座間味島の起業ガイド|人口841人・3島構成の村で在職中に準備する道のり

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

那覇の泊港から高速船で50分。船を降りた瞬間、海の青さに息を呑む人がほとんどです。座間味島は那覇の沖合に浮かぶ慶良間諸島の中心の島で、座間味本島・阿嘉島・慶留間島の3島で座間味村を構成しています。人口886人(令和6年5月末・座間味村公式)という小さな村ですが、2014年に慶良間諸島国立公園に指定されました。

年間入域客数は94,843人(令和5年・座間味村公式)と、人口の100倍を超える観光客が訪れます。

そしてもうひとつ。座間味島は1991年に日本のホエールウォッチング発祥地として「座間味村ホエールウォッチング協会」が設立された島です。冬になるとザトウクジラが繁殖のために回遊し、漁師さんたちが船を出して観光客を案内する文化が、ここから日本全国に広がりました。

漁の島が「クジラを見せる島」へと自ら姿を変えた最初の場所が、座間味です。

本記事では、起業18フォーラム代表として26年間で延べ6万人を超える起業家・起業準備者を支援してきた立場から、座間味島で起業を考える方が何から手を付ければよいのかを、順を追ってお伝えします。

これが座間味島での現実的な起業の道筋です。いきなり移住するのではなく、関係人口として通いながら、島で続く事業をゆっくり育てていく形が、勤め人にとって最も持続しやすい歩み方です。

ポイント 座間味島で起業準備を始めるときに押さえておきたい2つの前提

島内市場の小ささと発祥地ブランドという独自性

座間味島

座間味島で起業を考えるときに、最初に押さえておきたい前提が2つあります。第一に、人口886人の村の中だけで完結する事業はほぼありえないということ。島内市場が一桁、二桁少ないので、近隣の阿嘉島・慶留間島・那覇・本州・海外と接続する仕組みを最初から組み込む必要があります。

第二に、座間味は日本のホエールウォッチング発祥地という、世界でひとつしかない歴史を持っているという点です。これは座間味でしか名乗れない物語で、起業準備の段階から組み込めば、後発でも独自の位置取りができます。

座間味で事業を作るときは、「島の何の発祥地として自分を位置付けるか」を1枚紙にまとめてから具体的な事業内容を決めます。これが島内・島外の事業者から紹介される入口になります。

拙著『会社を辞めずにあと「5万円!」稼ぐ』に掛け算の話があります。テーマを2つ掛け合わせるとニッチな市場ができる。座間味島の場合、「ホエールウォッチング発祥地」「人口886人の世界遺産級の海」「3島構成の村」など、すでに掛け算の素材が揃っています。

この素材を組み合わせ、自分が積み上げてきたスキル・経験と接続する作業から、座間味の起業準備は始まります。

ポイント 座間味島の輪郭と起業準備の出発点

人口886人・高速船50分・観光客9万人の市場

座間味島

感覚論ではなく、数字で座間味島の輪郭を見ておきます。座間味村の人口は886人(令和6年5月末・座間味村公式)、高齢化率は23.6%(令和5年10月1日・沖縄県)です。沖縄離島13町村の中では比較的若い人口構成です。

面積は座間味島6.71平方キロ・阿嘉島3.96平方キロ・慶留間島1.22平方キロの計約11.89平方キロで、東京駅から半径2キロ程度の広さに人口886人が暮らしている計算になります。

アクセスと観光客数 ― 島内市場と島外市場のサイズ感

那覇泊港から座間味港まで、高速船「クイーンざまみ」で約50分、フェリーざまみで約2時間。高速船は1日2便(繁忙期3便)、フェリーは1日1便(座間味村役場公式・令和8年1月1日運賃改定)。

羽田から那覇まで2時間半、那覇空港から泊港までモノレールで20分なので、東京から座間味までドアtoドアでおよそ6時間です。日帰りも頑張れば可能ですが、現実的には1泊2日以上が前提になります。

年間入域客数94,843人(令和5年・座間味村公式)は、村の人口の100倍超に相当します。観光客の単価が仮に1人あたり3万円とすれば、観光消費だけで年間28億円規模の市場が回っている計算になります。

勤め人のうちに準備して、この市場の一角に小さく入っていくのが現実的な戦略です。島内市場に頼らず、観光で訪れる9万人をどう自分の顧客に転換させるかを起点に事業設計を始めましょう。

1991年ホエールウォッチング発祥という独自性

座間味島で見落としてはいけないのが、1991年に日本で最初の本格的なホエールウォッチング協会が設立された島だという歴史です(座間味村ホエールウォッチング協会・環境省)。

