看護師の起業準備ガイド|医療現場の経験を収入に変える具体的な手順

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

「看護師の経験を活かして、自分で何かできないだろうか。」夜勤明けの疲れた体で、そんなことを考えたことはありませんか。厚生労働省の「衛生行政報告例」(2024年末)によると、就業看護師は約136万人。そのうち正規雇用の離職率は11.3%(日本看護協会「2024年病院看護実態調査」)で、毎年15万人以上が職場を離れている計算になります。やりがいはあるのに心と体の限界を感じ、別の働き方を模索する看護師は決して少なくありません。

ただ、「看護師が起業なんてできるのか」という不安もあるでしょう。この記事では、看護師が現職のまま起業準備を始める手順を、シフト勤務の働き方に合わせてお伝えします。

看護師起業

ポイント 看護師の「当たり前」がビジネスになる理由

医療現場で磨かれた力の正体

看護師起業

「起業したいけど、看護の知識しかありません」 起業相談でこの言葉を聞かない時はありません。それほど起業18にも看護師さんは多いです。

ですが、その考えは誤解です。

看護師が毎日やっていることを分解してみてください。患者さんの表情や数値のわずかな変化を見逃さない観察力。ご家族に病状をわかりやすく伝える説明力。医師、薬剤師、理学療法士との多職種カンファレンスを回す調整力。夜勤と日勤が入り混じるなかで業務を回すタイムマネジメント力。これらは、ご本人が「仕事だから当然」と思っているだけで、ビジネスの世界ではそのまま高い価値を持つ力です。

私はこれを「名もなき強み」と呼んでいます。資格や肩書きには載らないけれど、現場で磨かれてきた本物の力。看護師の起業は、この「名もなき強み」を見つけるところから始まるのです。

看護師のどんな経験がどのビジネスにつながるか、よくあるパターンを挙げてみます。

  • 傾聴・共感の経験 → 健康カウンセリング、コーチング
  • 患者指導・退院指導 → 健康系セミナー講師、オンライン講座
  • アセスメント・記録作成 → 医療ライター、監修業務
  • 多職種連携・申し送り → チームマネジメント、コンサル系業務
  • 夜勤込みのスケジュール管理 → 不規則な時間でも回せる事業設計

ポイント 看護師が起業準備を始める4つのステップ

シフト勤務を続けながら進められる手順

看護師起業

「いつ準備するの?」これが看護師の起業準備で最初にぶつかる壁です。日本看護協会の調査では、一般病棟の看護師のうち夜勤時間が月72時間を超えている方が34.3%もいます。夜勤明けはとにかく眠い。日勤の後は疲れて何もしたくない。休みの日はたまった家事に追われる。この現実を無視した起業ノウハウは、看護師には通用しません。

ここでは、シフト勤務の看護師でも無理なく進められる手順を、起業18フォーラムの実例をもとにお伝えします。

ステップ1:看護師経験の棚卸しをする

まず取り組んでいただきたいのは、看護師としてやってきたことの書き出しです。ただし「循環器科で5年勤務」のような履歴書的な情報ではありません。

書き出すのは、こういうことです。「術後せん妄の患者さんの対応が得意だった」「糖尿病の生活指導で患者さんに感謝された」「プリセプターとして新人指導をやっていた」「師長との間に挟まれて調整役をしていた」。日々の業務の中で、人から頼られたり、感謝されたりした場面を思い出してください。

この棚卸しには「3つのチェック」を組み合わせると効果的です。

  • 一人で始められるか?
  • 一人で続けられるか?
  • 大きなお金がかかりませんか?

看護師はシフトの変動が大きいため、この3つを満たすアイデアを選ぶことが特に重要になります。「サロンを借りて施術する」「スタッフを雇って教室を開く」といったプランは、夜勤が入った月にいきなり破綻するリスクがあります。

ステップ2:最初の商品を小さく作る

棚卸しで見つかった強みを、一つだけ商品にしてみます。ここで大事なのは、「完璧なもの」を作ろうとしないこと。

たとえば、こんなサイズ感です。「糖尿病の食事管理に困っている人向けに、30分のオンライン相談を3,000円で提供する」「看護師の転職に悩んでいる人向けに、60分のキャリア相談を5,000円で受ける」。起業18フォーラムでも、最初の商品は「これで本当にお金をもらっていいの?」というくらい小さなものから始めた方が、結果的にうまくいくケースが圧倒的に多いです。

ステップ3:知り合いに声をかけてテストする

商品ができたら、まず身近な人に試してもらいます。同僚の看護師、看護学校の同級生、患者さんのご家族で信頼関係のある方。無料モニターでもかまいません。

このとき確認すべきは「自分が提供したいもの」と「相手が求めているもの」のズレです。看護師の方はアセスメントに慣れているので、相手の反応を観察して修正するのが得意な方が多いと感じています。

ステップ4:看護師の専門性で発信を始める

商品が固まってきたら、ブログやSNSで発信を本格化させます。看護師の発信には、他の職種にはない強みがあります。それは「医療の専門知識を一般の人にわかりやすく伝えられる」という点です。

