記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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生成AIの普及で、AIで稼ぎたいと考える会社員のかたが増えました。ところが「AIで全部やります」という売り方は、すでに同じ売り方の人と並ぶだけで差が出ません。
今日は、AIを起点に起業準備を進めるときに、本業の知識を活かして売れる商品に変える順番をお話しします。
私のこれまでの起業支援の経験では、AIを軸にして失敗するかたには共通点があります。それは「自分の本業の確認力」を商品にせず、ツール紹介やプロンプト販売だけで売ろうとしてしまうことです。
ここを変えるだけで、最初の売上までの距離がぐっと縮まります。
AI起業で失敗しやすい3パターン

AI起業を考え始めたかたが最初につまずく場所はだいたい決まっています。「AIで何でもできます」を売りにしてしまうと、AIを使う側ではなく、AIに置き換えられる側に回ります。勤めながら小さく試すなら、まず3つの罠を知っておいてください。
①ツール紹介に寄りすぎる
最新ツールを次々と紹介する発信は、フォロワーは増えても収益化に結びつきにくい構造があります。比較記事もアフィリエイト報酬の単価が下がってきており、本業の時間を削って続ける割に手元に残らないかたが目立ちます。
②プロンプト販売に逃げる
「魔法のプロンプト100選」を売る形は、市場にすでに無料配布があふれていて、価格競争に巻き込まれます。プロンプトそのものは買い手にとって再現性の確認が難しい商品です。
③何でも代行で安く請ける
納品物の範囲を決めずに「AIで何でもやります」と請けるかたがいます。修正依頼が無限に来て、時給換算でアルバイト以下になる相談を、私も毎月のように受けます。
経済産業省と総務省が令和8年3月31日に公表した「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」では、AIの利用者にも、人による確認の責任が明文化されました。AIに任せきりにせず、出力を人が確かめる仕組みが、利用者側にも求められる時代に入っています。ここに、会社員のかたが本業の知識を活かして売れる入口があります。
- ツール比較や紹介だけの発信に時間を全部使う
- 魔法のプロンプトを売り物にする
- 納品物の範囲を決めずに何でも代行を引き受ける
- 「AIですべて自動化します」と言い切る
- 本業の確認業務を商品の中身に組み込まない
ここで一度立ち止まり、自分の本業のどこに「人が確かめる仕事」があるかを思い出してみてください。
会社員の強みは「どこを確認すべきか」を知っていること

拙著『起業神100則』に、成果が出ないときの原因は「漠然」にあるという考え方があります。スキル不足ではなく、計画と行動のぼかしが失敗の本当の理由だ、という指摘です。AI起業の場合、この「漠然」がツール紹介と何でも代行の2方向で発生しやすくなっています。
そこで先に、本業で18年・20年と判断してきた人にしか持てない強みを言葉にしておきます。あなたが本業で当たり前にしている「ここはおかしい」「この説明では伝わらない」という判断は、生成AIには出せない種類の知識です。これを商品の中心に置く設計が、会社員のAI起業の入口になります。
「確認の眼」が売れる理由
取引先や顧客から見ると、生成AIの出力をそのまま使うのは怖いものです。間違いがあったときに誰が責任を持つか、誰が業界の暗黙ルールを知っているかが分かりません。そこで「業界15年の現場感覚で確認します」という商品が刺さります。AIで効率化された土台に、人の確認を1段乗せる形です。
起業18フォーラムに最近寄せられた相談で印象的だったのが、製造業の45歳・営業企画職・住宅ローン残高2,000万円・本業18年の安藤さん(仮名)の話です。会社員の月収は42万円、住宅ローンの繰上げ返済もしたい状況でした。最初はAI画像生成のスクールに10万円を払って「AIクリエイター」を目指したのですが、半年で何も売れず手応えもありませんでした。
そこから起業18フォーラムの勉強会に参加し、自己流の方向を一度手放しました。話を整理してみると、安藤さんの本業の中心は「他部署が作った提案資料の抜け漏れを指摘する作業」だったと見えてきました。本業ではあまりに当たり前すぎて、自分の強みとして数えていなかったのです。
そこから「議事録の抜け漏れ確認」「提案書の数字整合チェック」など、確認系の小さな納品物に絞って商品を組み直しました。9ヶ月目で月4万円、12ヶ月目で月8.5万円の安定売上に届いた段階で、住宅ローンの繰上げ用の口座を別に作ったとのことです。
確認作業を商品に変える4種の入口