それまで「クジラを獲る」ものだった海の文化を「クジラを見せる」事業に転換させたのが、座間味の漁師の方々でした。保護と観光の両立という現代的なテーマを、日本で最初に地域ぐるみで形にした島です。

この物語に自分の事業をつなげることが、ゼロからネット集客するよりずっと効率のいい起業準備の入口です。

座間味の産業は観光業が中心で、夏はダイビング・シュノーケリング・マリンアクティビティ、冬はホエールウォッチングが主力です。注意したいのは季節変動の大きさで、ピーク時と閑散期では宿泊・船舶利用に数倍の差が開きます。

ピーク時の売上だけを見て採算計算すると、閑散期に資金繰りが破綻する典型パターンに陥ります。ザトウクジラの回遊期(12月末〜4月初旬)と夏のダイビングシーズン(4月〜10月)で島の経済が交互に動いている構造を頭に入れておくと、自分の事業を入れる季節と顧客層の見立てがブレません。

ポイント 座間味島で使える起業支援制度 ― 沖縄振興と過疎法を中心に

沖縄振興と過疎法の二段構え・移住補助金対象外

座間味島

座間味島で使える支援制度を整理するときに、最初に押さえておきたい前提があります。沖縄県は「沖縄振興特別措置法」という独自の枠組みの中にあり、長崎・鹿児島の離島で使える「有人国境離島法 雇用機会拡充事業」のような国の創業補助金は適用されません(内閣府沖縄振興局・有人国境離島地域の指定別表)。一方で、座間味村は過疎地域に指定されており、沖縄振興・過疎法・市町村独自施策を組み合わせる形が、現実的な選択肢です。

沖縄振興特別措置法と過疎地域指定の活用

座間味村で創業や事業拡大を考えるときに使える制度の柱は、沖縄振興特別措置法と過疎地域持続的発展特別措置法の二本立てです(内閣府沖縄振興局・総務省過疎対策室)。沖縄振興特別措置法では、沖縄県と各市町村が事業者向けの補助金・金融支援を整備しています。過疎地域の指定により、地方創生関連の起債・施設整備補助・地域おこし協力隊制度などが活用できます。

ただし、これらは「思いつきで申請したらすぐ通る」制度ではありません。事業計画・収支見込み・地域への波及効果が問われる審査があり、地域の事業者・行政・金融機関と連携した計画が前提です。何で食べていくかの方向性が固まり、地元のキーパーソンとの関係ができてから使う「最後の道具」と捉えるのが正解です。

創業時のもうひとつの支援が、産業競争力強化法に基づく特定創業支援等事業の認定です。市町村が認定する経営・財務・人材育成・販路開拓の4分野の知識を学べる講座を受けると、株式会社設立時の登録免許税が15万円から7万5,000円に軽減されたり、信用保証協会の保証枠が拡大されたりする制度です。

座間味村での認定の有無や直近の対象講座については、座間味村役場および座間味村商工会(沖縄県島尻郡座間味村字座間味94・沖縄県商工会連合会)に問い合わせるのが確実です。あわせて、小規模事業者持続化補助金(沖縄県商工会連合会経由)・沖縄県の中小企業向け創業支援メニューも、勤め人の起業準備段階で確認しておきたい道具です。

沖縄県移住支援金は対象外、住宅事情も厳しいという現実

気をつけたいのが、令和8年度の沖縄県移住支援金の対象には座間味村は含まれていないという事実です(沖縄県公式・令和8年4月1日時点)。対象は石垣市・国頭村・東村・本部町・伊江村の5市町村のみで、座間味村への移住には、単身60万円・2人以上世帯100万円の移住支援金は使えません。

つまり、座間味で起業を考える人は、移住補助金を当てにせず、自前の資金と勤労期の蓄えで島での生活と事業の立ち上げを賄う前提で動く必要があります。これは厳しい条件ですが、逆に言えば「補助金が出るから移住する」という動機の人が入ってこない分、本気の人だけが残る島ということでもあります。

もう一つの現実が住宅事情です。座間味村は定住促進住宅を建築・入居者募集しているものの、賃貸住宅の流通量はきわめて少なく、空き家バンク経由でも家を確保するまでに半年から1年かかることが珍しくありません(おきなわ島ぐらし・座間味村)。光回線・通信環境については、座間味本島はほぼ整備されていますが、阿嘉島・慶留間島は集落単位で差があります。

移住補助金を当てにせず、3年間で500万円から800万円の自己資金を作ることを目標にします。給料が安定しているうちに資金を貯め、同時に島に通って人脈と土地勘を作る順番が崩れると、移住後に資金繰りで詰まる典型パターンに入ります。

