自営とは? 自営業を始める前に知っておきたい現実とメリット

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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「自営とは何か」を検索される方の多くは、いまの会社員生活と比較して将来の選択肢を真剣に考え始めた方ではないでしょうか。自営とは、会社に雇われずに自分で事業を営む働き方の総称で、税法上は個人事業主・フリーランスとほぼ同義で扱われます。

本記事では、起業18フォーラム代表として26年・60,000人超の起業希望者を支援してきた立場から、2026年最新の制度・統計・現場の事例を交えて「自営の現実とメリット」を整理します。

結論を先に申し上げれば、自営は「会社員のまま助走を作ってから始めた人」が圧倒的に長続きします。最後まで読めば、退職前にやるべき準備の優先順位と、自分が今どのフェーズにいるかが判断できるようになります。最終更新は2026年5月4日です。

自営とは|会社員と何が違うのか

税金・年金・働き方の決定的な差

自営とは、会社に雇用されず自分で事業を営む働き方です。一般的な会社員は給与制で、決まった時間に出社すれば給与を受け取れます。仕事の進め方も会社の方針に従う形です。一方の自営は、売上から経費を引いた残額が手取りになります。

決定的に違うのが税金の扱いです。会社員は源泉徴収で会社が一時的に税金を預かって納税してくれます。自営は計算も納税も自分で確定申告をします。「税金を払っている実感がなかった」と多くの方が独立後に驚かれるのは、この構造の違いが原因です。

自営は「組織に守られない一匹狼」であることを最初に受け入れる必要があります。その代わり、収入の上限と働く時間の自由度を自分で設計できる立場でもあります。両者の違いを一覧で確認しておきましょう。

自営と会社員の比較表
項目 会社員 自営
収入 給与(固定) 売上−経費(変動)
納税 源泉徴収(会社代行) 確定申告(自分で)
社会保険 厚生年金・健康保険(労使折半) 国民年金・国民健康保険(全額自己負担)
定年 60〜65歳 なし
社会的信用 会社名で伝わる 自分で築く必要がある

自営を始める前に知っておきたい3つの現実

老後・成功率・社会的信用の壁

自営の成功は、事前の準備と覚悟で決まります。事前に以下の3点を腹落ちさせてから動き始めてください。

現実1|老後の年金は会社員時代の半分以下

会社員は厚生年金、自営は国民年金です。日本年金機構の発表によれば、令和6年度(2024年度)の国民年金(老齢基礎年金・満額)は月額68,000円。これは満額受給の上限であり、現役時代の保険料納付状況によってさらに減ります。

一方、厚生労働省「令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、厚生年金の平均受給額は月額約14万4,000円です。同じ40年働いても、会社員と自営では老後の月額受給に7万円超の差が出ます。

  • 国民年金(自営・40年満額):月額 68,000円
  • 厚生年金(会社員・平均):月額 約144,000円
  • 差額:月額 約76,000円・年額 約912,000円・30年で 2,736万円超

国民年金基金・iDeCo・小規模企業共済への加入で差額を埋める準備を、自営開始と同時に始めてください。

現実2|10年後に残るのは半分以下

中小企業庁「2024年版中小企業白書」では、個人事業主の開業5年後生存率は81.7%、10年後では約60%と公表されています。一見高く見えますが、これは「廃業届を出していない」を含む数値であり、実態として継続的に売上を立てている自営業者はもっと少ないというのが、起業18フォーラムが26年・60,000人を支援してきて見えている肌感覚です。

廃業の最大の理由は「準備不足」です。資金・市場調査・知識・事業計画のうちひとつでも欠ければ、自営の継続は難しくなります。急ぐからこそ準備を怠らず、会社員のうちに準備することが自営を成功させる最大のコツです。

現実3|社会的信用は最初の2〜3年が壁

自営は「不安定」「何をやっているのかわかりにくい」というイメージがついて回ります。住宅ローンやクレジットカードの審査は、会社員時代と比べて慎重に行われ、特に独立1〜2年目は通りにくくなります。

