ターゲット絞り込みはどこまで? 顧客が減る不安を解消する3類型と現場の判断軸

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

● 質問

ターゲットを設定して発信するのはわかります。けれども、どこまで絞ればいいのでしょうか? あまり絞ると、お客さまの人数自体が減ってしまうのではないかと不安です。

● 回答

結論からお伝えします。ターゲットは「狭めて反応を見て、ズレたら広げ、広げて埋もれたらまた狭める」を繰り返す前提で設計してください。最初から正解の絞り幅は誰にも決められません。

起業18フォーラムでは、26年間で60,000人を超える起業希望者を見てきました。「絞れない」と相談に来る方の多くは、軸の数字や属性ではなく、〝誰の評価を捨てるか〟が決まっていません。商品の問題ではなく、覚悟の問題なのです。

絞り込みの「3つの典型パターン」を比較する

「絞れない」と感じたら、自分が今どのパターンにいるかを把握すると、次の一手が見えやすくなります。

タイプ 典型的な発信 起きやすい問題
絞らなさすぎ 「健康になりたい方へ」 誰にも刺さらず広告費だけが増える
中庸 「腰痛を抱える40代へ」 関心を持つ層がイメージしやすい
絞りすぎ 「都内の在宅ワーカーで腰痛3年目の40代」 市場が小さく、問い合わせが月1件以下になる

中庸の位置から始めて、反応を見ながら左右に動かしていくのが、現場での失敗が一番少ない動かし方です。

中小機構が整理する「絞り込みの6つの軸」

独立行政法人中小企業基盤整備機構(J-Net21)が公開しているQ&A集では、ターゲットの絞り込み軸として、次の6つを示しています。

  • 年齢・性別・職業・家族構成・所得
  • 住所・地域の気候・規模などの地理特性
  • 商品選定の基準(価格重視か品質重視か)
  • ネット通販に対する抵抗の有無
  • 新しいものに対する反応の早さ
  • 情報を集める習慣(SNS・雑誌・口コミ)

出典:中小企業基盤整備機構 J-Net21「顧客ターゲットを明確化するには、どうすればよいのでしょうか?」(2024年閲覧)。この6軸を全部使う必要はありません。自分の商品にとって意思決定に直結する2〜3軸を選ぶのがコツです

レンタル自転車のEさんの「逆効果」事例

レンタル自転車店を開業したEさん。地域に「駅からタクシーで営業まわりをするサラリーマンが多い」ことに着目し、「タクシー代わりに自転車を。経費削減にも健康にも」と仕事用レンタルとして発信を始めました。

ところが、問い合わせが来るのは観光目的の人ばかり。「仕事用ではないのですが、借りられますか?」と聞かれる場面が続き、絞り込みが逆効果に感じられたそうです。

Eさんの場合、絞ったターゲット軸(仕事用途)が、店舗の立地から見たときの〝実需〟と一致していませんでした。軸の設定が悪かったのではなく、地域市場とのズレが原因です。Eさんはその後、「観光客向けの半日プラン」を主軸に切り替え、地元商店街と連携する形で売上を2倍以上に伸ばしました。

手芸講師のHさん「絞りすぎてゼロ」の経験

もう1件、起業18フォーラムの会員Hさんの話を紹介します。Hさんは自己流で「都内・40代女性・布小物・手作り好き・お子さん3人以上」というペルソナを立てて手芸講座を発信していました。月の問い合わせは0〜1件で、半年間ほぼ無収入。

勉強会で軸が細かすぎることをお伝えしたところ、「子どもがいる主婦」のうち〝お子さんの数〟という軸を外し、地理も「首都圏」に広げて再発信しました。3ヶ月後には月13万円の売上が立ち、現在は月収30万円台まで回復しています。軸を2つ削った修正だけで動き出した、典型的な事例です。

「ドリルを売るな、穴を売れ」の視点で問い直す

拙著『朝晩30分 好きなことで起業する』でも触れていますが、ターゲット絞り込みで詰まった時に立ち返りたいのが「ドリルを売るな、穴を売れ」というマーケティングの古典です。お客さまが買いたいのは商品ではなく、その先にある〝状態〟だという考え方です。

「自分の商品(ドリル)を、誰のどんな穴あけ作業に売りたいのか」を一度書き出してみてください。属性ではなく〝作業の目的〟で絞ると、自然と相手が見えてきます。

● 質問 サービスのターゲットを絞ったほうがいいとよく聞きますが、絞れば絞るほど対象が少なくなって、逆に売れな
ターゲットを絞れば本当に売れるの?「絞れば絞るほど客が増える」の仕組み - 起業18フォーラム | 副業から始めて「稼ぐ力」を身に付けられるコミュニティサロン

よくある質問

Q.ペルソナは1人に決めないといけませんか?

起点として1人を仮置きするのはやりやすいのですが、商売の実需としては「その1人と似た悩みを持つ層」が見えていれば構いません。「1人+類似層」のセットで考えると、極端な絞りすぎを防げます。

Q.絞ったら本当に問い合わせは増えますか?

絞った結果、絞った先の人に「自分のことだ」と感じてもらえれば増えます。ただし軸の選び方が悪いと、Eさんのように現場の実需とズレて空振りします。最初の3ヶ月は反応を見ながら、軸を入れ替える前提で動いてください。

Q.途中で軸を変えるのは悪いことですか?

悪いことではありません。むしろ、起業1年目の方は2〜3ヶ月ごとに軸を見直すサイクルを最初から組み込むことをおすすめしています。世の中の需要も自分の体力も変わるからです。

「絞れない」のは商品の問題ではなく、覚悟の問題。誰の評価を捨てるかが決まれば、誰に届けるかは自然と見えてきます。今日のうちに、自分が捨てたい評価を1つだけ紙に書き出してみてください。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全10冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。




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