「科目の専門性 × 指導スタイル × 対象学年」の組み合わせで差別化できます。「公立小学校の算数専門・低学年向け」「中学受験対策の理科特化」のような掛け合わせは、大手が作りにくい独自ポジションです。教員免許があれば保護者からの信頼も得やすく、最初の集客でアドバンテージになります。
企業で理系・文系の専門職経験がある場合
エンジニア経験者が「プログラミング × 数学思考」を組み合わせた塾を作る、法務・財務経験者が「大学入試の現代文・小論文特化」で塾を開くケースが、起業18フォーラムの会員さんの事例にも出てきます。学校の成績だけでなく「実務で使う視点から教える」という切り口が、高校生や中学生の親御さんに刺さることがあります。
オンライン指導という選択肢
地方在住でも、オンラインで全国の生徒を集めることは現実的な選択肢になっています。固定の教室を持たない分、初期投資をほぼゼロに抑えることができます。「地方在住 × オンライン × 特定科目の専門家」という組み合わせは、都市部の大手塾と真っ向勝負を避けられる差別化のひとつです。
塾起業で多い失敗パターン

失敗①:生徒が来る前に教室を借りてしまう
「塾を開くなら教室が必要」という思い込みで、生徒が集まる前に物件を契約してしまうケースがあります。2024年の学習塾の倒産は53件、休廃業・解散は195社。廃業の背景には、固定費(賃料・光熱費・人件費)の重さが共通して見られます。開業初期に固定費を重くすると、生徒数が思うように伸びなかったときの撤退コストが大きくなります。
失敗②:地域の競合状況を見ずに参入する
自分の強みを活かせるとしても、半径2km以内にすでに同じポジションを取っている個人塾があれば、価格競争に引きずり込まれます。商圏調査は、教室を開く前に必ずやること。「いない場所に出る」か「競合にない強みで出る」か、どちらかの戦略が必要です。これを怠って「教えることは得意なのに生徒が集まらない」という状況に陥るケースが、支援現場でも目立ちます。
失敗③:指導力への自信が集客の自信と混同される
教えることは得意でも、「自分を売り込む」行動が苦手で半年間生徒がゼロだったという声は、起業18フォーラムの会員さんの中でも珍しくありません。指導力と集客力は別のスキルです。地域のコミュニティ、SNS、既存保護者からの紹介、チラシ配布など、集客の方法を複数準備しておくことが、最初の壁を越えるカギです。
在職中から動き出すためのマインドセット

「完璧な塾を作ってから開業しよう」と思っていると、永遠に動けません。初めての生徒は、完成した教室ではなく「この人に教えてもらいたい」という信頼から来るからです。在職中から少しずつ動き出す、それだけでいい。完璧主義より、まず動くこと。
塾業界で個人が生き残るための構造は、大手には作れない「顔の見える指導」です。地域の保護者が「あの先生に任せたい」と思う一人になることが、長期的な個人塾の強みになります。
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