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● 質問
会社員のまま個人事業主として起業準備を進めています。BtoBの取引、とくに上場企業を取引相手にすることには課題が多いことを学びました。それでもできれば法人化はせず、ビジネスネーム(匿名)のまま上場企業と取引できれば一番ありがたいと考えています。
実際のところ、個人事業主のまま、しかも匿名で上場企業と契約することは可能なのでしょうか?
● 回答
結論から言うと、個人事業主のまま「匿名」で上場企業と取引するのは、2026年の今でも極めて難しいというのが現場の実感です。一方で、本名の個人事業主で上場企業と取引している会員さんは確かにいます。
とはいえ、現場には大きく3つの壁があり、それぞれを段階的に乗り越えていくルートを設計できれば、法人化を急がずに大手取引にたどり着く方は珍しくありません。順に整理していきます。
壁①:上場企業の社内ルールが「個人取引お断り」になっている
多くの上場企業は、内部統制(J-SOX)と反社チェックの観点から、新規取引先の登録時に「法人格・登記簿・決算書」を求めます。個人事業主との取引そのものを禁止していなくても、登録フォームが法人前提で組まれていて、個人だと書類が揃わず止まるケースが現場では非常に多いです。
2024年11月に施行された「フリーランス・事業者間取引適正化等法」(公正取引委員会・中小企業庁所管)により、発注事業者は個人事業主への書面交付や支払期日のルールを守る義務が課されました。この法律は個人側の保護を強める一方で、上場企業の与信部門に「個人と取引するなら社内手続きをさらに厳格化しよう」という動きも生んでいます。
壁②:ビジネスネーム(匿名)の取引はほぼ通らない
結論から言うと、ビジネスネームのまま上場企業と契約を結ぶのは現実的ではありません。理由は明快で、契約書には本名(住民票記載の氏名)と本人確認資料が必須だからです。
本名と振込先の口座名義が一致していなければ、上場企業の経理は支払処理ができません。また反社チェックでは戸籍上の氏名で照合されるため、ビジネスネームだけでは検索すらされないのが実態です。ペンネームを表示名として使い、契約書の署名欄では本名を併記する、というやり方であれば取引可能です。ただしそれは「匿名」ではなく「商標としての表示名」の運用です。
壁③:個人にいきなり大手案件を出す担当者は社内で説得コストを負う
仮に取引登録の関門を越えても、上場企業の担当者から見れば「個人事業主に発注する」決裁は社内で説明が大変です。「なぜ法人ではなくこの個人に頼むのか」を上長に納得させる材料がいります。ここで効くのが、過去の納品実績・公開された記名仕事・第三者からの推薦の3点セットです。
こうした担当者の心理的ハードルを下げる準備は、契約の半年〜1年前から積み上げておかないと、いざ商談の場で持ち出せません。
段階突破ルート:BtoC→中小BtoB→大手BtoBの順で広げる
では現実的にどうするか。会員のSさん(42歳・大手IT企業エンジニアのまま起業準備中)の例で説明します。
Sさんは独立1年目、最初から大手SIerをターゲットに営業をかけ、半年経っても問い合わせがゼロでした。フォーラム相談で「個人にいきなり大手は通らない」と整理した上で、戦略をBtoCに切り替えます。業務効率化のテンプレートをnoteで月額制販売し、半年で受講者180人・月収22万8千円のフロー収入を作りました。
その実績を持って中小IT企業3社にBtoB提案を持ち込み、月10万円〜30万円の業務改善コンサル契約に発展。独立から18ヶ月後、その中小企業の経営者の紹介で初めて大手SIer(東証プライム上場)と単発の業務委託契約を獲得しました。
現時点で本名の個人事業主のまま、法人化はせず取引を継続しています。
つまり「個人+上場企業」の組み合わせは、いきなり一直線に攻めるのではなく、信用を積み上げて橋渡ししてもらう設計が現実的です。支援現場でも、この段階突破ルートを通った人は、結果として法人化を急がずに大手取引にたどり着く確率が高くなっています。
段階突破ルート(個人事業主→上場企業取引まで)
- STEP 1:BtoCで半年〜1年の実績(月収・受講者数等の数字)
- STEP 2:中小企業BtoBで信頼の橋渡しと公開実績
- STEP 3:紹介経由で大手BtoB商談・上場企業の取引登録対応
- 並行:適格請求書発行事業者登録・電子帳簿保存法対応・本名口座整備
法人化の判断は「取引先の要求」と「税負担」の2軸で見る
「いつ法人化すべきか」は、税負担だけでなく、取引先の要求で決まることも多いです。所得が大きくなって法人化メリットが出る前に、上場企業の登録条件で法人化を促されるケースが2026年の現場では増えています。
具体的なラインの目安は次の通りです。フロー収入の段階では個人で十分ですが、ストック収入を増やして取引が長期化していくほど、法人格を持っているほうが相手の社内手続きをスムーズに進められます。
「ストック思考 vs フロー思考」の整理で言えば、最初はフロー(単発・売上に応じた稼ぎ)で実績を積み、信用が貯まってきたタイミングでストック(定期契約・継続案件)に切り替えていく流れが自然です。法人化はそのストック化と歩調を合わせて検討すると、無理がありません。
退職タイミングは「定期収入」と「商品力の検証」が揃ってから
ご質問にあった「ビジネスを立ち上げたらすぐ退職」については、慎重なほうがよいと思います。立ち上げそのものは誰でもできますが、それを継続し大きくしていくのが本当の勝負だからです。
| ● 質問 会社員のまま個人事業主として活動を始めて2年目に入りました。「年商が増えたら法人化したほうがいい」と 法人化のタイミングは年商いくらが目安? 売上規模で判断する4つのステージ - 起業18フォーラム | 副業から始めて「稼ぐ力」を身に付けられるコミュニティサロン |
会社員の安定収入があるうちに、最低でも半年〜1年は「商品力(買い手がいる証拠)」を検証してください。派遣やパートでも構わないので、独立直後の家計を守る定期収入のラインを別に確保しておくと、判断の自由度が大きく変わります。
よくある質問
Q.個人事業主のまま大手企業と契約する場合、印鑑はどうしますか?
本名の認め印または個人実印(印鑑証明付き)が必要です。電子契約サービス(クラウドサインなど)の場合は本人確認済みの電子署名で代替できますが、上場企業によっては「個人実印+印鑑証明書」を求めるケースもあります。事前に取引登録の要件を確認してください。
Q.インボイス制度の影響で、個人だと取引を断られませんか?
2023年10月から始まったインボイス制度では、適格請求書発行事業者の登録番号がない取引先からの仕入れは、発注側で消費税の仕入税額控除が受けられません。そのため上場企業は適格請求書発行事業者かどうかを取引前に確認します。個人事業主でも登録番号を取得していれば、この点での門前払いは避けられます。
Q.ビジネスネームでブランディングだけして本名は隠したいのですが?
ブランディングのための表示名としてはまったく問題ありません。SNS・noteなど発信面ではビジネスネームで活動し、契約書・請求書・銀行口座は本名というのが現実解です。「表示名としてのビジネスネーム」と「契約上の本名」を分けて使うのが、個人事業主の上場企業取引で唯一通る運用です。
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