お金がない人を相手にした商売の成り立たせ方|支払う人を変える6つの方法

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

起業18の新井です。毎日、たくさんの起業を目指す皆さまのご相談に応じています。

起業を考える方は、優しい方が多いです。だから「困っている人を助けたい」という気持ちから事業を始めます。ビジネスは突き詰めれば、相手の「痛みからの逃避」や「快楽の追求」をお手伝いすることなので、その動機はまったく正しいものです。

ただ、その「困っている人」のお困りごとが、ほかでもない「お金がない」だったとき、話は少し難しくなります。

経理と起業

払えるのに「そんなお金は出せない」と価値を認めていない人は、ここでは別の話です。本当に支払う余力がない人を助けたいとき、民間の事業者にできることは何か。これが今日のテーマです。

商売である以上、対価をいただかないと成り立ちません。あなたも勤め先で「今月から給料はなし」と言われたら、その仕事を長くは続けられないはずです。

私自身、過去にある女性の起業相談をお受けして、初回のお試しのあとに次のご案内をしたところ、こう言われたことがあります。

金取んのかい!
人が困っているのに手のひら返しやがって!
そんな中途半端な仕事ならやらんでよし

と。

ですが、私たちは行政でもボランティアでもありません。

利益が出なければ倒れてしまう、民間の事業者です。善意だけでは、助けたい人を助け続けることすらできなくなります。

では、支払う余力のない人を助けたいと思ったとき、民間の事業者には本当に打つ手がないのでしょうか。

ポイント お金のない人を助けたいなら「払う人」を変える

先に答えを言ってしまいます

保険営業

サービスを受ける人 ≠ お金を払う人

この形でかまわないのです。支払う余力のない人からは受け取らずに済むよう、代わりに払ってくれる相手を探せばいい、ということです。孫のランドセルを、おじいちゃんが買ってあげるのと同じ構図です。

これは決して特別な発想ではありません。受け取る相手をずらすこの考え方は、いまの世の中では「受益者負担をずらす設計」や「第三者課金」と呼ばれ、多くのサービスを支えています。民放のテレビを思い浮かべてください。視聴者は無料で番組を見ますが、その費用は広告主が肩代わりしています。

では、サービスを受ける本人以外で、お金を出してくれるのは具体的にどんな相手でしょうか。次の6つが代表的です。

ポイント 現代の収益モデルに翻訳する

6つの「払ってくれる相手」

仲間

古くからある考え方ですが、いまの収益モデルの名前に置き換えると、自分の事業にどう当てはめるかが見えてきます。

1.企業(スポンサー・広告主)
受益者の代わりに広告主が払う形です。テレビやYouTube、無料アプリがこれにあたります。基本を無料で開放し、一部の有料機能や広告で稼ぐ「フリーミアム」も同じ発想です。

2.行政(補助金・委託)
補助金や助成金、自治体からの事業委託で、利用者の負担を税で分担する形です。子育て支援や就労支援の現場では、利用者が無料でも事業者には公費が入る仕組みが広く使われています。

3.親族(扶養・ギフト)
冒頭のランドセルの例です。習い事の月謝を祖父母が出す、教材を親が買う。使う人と払う人が家庭の中で分かれています。

4.知り合い(贈り物・ギフティング)
本人ではなく、その人を応援したい誰かが代わりに買う形です。出産祝いやお見舞いの品、最近ではオンラインで贈れるギフトサービスもここに含まれます。

5.寄付・カンパ
受益者ではなく、活動に共感した人が資金を出す形です。寄付で運営されるNPOや任意団体が代表例です。

この寄付という出し手は、いまや無視できない大きさになっています。日本ファンドレイジング協会が2025年12月に発行した「寄付白書2025」によると、ふるさと納税を含む2024年の個人寄付総額は2兆261億円と過去最高で、寄付をした人の割合(寄付者率)も44.5%にのぼりました。

ここから読み取れるのは、「支払う本人」以外に財布を開く人が、社会の側に確実に存在するということです。払えない人を前にあきらめる前に、その活動に共感する第三者へ呼びかける道が、現実の選択肢として広がっています。

6.クラウドファンディング
寄付や呼びかけをインターネット上で広げた形です。「購入型」「寄付型」「融資型」と性格が分かれますが、いずれも不特定多数から少額ずつ資金を集めます。国内の購入型は、いまや年間で数百億円規模の支援が動く市場に育っています。

整理すると、1は営業、2は申請、3と4はビジネスモデルの工夫、5と6は呼びかけ。あなたの事業で「払う本人が払えない」と感じたら、この6つのどれに当てはめられるかを一度書き出すのではなく、相手の顔を思い浮かべながら一つずつ当ててみてください。考えてみればシンプルです。

ポイント スポンサー企業はどうやって見つけるのか?

会員さんの事例

6つのうち、多くの方がつまずくのが「企業スポンサー」です。たとえば資金の乏しい劇団が公演をするとして、パンフレットに企業名を載せる代わりに協賛金をもらおう、と考えます。

ですが、この手のアイデアは、うまくいかないことのほうが多いです。企業にお金を出してもらうには、出す側に見返りのメリットがなければなりません。昔ながらの付き合いで、町のお祭りに寄付するのとは性格が違います。

金額にもよりますが、個人が「宣伝してあげます」と言ったところで、その効果は弱すぎるのが普通です。支出に見合うはっきりした効果を示せない限り、企業の財布は開きません。

保険営業

では個人に勝ち目はないかというと、そうでもありません。ひとつはSNSでの発信力です。特定の分野で濃いつながりを持ち、確実に届けられる相手がいるなら、属性によっては興味を示す企業もあります。インフルエンサーと企業をつなぐ仲介サービスも一般的になり、小さな発信者でも声がかかる土壌が整ってきました。

ただ、最後に効いてくるのは、やはり個人的なつながりです。知り合いの紹介でもいいですし、コネがなければ、その会社の商品を繰り返し買う、サービスを使い込む、ときにはアルバイトで内側に入ってつながる。そんな遠回りが結局は近道になります。

飛び込みでいきなり営業をかけても、個人は相手にされにくいのが実情です。日頃の生き方が、ボディブローのように後から効いてきます。

フリーランス

ここで会員さんの例を一つ紹介します。地方都市で不登校の子の学習支援をしていた黒木さん(30代・女性)は、保護者から「月謝を払えないけれど見てほしい」と頼まれ、無償で抱え込んで疲れ切っていました。

転機になったのは、フォーラムの個別相談で「払う人を保護者から動かしてみては」と言われたことでした。

黒木さんはまず、地元の学習塾と教育系の文具メーカーに、活動の様子をまとめた1枚の資料を持って相談に行きました。「この子たちにこういう変化が出ています」と数字と写真で見せたところ、文具メーカーが教材の現物提供で、塾が会場提供で関わってくれることになりました。

さらに自治体の就学援助の窓口にもつなぎ、家庭の負担を公費で一部肩代わりできる道を整えました。
結果として、黒木さんは月謝を払えない家庭を断らずに済むようになりました。以前は月に2件ほど受け入れを見送っていたのが、いまはゼロになり、見たい子を全員見られています。始めたころの「助けたい」という気持ちのまま走れている、と本人は話していました。

ポイント 「助けたい」を続けられる形にする

助けたい気持ちを、続けられる仕組みに変える設計

point

拙著『1億円稼いでいる人は何をしているのか?』では、起業を「陣取りゲーム」にたとえています。すでにお金が流れている場所を見つけ、そこに自分の商品を置く、という考え方です。

払えない人の前で立ち止まるのではなく、視線を一段だけ上げてみてください。その活動を応援したい企業、共感する寄付者、支える行政。お金は、本人ではない場所にちゃんと流れています。

善意で始めた事業が「お金を取るな」と責められると、心が揺れます。私もそうでした。けれど、受け取る相手を本人から第三者へずらすだけで、あなたは罪悪感を抱えずに、助けたい人を助け続けられます。これは事業をきれいごとで終わらせないための、現実的な工夫です。

今日できることは、いま抱えている「払えない相手」を一人思い浮かべ、その人の活動に共感してくれそうな企業や団体を一つ挙げて、来週そこへ問い合わせてみるだけで十分です。最初の一社に声をかけたところから、続けられる形は動き出します。

CAMPFIREの始め方|公開前の準備で支援の集まり方が変わる理由
「クラウドファンディングは、まとまった資金や知名度がある人のもの」。そんな見立てのまま、調べるだけ調べて画面を

助けたい気持ちは、あなたの事業のいちばんの原動力です。その火を消さないために、お金の流れだけを少し設計し直してみましょう。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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