退職前にクレジットカードの新規発行・住宅ローンの仮審査・賃貸契約の更新は済ませておくのが現場の常識です。

自営の3つの大きなメリット

会社員では味わえない自由と上限の高さ

自営の厳しさを先にお伝えしましたが、それを上回る魅力があるからこそ、毎年多くの方が独立を選びます。

メリット1|家族と一緒に仕事ができる

会社では嫌な上司や同僚とも一緒に働かなければなりません。しかし自営は、自分の好きな人と一緒に働けます。家族を従業員として雇い給与を支払った場合、青色申告ならば「青色事業専従者給与」として経費に計上できます(白色申告でも事業専従者控除あり)。事業専従者とは、15歳以上で生計を同じにし、半年以上事業に従事した人を指します。

家族ぐるみでひとつの事業に取り組める楽しさは、会社員時代には得られないものです。

メリット2|頑張り次第で収入の上限が外れる

会社員はどれだけ頑張っても基本給の枠を超えにくい構造です。自営は売上を伸ばせば、その分だけ手取りが増えます。「不安定」という言葉にはマイナスのイメージがありますが、裏を返せば「右肩上がりの可能性が開かれている」ということです。

老後についても、自営には定年がありません。元気なうちは80歳でも90歳でも現役で働けます。会社員は60歳または65歳で定年を迎え、それ以降の収入はゼロか激減します。体が元気なのに仕事を失うのは、お金以上に辛いことかもしれません。

メリット3|やりがい・人脈・視野が広がる

経理・総務・生産管理・マーケティングまで、自営ではすべてを自分でやります。毎日がインプットとアウトプットの繰り返しで、能動的に行動する日々は「やらされ感」とは無縁です。

自営で成功している人は、人との出会いをきっかけに当初の目標を超える事業を作っています。自営は、自分の考え方次第でいくらでも限界を超えられる働き方です。

自営を始める前にやるべき準備|「25点→50点」のスコア管理

完璧主義を抜けるための判定基準

「もう少し準備が整ってから」「もう少し売上が安定してから」と退職を先延ばしする方は珍しくありません。私の相談現場でも、半数以上の方が「準備が完璧になるまで」と言って動きが止まっています。

拙著①『会社で働きながら6カ月で起業する』にこんな言葉があります。完璧主義は最大の敵で、20点でいいから出す勇気が、結局は最短距離の起業をつくる。100点を目指して動かないより、20点で始めて25点・30点と上げていく方が早く50点に到達します。

自営移行の判定スコア(自己採点用)
  • 会社員のまま売上0→1円を達成している(10点)
  • 毎月1件以上の取引が2ヶ月連続している(10点)
  • 家族の同意を文書または会話で確認した(5点)
  • 生活防衛資金が6ヶ月分以上ある(10点)
  • 同業の先輩・メンターに月1回以上相談している(5点)
  • 会社の就業規則・退職金規定を読み込んだ(5点)
  • 国民健康保険・国民年金の月額試算をした(5点)

合計が50点を超えたら退職検討フェーズへ進み、50点未満なら会社員のまま準備を続ける。このシンプルな判定が、家計の崩壊と「準備不足での廃業」を防ぐ最大の防波堤になります。

会員Fさんが「会社員のまま自営の準備」を完了させた2年間

在職中の助走で生活を守った実例

会員Fさん(仮名・38歳・元IT系上場企業勤務、システム保守担当12年)は、自己流で起業準備を始めて3ヶ月で挫折した経験を持ちます。その後に起業18フォーラムへ参加され、勉強会で学んだ順番どおりに準備を組み直し、会社員のうちにスモールスタートを実現したのが転機でした。

  • 属性:38歳・男性・元IT系上場企業システム保守12年・既婚/小学生の子2人
  • スタート時の状況:会社員年収580万円・自己資金80万円・社外収入ゼロ
  • 時系列:参加3ヶ月目に最初の業務委託契約/12ヶ月目に月収15万円の業務委託収入/20ヶ月目に第2・第3の取引先確保
  • 転機:在職中に「会社の業務外で守れるドメイン」を1件作れたこと(中小企業向けバックアップ運用代行)
  • 現在地点:開業届提出後1年で月収40万円超・会社員給与と合計するまでは退職せず段階的に移行中