患者指導や退院指導で培った「かみ砕いて説明する力」は、そのまま情報発信の武器になります。健康情報を発信するライバルは多くても、現役看護師が書いているという事実だけで、読者からの信頼度は段違いです。

ポイント 看護師の起業アイデア|経験別に選ぶ方向性

診療科・経験年数別のビジネス候補

看護師起業

「何で起業すればいいかわからない」という看護師の方には、これまでの診療科や経験から逆算して考えることをおすすめしています。

健康相談・カウンセリング系

内科系、精神科、訪問看護の経験がある方に特に向いています。オンラインで完結するため、夜勤の合間でも予約を入れやすいのが利点です。

ただし、保健師助産師看護師法に基づき、「診断」や「治療」にあたる行為は医師の指示なく行えません。提供するのはあくまで「健康に関する情報提供」「生活習慣のアドバイス」の範囲。この線引きを明確にした上でサービスを設計してください。

医療・健康ライター

記録作成やサマリー作成が得意な方に向いています。医療系Webメディアでは正確な知識を持つライターの需要が高まっていて、一般的なWebライターの文字単価が1〜2円程度のところ、看護師資格を持つ医療ライターは文字単価2〜5円が相場です。パソコン1台で始められ、シフトの空き時間に執筆できるため、看護師との両立がしやすい分野です。AIに書かせた記事と違い、「国家資格者監修」とできるのが強みになります。

セミナー講師・研修講師

プリセプター経験、教育委員会の経験がある方はこの方向性を検討してみてください。看護師向けのスキルアップ研修、企業向けの健康経営セミナー、介護者向けの勉強会など、「教える」仕事は看護師の説明力がそのまま活きます。最初はオンラインで3人程度の少人数から試してみるのがおすすめです。

経験別のおすすめ一覧
  • 小児科・産科経験 → 産後ケア相談、育児アドバイザー
  • 精神科・心療内科経験 → メンタルヘルスカウンセリング
  • 訪問看護経験 → 在宅介護の相談サービス、家族向け介護指導
  • 救急・ICU経験 → 医療系ライター(急性期の知見は希少価値が高い)
  • 管理職・師長経験 → 看護師向けキャリアコーチング、管理者研修

差別化は「小さな違いの掛け合わせ」で生まれます。「看護師」×「ICU経験」×「子育て中」のように、自分ならではの組み合わせを見つけてください。大きな差別化を狙う必要はありません。

ポイント 看護師の起業でありがちな失敗パターン

医療職だからこそ陥りやすい落とし穴

看護師起業

看護師の方に特有の失敗パターンがいくつかあります。他の職種ではあまり見ない傾向です。

「もっと資格を取らないと」症候群

看護師の方に最も多い失敗がこれです。「カウンセラーの資格を取ってから」「コーチングの認定を受けてから」と、資格取得に何十万円もかけてしまう方が後を絶ちません。

看護師はもともと勉強熱心な方が多いので、「学んでから動く」が染み付いています。しかし起業では順序が逆です。まず今の知識と経験で小さく始めて、足りないと感じたら学ぶ。この順番を間違えると、資格ばかり増えて売上はゼロという状態に陥ります。

「患者さんのために」で値段をつけられない

看護師は「相手のために尽くす」マインドが強い職種です。それ自体は素晴らしいことですが、起業においては「無料でやってあげたい」という気持ちが値付けのブレーキになります。

正直に言います。適正な対価をいただけなければ、サービスは続けられません。起業18フォーラムの看護師の相談者で、最初に無料で始めた方のうち、1年後もサービスを継続できていた方はごくわずかでした。「お金をいただく=悪いこと」という思い込みを手放すことが、看護師の起業では大きなハードルになります。

夜勤明けに頑張りすぎて体を壊す

「夜勤明けの時間を活用しよう」と、寝ずに起業準備に取り組む方がいます。看護師であれば、睡眠不足が判断力や免疫に与える影響は十分わかっているはずです。体を壊してしまっては、本業にも起業準備にも支障が出ます。

  • 資格取得に走る前に、今の経験で始められることを探す
  • 無料提供は「テスト期間」のみ。早い段階で値段をつける
  • 夜勤明けの起業準備は禁止。休日の短時間に集中して取り組む
  • 就業規則と保助看法の範囲を事前に確認する
  • 一人で抱え込まず、同じ志の仲間とつながる

ポイント 看護師の起業は「辞める」ではなく「広げる」

医療現場の経験を別の場所で届ける選択

ポイント

看護師の起業は、看護師を「辞める」ための準備ではありません。病院の中だけで提供していた自分の力を、病院の外にも届ける手段です。「辞めるか続けるか」の二択で考える必要はありません。

看護師として積み重ねてきた経験は、あなたが思っている以上に、誰かの役に立つ力を持っています。患者さんの不安を和らげてきたあの力は、起業の世界でもそのまま通用します。

まずは自分の棚卸しから始めてみてください。「自分には何もない」と思っていた方が、書き出してみると止まらなくなる。そういう場面を、私は何度も見てきました。起業18フォーラムでも、看護師をはじめ医療従事者の方の起業準備を一緒に考えていきましょう。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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