ここからは、会社員のかたが本業の確認力を、小さな納品物に変えるときの入口を4つ紹介します。どれも在職のまま、本業の経験範囲で対応できる種類の作業です。
①議事録の抜け確認
取引先との会議をAIが文字起こしする時代になりました。問題はその先で、「決まったこと」と「次回までの宿題」を取り違えていないか、業界用語の誤字がないか、を人が確認する必要があります。中小企業の経営者ほど、ここを社内で確認できる人材がいません。
②提案書の数字整合チェック
生成AIが作る提案書は、もっともらしい文章にもっともらしい数字を入れます。実際の市場規模・成長率・競合のシェアと一致しているかを確かめる作業は、業界経験者にしかできません。1件3,000円〜5,000円から始める単価設計が現実的です。
③顧客FAQの整理
ChatGPTで顧客対応の自動化を進める会社が増えてきました。ところが、社内の暗黙ルール・例外処理・断りのトーンを反映できる人がいないために、運用が止まっているケースが多くあります。実務経験のあるかたが「業界向きFAQ整備」を1セット作る形は、納品物が1枚に収まります。
④社外説明資料の言語化
社内で当たり前の言葉が、社外には伝わらない場面が増えています。AIの下書きを「説明可能な日本語」に直す仕事は、新人教育を担当した経験のあるかたに向いています。
- 議事録の抜け漏れ確認・1件3,000円
- 提案書の数字整合チェック・1件5,000円
- 顧客FAQの整理・1セット2万円
- 社外説明資料の言語化・1枚8,000円
- すべて在職範囲・本業の業界経験で対応可能
この4種に共通するのは「AIが作った下書きを、人が一度確かめてから渡す」構造です。AIに置き換えられない部分を、最初から商品の中心に置く考え方とも言えます。
最初の納品物を1枚に固定する

確認作業を商品にすると決めたあと、最初に必ずやってほしいのが「納品物を1枚に固定する」ことです。納品物が広がると、修正依頼が無限に来て、会社員のかたの本業時間を圧迫します。最初は1枚のチェックレポートで終わる範囲に絞り、それ以上の追加作業は別料金にすることが、続けるための土台です。
具体的には、A4で1枚にまとまる確認レポートを基準にします。たとえば議事録の抜け確認であれば、A4の左半分に「会議で決まったこと」、右半分に「次回までの宿題と担当者」を並べ、最下部に確認した人の名前と日付を入れる、という形です。フォーマットを固定しておくと、生成AIの下書きを赤ペン入れする時間も短縮できます。
説明できる範囲だけ請ける
取引先からの依頼で「ついでに資料も作ってほしい」と言われることがあります。気持ちはありがたく受け取っても、納品物のフォーマットを越える依頼は、別見積もりにしてください。「議事録の確認は1件3,000円・提案書の数字整合チェックは1件5,000円・FAQ整備は別料金」と最初に伝えるだけで、修正依頼の沼を避けられます。
中小企業庁の「2024年版小規模企業白書」では、付加価値に見合った適正な価格設定と顧客ターゲットの明確化が、小規模事業者の売上確保の鍵として挙げられています。AI起業に限らず、サービス型の起業準備では、最初の納品物の輪郭を1枚で示せるかどうかが、月数万円の壁を越える分岐になります。

最初の確認レポートを来週1枚作ってみてください。AIで全部を売るのではなく、本業の判断を1段乗せて売る。この順番だけ守れば、AI起業の入口でつまずく確率がぐっと下がります。
よくある質問

Q.AIに詳しくないと商品にできませんか?
- AIの操作スキルより本業の判断力が中心
- ツールはChatGPTなど無料の範囲で十分
- AIの出力を確かめる役だから操作量は少ない
AIの操作スキルが必要なのは「AIで作る側」です。確認作業を売る場合、AIの操作量より、本業の判断力と業界知識のほうがずっと重要です。最初の半年はChatGPTの無料版で十分対応できます。
Q.会社に説明できるか心配です
- 給与以外の所得に対する住民税の納付方法を確認する
- 勤務時間内の作業や会社PCの利用は絶対しない
- 取引先は勤務先の同業他社を避ける
給与以外の所得に対する住民税は、確定申告時に納付方法を確認します。勤務時間内の作業や会社の機材を使わない、勤務先と直接の競合は避ける、の2点を守り、必要に応じて就業規則や届出ルールを確認すれば、説明できる形に近づきます。
Q.確認サービスはいくらから始めればいい?
- 最初は1件3,000円から
- 納品物を1枚に固定して時間を読みやすくする
- 5件納品ごとに価格と範囲を見直す
最初は1件3,000円から始めて、5件目までに自分が30分以内で終わる形に整えます。5件納品を超えた時点で、価格と納品範囲を見直してください。安易に値上げをするのではなく、「同じ時間で出せる価値の質」を上げる方向で考えます。
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