ポイント 座間味島で勤めながらできる起業のアイデア

補完サービス・発祥地コンテンツ・3島周遊の3入口

座間味島

ここからが本題です。人口886人の村で、観光客9万5,000人の市場の一角に、勤めながら準備して入っていくにはどんな事業が現実的か。起業18フォーラムの勉強会で島の話を扱うときによく出てくる、3つの入口を整理します。

入口1:島の既存事業者との補完サービス

座間味は人口886人の小さな村なので、いきなり競合として参入するより、島内の既存事業者と組んで補完サービスを提供する方が現実的です。

たとえば、ダイビングショップが手薄なWeb予約導線・多言語対応・SNS発信を、リモートで請け負う形から始める。民宿のオーナーが手が回らない海外向け宿泊者向けコンテンツを、勤労期の英語スキルを活かして外注として受ける。

これが、勤めながら一番始めやすい入口です。島の外に住みながら、島の事業者の右腕として動くだけで、移住前に島内の信用と相場感と人脈が一気に出来上がります。

入口2:「発祥地」コンテンツの編集・発信事業

1991年からのホエールウォッチング発祥の歴史は、座間味の最大の資産です。しかし、その物語を体系的にまとめた書籍・映像・Web記事は、まだ多くありません。この空白を埋めるコンテンツ事業は、勤めながら取り組みやすい入口です。

具体的には、座間味の漁師さんへのインタビューシリーズ、ホエールウォッチング協会の歴史を解説するYouTubeチャンネル、ザトウクジラの回遊データを観光客向けにわかりやすく見せるWebコンテンツ、ガイドさんのライセンス制度を理解してもらうための解説サイトなど。これらは島に通いながら週末に取材を重ね、平日に編集する形で進められます。

最初の半年はマネタイズを考えず、漁師さん3名のインタビューを徹底的に積み上げます。発信を続けるうちに、ガイド業・出版業・教育旅行受託など、隣接する事業への横展開が自然に開けてきます。

入口3:3島周遊プログラムと通い起業の二刀流

座間味村は座間味本島・阿嘉島・慶留間島の3島構成で、それぞれに別の表情があります。座間味本島は観光・商業の中心、阿嘉島はマリンレジャーと自然観察、慶留間島はケラマジカと古い集落。この3島を組み合わせて、テーマ別の周遊プログラムを設計する事業は、まだ参入余地があります。

たとえば、写真愛好家向けの「3島フォトトレッキング」、生物多様性を学ぶ研修旅行、企業のリトリート研修、家族向けの自然学校など。これらは島の宿泊施設・船舶事業者・ガイドさんと組んで実施するので、勤めているうちに信頼関係を作っておくことが先決です。

もうひとつの現実的な歩み方が、本業のリモートワークを継続しながら、月のうち1〜2週間を座間味で過ごす二地点居住モデルです。本業の給料で生活基盤を支え、島では小さい事業の種を蒔く方法で、これが勤めながらできる起業準備の中で最もリスクが低い型です。

島での事業は最初の3年は「あと5万円」レベルの収入で構いません。3年間で月5万円の事業を3つに増やせれば月15万円。そこまで来てから移住の本気度を上げる歩み方が、座間味で事業を作ってきた方々に共通する型です。

ここで多くの人がつまずくのが、初動でいきなり売上の数字を追いかけてしまう罠です。島の人たちは数字より先に「この人は本気で島と関わるつもりがあるのか」を見ています。

最初の1年は売上を急がず、島の事業者3名と週1回オンラインで雑談する関係を作ることを目標にしてください。売上は信用が育った後についてくるもので、信用づくりは雑談からしか生まれません。

ポイント 座間味で実際に起こりやすいパターン

自己流の典型と関係人口型から育てる正攻法

座間味島

自己流で行き詰まる典型と、関係人口型から育てる型

もっとも多いのが、雑誌の特集記事を見て「離島で民宿を始めよう」と勢いで移住し、半年から1年で資金が尽きるパターンです。観光客が集中するピーク時だけで採算を組むと、初年度はWeb予約導線が育っておらず、予約が薄いまま閑散期に入る、という失敗が起こりやすくなります。

起業18フォーラムの勉強会で繰り返し出てくる対処は、「島外の人に届く媒体を勤労期から自分で持っておくこと」です。観光協会・行政・既存OTAに集客を依存すると、立ち上げ期にコントロールがききません。