Fさんが他の自己流の方と違ったのは、退職の前に「収入の2本目」を会社員のまま育てていた点です。これは拙著②『会社員が働きながら月30万円を稼ぐ起業法』にも書いた通り、生活を守りながら自営の準備を進める王道のパターンです。

同じ失敗を繰り返さないための着眼点

Fさんが最初の3ヶ月で挫折した理由は、自己流で「いきなり名刺を作る」「いきなりHPを作る」と形から入り、肝心の「お金を払ってくれる相手」がいなかったからです。会員になって学んだのは順番でした。

  • 商品・サービスの形より先に「困っている人」を1人特定する
  • 無料モニター・知人案件で実績を1件作る
  • その実績を元に有料案件1件を受注する
  • 受注の流れが再現できると確信してから屋号・名刺・HPを整える
● 質問 会社員のまま起業準備を始めました。開業届というのは出したほうがいいんでしょうか? 出すタイミングがわ
会社員ですが開業届はいつ出すべきですか? - 起業18フォーラム | 副業から始めて「稼ぐ力」を身に付けられるコミュニティサロン

無理に退職を急ぐより、会社員という安全弁を使い倒して「自営として食えること」を先に証明する方が、結果として自営寿命を伸ばします。先に辞めるのではなく、辞められる状態を先に作る。この順序を守れるかどうかが、10年後の生存率を決める分岐点です。

自営を始める人によくある質問(2026年版)

最新の制度改正と実務上の注意点

Q.自営を始めると国民健康保険料は会社員時代の何倍くらいになりますか?

  • 多くの自治体で会社員時代の社会保険料の1.5〜2倍程度
  • 所得・自治体・家族構成で大きく差が出る
  • 事前にお住まいの自治体の試算サイトで概算する

会社員時代の社会保険は会社が半分負担していたため、自営移行後は同等の保障を全額自己負担になります。所得300万円の単身者で月額3万円前後、家族3人で月額5〜6万円前後になることもあります。退職前に1年分の概算をしておくと家計のショックが小さくて済みます。

Q.自営を始めるなら最初に開業届を出すべき?

  • 売上が立ってからで十分
  • 青色申告を使うなら開業届と同時に「青色申告承認申請書」も提出
  • 2023年からは電子提出(e-Tax)で完結可能

「開業届を出す=自営になる」と捉える方が多いのですが、現実には「最初の売上が立ってから」で問題ありません。むしろ売上ゼロのまま開業届だけ出すと、青色申告のメリットを活かせない1年が発生します。最初の取引が決まった月に開業届と青色申告承認申請書を同時提出するのが実務的にスマートです。

Q.会社員のまま自営の準備をしてもよいのでしょうか?就業規則違反になりませんか?

  • 就業規則の兼業規定をまず確認
  • 競業避止義務に抵触しない領域を選ぶ
  • 名義・連絡先・取引相手で会社情報を一切使わない

厚生労働省のガイドラインが2022年に改定されて以降、兼業・起業準備を原則認める方向に流れていますが、実態として就業規則で禁止している企業はまだ存在します。確認すべき第一歩は自社の就業規則です。「禁止」と書かれていても、勉強・準備・無償の活動まで禁止される事例はほぼないため、有償取引が始まる前段階の準備は問題なく進められるケースが多いです。

Q.自営と個人事業主とフリーランスは何が違うの?

  • 自営:会社に雇われない働き方の総称(広い概念)
  • 個人事業主:税法上の区分(開業届を出した人)
  • フリーランス:契約形態の呼称(業務委託で働く人)

呼び方が違うだけで、本質はほぼ同じです。自営が最も広い概念で、店舗を構える物販業も含みます。個人事業主は税務署に開業届を提出した税法上の区分。フリーランスは「個人で契約を結んで働く」契約形態を指す呼び方で、ITエンジニアやデザイナーで多く使われます。3つは重なる部分が大きく、厳密に区別する必要は実務上ありません。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全10冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。




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