SNS・自前サイト・メルマガなど、自分が完全に握れる導線を、移住前に最低1年は運用しておくことが、半年で資金が尽きるパターンを避ける最大のポイントです。

もう一つの傾向が、最初は自己流で島の事業を立ち上げて壁にぶつかり、その後で起業の体系的な学びに戻ってくる流れです。「島の現場感は分かったが、事業として継続させる仕組みが分からない」という段階で、外の勉強会・コミュニティに参加し直す方が一定数います。

外で学んだ事業設計・収支管理・販路設計・チームづくりを島に持ち帰り、もう一度ゼロから事業を組み直す。この「自己流→外で学ぶ→島に戻って修正」の流れは、座間味に限らず沖縄離島で繰り返し起きています。

失敗を抑えやすいのが、関係人口として2〜3年通い、島内の事業者と関係を作ってから移住する型です。最初の1年は月1〜2回の訪問で島の文脈を学び、2年目に小さな副次収入を島の事業者経由で作り、3年目に移住して本格化させる。勤めている方にとっては、時間がかかる一方、現実的に進めやすい歩み方です。

座間味で成功しているパターンに共通するのは、島内の事業者・観光客に売る商品と、島外の都市部・海外に売る商品の両方を持っていることです。島内だけだと閑散期に売上が落ちきり、島外だけだと島の人脈が育たない。両方を持つから事業として続くという構造を、移住前の段階から意識しておきます。

訪問のたびに島の事業者1人と必ず会い、お礼の連絡を翌週に必ず入れます。派手な事業計画より、この地味な積み重ねの方が3年後の事業継続率を上げます。

島で困りごとを聞いたら、本業のスキルで小さく手伝う習慣を1年続けるだけで、島内の信用が積み上がり、補助金や行政の支援も「あの人が動くなら」と推薦してもらえるようになります。

ポイント まとめ ― 座間味島で起業を進める順番

3年スパンの7ステップで通い起業から段階移住へ

point

起業18フォーラム→現地学習→補助金の順で進める

ここまでをまとめると、座間味島で起業を考える方が踏むべき順番はシンプルです。在職中の準備期間を3年と捉え、関係人口として通いながら島の文脈と人脈を作ることから始めます。

座間味島で起業を進める7ステップ(3年スパン)

  • STEP 1:起業18フォーラムの動画・セミナーで「勤労期に何で食べていくか」の基礎を学ぶ
  • STEP 2:座間味の歴史・産業・人口構造を1か月かけて学ぶ。1991年からのホエールウォッチング発祥史は必読
  • STEP 3:自分のスキル・経験を棚卸しし、島の既存事業者の困りごとと接続する切り口を見つける
  • STEP 4:月1〜2回のペースで座間味に通い、島の事業者3名と雑談関係を作る
  • STEP 5:方向性が固まったら、座間味村役場・座間味村商工会・沖縄県商工会連合会に相談に行く
  • STEP 6:沖縄振興特別措置法・過疎法・特定創業支援等事業など、補助金は事業計画ができてからの「最後の道具」として活用
  • STEP 7:3年程度を目安に、関係人口・二拠点居住から段階的に移住へ移行

行政の支援窓口・商工会・補助金は強力な道具ですが、何で食べていくかが見えていない段階で相談に行っても担当者も具体的なアドバイスのしようがありません。

まず起業18フォーラムで基礎と方向性を整理し、座間味の歴史と現状を頭に入れ、自分のスキルとの接続点を見つけてから、行政の道具を使う。この順番が、補助金や支援制度を最大限に活かす道筋です。

移住を急ぐ必要はありません。座間味は1991年に日本のホエールウォッチング発祥地として、地域ぐるみで協会を作り上げた島で、その歴史に新しい事業を接続させることに、3年や5年かけても遅すぎることはありません。

通い、関係を育て、種を蒔き、芽が出始めたら本気度を上げていく。座間味島での起業準備は、こののんびりした歩幅でちょうど良いのです。

「お試し移住」「期間限定滞在」を活用し、自分にとって座間味が本当に身を置きたい場所かをゆっくり確かめてください。ケラマブルーの海は、急ぐ人を待ってはくれませんが、長く通う人には毎回違う表情を見せてくれます。

3年後・5年後の自分が座間味の港から船に乗り、自分の事業の現場へ向かう日を思い描きながら、今日からできる最初の一歩を始めてみてください。

慶良間諸島の冬の海から春の海への移ろいを、何年もかけて見届ける覚悟ができたとき、座間味島での起業準備はようやく本物になります。


さらに詳しく知るには、以下より検索してみてください!
記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

起業アイデア診断
【起業セミナー】会社員のまま始める起業準備・6ヵ月で起業する!

【動画セミナー】あなたのタイミングで学べる動画版もあります!

ポイント この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます!